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今回の取材で訪れた鎌倉の覚園寺は、1218年に北条義時公によって建立された古刹。古都鎌倉の歴史を感じる静寂な空間を求めて、マリンバ奏者の林美里さんも何度も訪れている。

パナソニックのエネチャージシステムを語るにあたって、今回選んだテーマは「心地良さ」。語り手は、マリンバ奏者として世界で活躍する林美里さん。木製の音板をもつ鍵盤打楽器を操るうえで、自然との対話は不可欠と考えたからだ。鎌倉在住の彼女に、楽器との付き合い方、好きな場所、季節感などの話をうかがい、さらにはパナソニックの担当者と、快適さについて、エアコンについて、語り合ってもらった。

(※)家庭用エアコンにおいて。コンプレッサーの排熱を顕熱蓄熱し、暖房および冷房に再利用する技術。2020年11月21日発売。(パナソニック調べ)

日本の梅雨はヨーロッパの真夏より不快

取材をするにあたって、林さんに好きな場所をうかがうと、即座に「覚園寺」とのこたえが返ってきた。鎌倉は二階堂にある由緒あるお寺である。「凛として清廉な空気が通り抜ける」心地良い空間なので、来ると心が晴れる場所。そして演奏会など、大きな仕事がひと段落すると訪れる場所だという。

林さんは、人生の大半を鎌倉で過ごしている。ただ、東京の音大を卒業後の9年間は、パリのコンセルヴァトワールへ留学。その間、ヨーロッパ各地で演奏し、彼の地の気候も熟知している。そんな彼女に、気候の違いについて、そしてマリンバ管理の難しさについて聞いてみた。

「ヨーロッパは湿度が少なくカラッとした気候の地域が多いため、真夏でも木陰に入ると涼しいのですが、日本の梅雨や夏はジメジメしていて、重くのしかかるように暑い。まるでサウナの中にいるようで息苦しく感じることもあります」

マリンバは木製の鍵盤を何本かのマレットを使って音色を奏でる打楽器。温度や湿度によって木が収縮し音が変化してしまうため、直射日光を避け、厳重に温度・湿度管理をする必要がある。特に高温多湿の地域では音が響かず、マリンバにとって良い環境とはいえない。

「ピアノと違い、マリンバは滅多に調律を行いません。どうしても必要な場合は鍵盤を削って調律するのですが、鍵盤が薄くなると演奏時にひび割れるリスクが高まってしまいます。割れればその鍵盤を交換しなければなりませんが、一音だけ違う木に変わると音色も変わってしまいます。そのため空気環境には常に気を配っています」

日本とヨーロッパを中心に演奏活動を行う、マリンバソリストの林美里さん。9年間の在仏中には、パリ市主催アートコンクールにおいて音楽部門唯一のJune Talent賞を受賞するなど、数々の実績を残した。国内においてはセルフプロデュースにこだわったコンセプトコンサートなどを公演。

人間の皮膚と同様に、マリンバの鍵盤も呼吸しているため、人間が快適と感じる空間での管理が望ましい。パナソニック アプライアンス社でエアコンの企画・マーケティングに携わる福田風子さんは、“夏の快適性を決めるのは温度と湿度のバランス”だと話す。

温度と湿度の相関と快適性、パナソニックの新エネチャージシステムについて、林さんに説明する福田さん。

「例えば、温度が同じ26℃でも湿度が70%を超えると暑く感じますが、これが60%以下になると快適性が上がって暑さを感じなくなります。温度が変わらなくても湿度が少し下がるだけで快適性はアップするのです」

同じ温度でも湿度が違えば快適さが異なる。夏の快適性のポイントは除湿だ。

快適な空間にならない原因は“湿度戻り”

エアコンは、日本の不快な夏を乗り切るための必需品。しかし、冷房による冷えや頻繁なリモコン操作など、なかなか快適な空間をキープできず、林さんも頭を悩ませているという。

鎌倉十三仏巡り 十一番札所に指定されている覚園寺。境内には歳月を重ねた伽藍や重要文化財の仏像群が祀られ、国の史跡に認定された自然環境が昔のままの姿で残っている。「このような自然の涼しい風を感じられる空間で過ごしたいですね」(林さん)

「私は暑い日にかき氷を食べた時のスッと冷えるような感覚で体を外から冷やしたいと思い、エアコンはまず20℃以下に設定して一気に冷やし、涼しくなってきたら設定温度を上げています。楽器のことも考えて除湿をメインにしているのですが、徐々に寒くなってきて温度を上げると、逆にムシムシしてきてしまって…。気づくとスマホ以上の頻度でエアコンのリモコンを操作しています。また、マリンバは立って演奏するため、足先の冷えも辛いですね」

エアコンによる冷えを避けるために、近年は設定温度を27~28℃にする人も増えているが、時間の経過とともに蒸し暑く感じる人も多いのではないだろうか。この不快の原因は“湿度戻り”にある、と福田さんは語る。

パナソニック アプライアンス社
商品センター エアコン・エコキュート商品企画 主務
福田 風子さん

「エアコンの中では室内機と室外機の間を“冷媒(れいばい)”と呼ばれるガスがぐるぐる回っていて、空気中の熱を運搬。冷房時には冷たい冷媒が部屋の熱を奪うことで室内を冷やしているのです。設定温度に達した後も冷たい冷媒が室内機に送りこまれるとお部屋は冷えすぎてしまうため、自動的に運転を止め、室内の温度が高くなると運転を再開、というオン・オフの繰り返しによって設定温度を維持しています。ここで注意しなければならないのが湿度です。エアコンがオフの状態になると温度とともに湿度も上昇しますが、湿度の低下は温度の低下よりも時間がかかるため、運転再開後は設定温度まで低下しても湿度は下がりきっていない状態に。この繰り返しによって、室内は徐々にムシムシした空気になってしまうのです」

「連続トロトロ運転」で、温度のブレはわずか0.2℃

エアコンは室外機の中にあるコンプレッサーと呼ばれるデバイスが、先ほど説明した冷媒を圧縮することで冷暖房を行うが、このコンプレッサーはモーターを利用して動作するため動き出すと高温になる。今まではコンプレッサーが作動することで発する熱はそのまま屋外の空気中に捨てられていた。
一方、冬は室外機側に冷たい冷媒が流れ、周囲の湿度が霜となって室外機を凍り付かせてしまうため、暖房運転中は定期的に「霜取り運転」を実施しなければならない。室内を暖めていた暖房をいったん止め、室外機側をあたためて霜を溶かすため、この間室内の温度が下がってしまうという欠点があった。これを解決したのが、約10年前に開発されたパナソニックのエネチャージシステムだ。

「今までは外に排出されていた、コンプレッサーが発する熱を蓄熱して再利用。これにより、暖房を止めることなく霜取り運転も行い、快適性を持続させることが可能となりました。そして、この技術を冷房に応用すべく研究を重ね、10年の歳月を経てついに成功させることができました」(福田さん)

「10年間途切れることなく研究を続けたエンジニアの方たちのチャレンジ精神は尊敬するとともに、共感します。私はマリンバ奏者として約40年間活動していますが、当初、『あなたは闘争心が無いから音楽家には向いていない』と師事した先生に言われ、『その無いものを手に入れたい』という思いをバネに演奏を続けてきました。一生懸命取り組む中で、ふと訪れる『上手く弾けた』という瞬間がたまりません。きっとエンジニアの方も同様の達成感を得られた事もあるでしょう。今回、冷房用のエネチャージシステムを開発したことで、エアコンの機能はどのように変わったのでしょうか」(林さん)

「覚園寺は山門を登るとすぐ客殿と愛染堂があり、背後には広大な森を有しています。その境内の森に一歩足を踏み入れると、人間界とそうではないものの世界、まるでその「狭間にいるような不思議な感覚」に陥り、その感覚を楽しみながら奥に進むと、少し開けたところにメタセコイアは神々しいまでの風格を纏いそびえ立っています。長き時に渡って鎌倉の街と海、そして山々を見守ってきたこの木からは優しさ、強さ、しなやかさ、そして季節によってその色を変える様に、ひたむきな「生」を感じます。色々な思いを巡らせながら、風そよぐこの木の前に立つと、いつも新しいインスピレーションを与えてくれます」(林さん)

「今までのエアコンではできなかった“設定温度をキープするレベルで弱い冷房をしながら、除湿もし続けること”が可能となりました。設定温度に到達してもオフにならず、設定温度を維持するレベルのトロトロした弱冷房運転を継続。湿度も安定しているため、長時間使っても室温・湿度を快適な状態にキープすることができます」(福田さん)

「快適な湿度環境でマリンバを演奏すれば、理想の音をより皆様にお届けしやすくなると思います」(林さん)

冷媒が室外機のコンプレッサーに戻るためには気体の状態にならなければならないが、トロトロの弱冷房運転に切り替わることで、お部屋の熱を奪いすぎずに一部冷たい液体のままの冷媒が室外機へ戻ってきてしまう。新エネチャージシステムは、この液体の冷媒を蓄熱した熱で気体化。これにより、設定温度到達後もエアコンをそのまま運転し続けることが可能となった。
連続したトロトロ冷房により、従来のエアコンと比べ、室温のブレは1.3℃から0.2℃に。湿度は上がらずに快適な状態をキープできるようになった。

音と空気をデザインする共通キーワードは「快適」

夏の快適空間を持続させるエネチャージシステムは省エネ性にも優れている、と福田さんは話す。

「従来のエアコンは、設定温度をキープするためにオンオフを小刻みに繰り返すことで、ムダな消費電力を使ってしまっていました。設定温度到達後もトロトロ運転を続けられるようになったことで、従来よりも約10%省エネに。エネチャージシステムは快適性と省エネ性を両立した技術なのです」

「温度をキープしながら除湿もし、かつ省エネ。この3つが同時に叶うことは本当に素晴らしい。小まめなリモコン操作が不要となるため、演奏だけに集中でき、パフォーマンス向上にもつながりそうです」

そう話す林さんは、パナソニックには空気のコンシェルジュとして大自然の中の心地良い風を室内に届けて欲しいと、これからのエアコンに対する思いも語った。

江戸時代に鎌倉でつくられた裕福な農家「内海家」は、1981年に一度解体され覚園寺境内に移築された。昼間も暗い屋敷内には当時の暮らしが今も息づいている。お日様のありがたさ、自然の景色やそよ風の心地良さを噛み締められる空間だ。

「エアコンの機能は多様化し、スマホで外から操作したり、人間の体温を感知して涼しくしたりと、利便性は大きく向上しました。こうした高い機能性は確かに魅力的ですが、これからは、人が心地良いと思う風をお部屋に届けて欲しいですね。自然豊かな鎌倉は通り抜ける風がとても気持ちいい。この風をエアコンで再現していただけたら、こんなに嬉しいことはありません。音をデザインする私たち音楽家と、空気をデザインするパナソニックさんが追求するものは、ともに”心地良さ”だと思います。ユーザーがエアコンに求める心地良さに寄り添ったテクノロジーに今後も期待しています」

福田さんと今後の空気のあり方について語った林さん。「音楽の魅力はゴールがないことですが、エンジニアの方もきっと同じだと思います。エネチャージシステムで極上の快適空間を実現した技術力は素晴らしいですね」
「街中の喧騒から離れ、谷戸の奥に800年の時を経て、変わらず粛として佇む名刹覚園寺。ここは下界の喧騒とは無縁。凛とした空間に優しく穏やかな風がそよぐ。この場所に身を置く時、私の心は落ちつき優しい気持ちになる。それこそが、私にとってのエネチャージ。穏やかな天候の中、大好きなこの場所で対談と撮影が行われた時、そのどこまでも心地の良い空気を音楽で表現しました。そして10年の歳月をかけ、良いものを創り出そうとする姿勢に音楽家の私と重なる意気を感じました。それを実現されたエンジニアの方々への敬意を込めて作った楽曲です。「風の神  〜Eolia〜」 私の表現する「風」と「時」を感じていただければ、、、Panasonic様に感謝の気持ちを込めて」(林さん)

聴取はこちら

(撮影協力:鎌倉・覚園寺)

最新テクノロジーが紡ぐ快適な風で
快湿空間を実現するエネチャージ搭載”極上冷房“エアコン
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