「学生フォーミュラ」はこんな形の小さな単座競技車両を、学生たち自身が企画、設計、製作、開発を行うプログラム。ものづくりの起承転結を1年間に凝縮して体験するわけだ。今年の全日本大会は次年度の本開催に向けてEV(電気自動車)のプレ大会も併催。手前の「E1」はそこで最速だった静岡理工科大学チームのマシン。残念ながら思わぬトラブルでエンデュランス完走ならず。ドイツ大会では内燃機関か電気駆動かを分けずに実施する段階(採点は別)に進んでいる。以下、(*)を除き筆者撮影
コスト審査の様子。奥に見える(手前の審査員とチームメンバーの間でも広げている)分厚いファイルが、学生たち自身が一定台数を生産することを前提に細かな部品の一つひとつまで試算したコスト一覧のプリントアウト。デザイン(設計)審査もそうだが、こうした提出書類にあらかじめ目を通しておき、現場で現物と照合しつつ質疑応答、審査を進めるジャッジ(審査員)が費やすエネルギーも非常に大きい。こうした人々も基本的にはボランティア。それにしても静的審査や車両準備はもう少し良い環境でできるようにしてあげたいものだ。
最終日の表彰式、総合優勝が発表された瞬間の京都工芸繊維大学チーム。昨年の12位から1桁台の上位を狙っていた、というが、エンデュランス競技でトラブルに見舞われリタイアする有力校が相次いだことで、最後は大阪大学チームとの僅差の争いに。「速さ」を実現するモータースポーツとして正当なアプローチで勝ったことの意味は大きい。
タイム、燃費ともにトップに立ったエンデュランス競技を走る京都工芸繊維大学チームのマシン。大会の状況をライブ配信した
USTREAMの動画(現在は録画で見られる)より(*)
全チームの設計および開発内容の審査が終わった後、審査員団が「これは」と思う採点上位のチームとマシンを集めて、参加者の前でチーム自身によるマシンと設計内容の紹介、デザイン審査委員長による講評を行う「デザイン・ファイナル」。今年は、上智大学、大阪大学、京都大学(写真では左から)の3チームがこの場に立った。空力的付加物でタイヤを路面により強く押しつけようというデザインの上智大学がこの部門の最高点を獲得したが、筆者個人としてはアルミ合金骨格他緻密な設計と造り、運動能力の高さも実現した京都大学のマシンを高く評価している。これももっと大きなステージで、動画中継もして、多くの人々に見ていただきたいイベントである。