中東危機に脆弱なインド経済
ロイターは2日、急成長中の石油消費国であるインドは国内での備蓄が少ないため、影響を最も受けやすい国だとする専門家の見解を紹介している。インドの石油企業関係者によれば、インドの現在の備蓄量では約25~30日分の消費量しかカバーできない。中国の備蓄量(少なくとも6カ月分)、日本(国家備蓄は146日分)に比べると圧倒的な少なさだ。
インドでは日常生活に支障が生じ始めている。
インド政府は5日、調理用燃料の不足を防ぐため、石油企業に対して液化石油ガス(LPG)の生産最大化を指示した。インドはLPG需要の約3分の2を輸入に頼っており、中東産の輸入シェアは約85~90%だ。需要の過半を担っていた中東産が入ってこなくなるとの恐れから、国内の石油企業に檄を飛ばしたというわけだ。
都市ガスの供給も危うくなっている。
インドの液化天然ガス(LNG)輸入最大手のペトロネットLNGは3日「ホルムズ海峡の封鎖によってカタールからLNGを調達することが困難になった」と発表し、販売先への供給義務を免れるフォースマジュール(不可抗力宣言)を出した。インドの都市ガス大手グジャラードガスもガス供給を制限している有様だ。
1970年代の2度にわたる石油危機の際、工業化以前の段階にあったインド経済は大きな打撃を被ることはなかった。インドは最近になってエネルギー危機への備えを講じ始めたが、間に合わなかったと言わざるを得ない。
インド経済急成長の原動力は中間層の旺盛な消費意欲だ。
都市部の住民が住宅や自動車、スマートフォンなどを積極的に購入したことで経済成長を遂げてきた。だが、今回のエネルギーショックに対応できなければ、今後、成長率が大幅に鈍化する可能性は排除できないだろう。
インド経済が現在進行中のエネルギー危機を無事に乗り越えることを祈るばかりだ。
藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。