社員のSlackコミュニケーションを可視化した画面。月間のSlack投稿数、自らコミュニケーションした相手の数や、コミュニケーション相手のランキングを“見える化”した。この画面からコミュニケーション量は十分か、コミュニーション相手が増えているか、コミュニケーション先が自チームに閉じていないか、等を把握し、施策につなげている。
 同社では、こうした課題発掘、施策立案には、社内アンケートが使われている。昨年9月に実施したアンケートでは先述の働き方やコミュニケーションに関する課題が浮き彫りになったため、自分が関わるプロジェクト以外のメンバーとも円滑にコミュニケーションがとれる仕組みを設けて、社内への定着を促している。

 その1つが、新入社員1人を既存の社員3人が囲んで一緒にランチをとる「Welcome to ARISEシャッフルランチ」(現在はZoomを使って会話をする)。若手メンバーの発案で経営者層も巻き込んだ「Welcomeディナー」も新たにスタートした。「社内にはさまざまな専門性を持ったメンバーがいます。カジュアルにコミュニケーションをとりながら、困った時に頼れるメンバーを増やしてもらおうという趣旨で取り組んでいます」(佐々木氏)

 もう1つは、「おせっかいファミリー制度」だ。在籍期間が長く会社のことに詳しい社員や社会人経験が豊富な社員がそのメンバーになり、新卒社員や社歴の浅い社員と1対1でコミュニケーションをとっていくが、メンバーが自分の所属する部署の上司や先輩ではないところがポイントになっている。

 こうした施策が奏功し、同社が今年2月に実施した社内アンケートでは、ネガティブな声もニュートラルなものに変わりポジティブな意見が増加した。「コミュニケーションが減ってしまい、働きにくくなったと言っていたメンバーも、コロナ前にオフィスで働いているときと同じような状態で働けているところまでスコアを持っていけたことは、大きな効果があったと認識しています」と佐々木氏は評価する。

ARISE analyticsにとって人材こそが最大の資産

 こうした環境整備に加え、データサイエンティストが働きたいと思う職場にするための取り組みも行うARISE analytics。そのために意識していること、実際に行っていることを尋ねると、「働きがいがキーワードであり、働きがいのある環境をつくることが自分のミッション」と佐々木氏は話し、3つあるデータサイエンティストにとっての働きがいの構成要素を満たす取り組みをしていると言う。

 構成要素の1つ目は、成長できる環境かどうか。同社ではデータサイエンティストの継続的な成長支援のために、「ARISE university」と称した教育体系を整備している。そのうちの1つの取り組みとして、毎週金曜日の午前中を、社員が自己研鑽に使う時間とし、さまざまな学習講座やライトニングトーク(LT;短いプレゼンテーション)の場を用意している。学習講座の多くは、自身が担当するデータ分析プロジェクト内容の発表であり、アウトプットすることで自身への知識の定着化を図ると同時に、他者にとってはプロジェクト事例を体系的に学べる質の高いインプットの場となっている(この「ARISE university」の取り組みが評価され、ARISE analyticsはGreat Place To Work ® Institute Japan(GPTWジャパン)が実施した2021年版 日本における「働きがいのある会社」ランキングで、ベストカンパニーにも選出されている)。

 構成要素の2つ目は、貢献実感。自分が会社やお客さまに貢献していることを実感することだ。「人事評価で、自身の貢献ぶりを確認することもできますが、それでは半年や1年に1回になってしまいます。もっと短いサイクルで、自分は成果を出せているか、会社やお客さまに貢献できているかを理解してもらうために、毎月1回、1on 1ミーティングの場で、上司から成果や貢献内容をしっかりとフィードバックしてもらっています」(佐々木氏)

 そして、構成要素の3つ目が、働きやすい環境。同社では自分たちのチームの状態や仕事のフェーズによって、オフィスに来るタイミング、リモートで働くタイミングを選択してもらいながら働くことを推奨している。働く時間帯もフレックスタイム制で、コアタイムはありながらも、柔軟に自分たちで考え、働きやすい時間帯に働いてもらうこととしている。