このARISE analyticsが現在、注力しているのが、マーケティングとIoTの2領域でのサービス・ソリューション提供だ。
マーケティングの領域では現在、auやUQの顧客のエンゲージメントを高めていくためにAIを活用した顧客データ分析を行い、お客さま一人一人に最適な1to1マーケティングを支援。既に継続的な成果も上げている。
もう一方のIoT領域では、「画像解析」技術で複数カメラの映像から同一人物を特定し導線を追跡できるモデルを開発し特許も取得している。この分野では、従来、人が目で見て行っていた設備点検などを画像や動画データを活用して行う案件も増えている。
■画像解析技術を使ったユースケース
この他にも、「需要予測」(販売データとKDDIが保有する位置情報、天候、イベントなどのデータを組み合わせ、需要や在庫を予測し、機会損失・過剰在庫の削減を実現)や、「位置情報分析」(KDDIが保有するスマホ経由の位置情報を活用し、顧客の分布や動きを可視化・予測)、「センサデータ分析」(設備と人の状態を可視化し、状態の把握や異常予兆の検知による業務品質の向上・メンテナンスコストの低減を実現)といった、幅広いサービス・ソリューションを提供している。
ARISE analyticsは、これら技術を活用して、現在多くの日本企業が抱えている労働人口の減少やそれに伴う更なる生産性の向上という課題を解決するために取り組んでいる。
データ分析の会社らしくデータを活用し、人事マネジメント
ARISE analyticsではデータ分析の会社らしく、人事マネジメントにおいても実態をデータで正確に把握し、デジタルの力を使って人間関係の構築や改善に役立てている。「『HR analytics』、すなわち人事データの活用では今、2つのテーマに取り組んでいます。1つは、データサイエンティストの働き方に関わる取り組み、もう1つはコミュニケーションに関わる取り組みで、データを活用し、“見える化”を進めています」と佐々木氏は話す。
コロナ禍によってリモートワークへのシフトが進み、同社では現在、全体の約30%にあたる120~130人のメンバーが出社し、残りのメンバーは自宅などのリモート環境で働いている。
こうした際に課題となるのが、社外にいるメンバーの働き方が管理者層から見えづらいこと。そこで、同社ではオフィスに出社しているメンバーについては、出社・退社時の顔認証システムでオフィスの滞在時間を把握、リモートで働いているメンバーについてはPCの利用時間を取得して、勤怠管理システムに申請された時間との差分をチェックしている。
これは監視が目的ではない。同社では本人が申請した時間と各種システムが計測した時間の差分が1時間以上あった場合は、本人に確認して何をしていたのかを把握し、勤怠時間の修正を行う。
その意図について佐々木氏は語る。「リモート環境で見えないからこそ、働き過ぎやサービス残業が増えていないかをしっかり把握する必要があるため、データを活用した働き方の把握は重要です。この取り組みにより、勤怠の誤申請を把握するのはもちろんのこと、社員が朝早くから勉強したり、業後に周囲のメンバーとコミュニケーションを取ったりしている実態を把握することもでき、当初想定していなかった良い気付きがありました 」
2つ目のコミュニケーションに関する取り組みでは、社内で活用しているビジネスチャットツールSlackのデータを可視化して、各メンバーのコミュニケーションの状況を把握している。「従来から在籍しているメンバーは、コロナ前後で大きな変化もなく、しっかり働けていますが、ここ1年ぐらいで加わったメンバーは、最初からリモートワークを強いられたり、オフィスに出社しても滞在時間が短かったりと、人間関係の構築が難しそうだなと感じていました。そこで、入社後にしっかりとコミュニケーションがとれる相手が増えているかどうかをSlackのデータから把握しているところです」(佐々木氏)