ようやく? やはり? ついに米国でも、経営破綻の恐れがある過剰債務企業30社を名指しする「リスト」が登場した。自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)はじめビッグ3のほか、航空業界世界2位アメリカン航空を傘下に持つAMRや、USエアウェイズ・グループ、新聞社やテレビ局などが名を連ねている。
「危ない会社」と言えば、小泉純一郎内閣時代の「問題企業30社リスト」が思い浮かぶ。金融再生プログラム(通称「竹中プラン」)に基づき、不良債権の集中処理が進められる中、出所不明で流布したものだ。窮地に追い込まれた企業を、リストで示したいという欲求は洋の東西を問わないらしい。
日本の場合は怪しげな「30社リスト」をめぐり、金融関係者やマスコミが入手を争い、殺気立っていた。一方、情報開示の先進国らしく、米国版は全面公開。大手格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが、債務不履行に陥る可能性が高い283社を並べた「底辺(Bottom Rung)」リストを発表。負債額の多い順に、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が30社を抜き出した。
日本に置き換えれば、「危ない会社リスト」を日本経済新聞が堂々と掲載するようなもの。格付け会社の資料に基づくとはいえ、かなり踏み込んだ報道ぶりだ。それでも、公表済みの格付けに従うだけに、「30社」側が表立って反論するのは難しいだろう。
会計士、GMの事業継続に「重大疑義」
リストの筆頭格は、385億6000万ドル(約3兆8000億円)の巨額負債を抱えるGM。134億ドル(約1兆3300億円)の政府融資を受け取った後、米財務省に再建計画を提出している。3月末までに債務削減交渉をまとめなければ、政府が「返済能力なし」と判断して支援を打ち切り、融資の即時返済を迫る可能性もある。
GMの2008年決算に対し、公認会計士(大手会計事務所デロイト・アンド・トウシュ)は「事業継続に重大な疑義がある」との意見を付記した。意見表明は会計事務所の義務であり、GMの現状を考えれば当然の結論だ。しかし、その事実をGMが3月5日に証券取引委員会(SEC)への年次報告書で公表すると、破綻懸念が再び激しく燃え上がった。
翌6日には、WSJ紙が1面トップで「GM、事前調整型の破産法申請を検討」と報道。その結果、株価は一時1.27ドルまで売り込まれ、大恐慌後時代の1933年以来、76年ぶりに安値を更新した。ただ、「GMがこのまま存続するなんて誰も考えていない」(社債ディーラー)といった見方が多く、ウォール街では大きな動揺は見られなかった。