2020年2月末のコロナショック以降、堅調なパフォーマンスを示し、純資産総額を増加させているファンドシリーズが存在する。三菱UFJ国際投信が運用する「eMAXIS Neo」シリーズだ。同シリーズは、「自動運転」や「バーチャルリアリティ」、「ナノテクノロジー」など今後の成長が期待されるテーマを投資対象とし、AIが銘柄選定を行う指数に連動を目指すことを特徴としている。同シリーズにおける2021年1月末時点の純資産総額上位3ファンドの過去1年間のパフォーマンスは、eMAXIS Neo 自動運転 +126.5%、eMAXIS Neo バーチャルリアリティ +116.7%、eMAXIS Neo ナノテクノロジー +112.1%となり、2020年2月末のコロナショック以降の基準価額も、おおむね堅調に推移していることが見てとれる(基準価額のグラフは後述)。同シリーズの魅力や商品にかける思いを三菱UFJ国際投信の吉川雄貴氏に聞いた。

9つの革新的テーマへの投資機会をご提供

 「弊社では、2009年より『eMAXIS』シリーズをベーシックな資産形成のツールとしてお役立ていただきたいと考えて、幅広いお客さまに向けてご提供しております。昨今では、自動運転、バーチャルリアリティやナノテクノロジーなどニュースでも話題となることが多いと思いますが、これらの今後の成長が期待されるような革新的なテーマの株式に投資したい、そんなお客さまのニーズにお応えするために生まれたのが『eMAXIS Neo』シリーズです。」設定の背景について、吉川氏はこう語る。

 「革新的なテーマ」とは、今まさに進化の過程にあり、今後も成長することが期待されるテーマだという。「例えば、自動運転について、国内外において実用化に向けた実証実験が進んでいるとのニュースを耳にされたことのある方も多いのではないでしょうか。移動手段として欠かせない自動車が、テクノロジーの発展によって、これまでの日常生活を大きく変えていく未来も想像できると思います。」(吉川氏)

 「eMAXIS Neo」シリーズが提供する投資テーマは、「宇宙開発」、「ロボット」、「遺伝子工学」、「バーチャルリアリティ」、「ナノテクノロジー」、「ドローン」、「自動運転」、「フィンテック」、「ウェアラブル」の9本(2021年1月末時点)。

 いずれも第4次産業革命の原動力となると考えられる新しいテクノロジー群であり、今後も市場規模の成長が見込まれている。例として、自動運転関連の市場を見ると、世界全体で2018年~2030年において年率21.7%の成長が予想されているという。(下の一覧表をご参照)「足元では、コロナ禍となり、いままでの生活の当たり前が一変しました。移動制限や非接触、リモートワークなどのキーワードに象徴されるような生活様式の変化は一部のテクノロジーの進歩も加速させています。

 一例として、ナノテクノロジーの分野では、従来より研究開発が進められていた分子・原子レベルの物質を制御する技術の一部が新型コロナウイルスのワクチン開発に活用され、ウイルス解析のための電子顕微鏡や検査キットなどの需要が高まっています。」(吉川氏)これらの革新的なテーマへの投資機会が「eMAXIS Neo」によって広がったと言えそうだ。

【各テーマの世界市場規模成長率予想】

出所:Statista、Industry ARCのデータを基に三菱UFJ国際投信作成 ※上記、計算開始時点において出所元が算出する各期間の予想成長率(ロボットのみ2019年調査時点における予想値)を、三菱UFJ国際投信が年率換算しています。
※上記は、過去の実績・状況または作成時点での見通し・分析であり、将来の市場環境の変動や運用状況・成果を示唆・保証するものではありません。
※上記画像はイメージです。 各テーマの市場規模成長率について/・宇宙開発:宇宙産業の市場規模・ロボット:産業用と一般用ロボットの市場規模合計・遺伝子工学:再生医学の市場規模・バーチャルリアリティ:バーチャルリアリティ(VR)とオーグメンテッドリアリティ(AR)産業の市場規模合計・ナノテクノロジー:ナノテクノロジー産業の市場規模・ドローン:商用ドローンの市場規模・自動運転:自動運転車産業の市場規模・ウェアラブル:ウェアラブル機器の出荷台数・フィンテック:デジタルペイメント、パーソナルファイナンス、オルタナティブレンディング、オルタナティブファイナンスの取引高合計)
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AIが銘柄選定するS&P Kensho
ニュー・エコノミー指数への連動を目指す

 近年、モノのインターネット「IoT(Internet of Things)」や「人工知能(AI)」などによる技術革新が進むことにより、自動運転や仮想現実(VR)の技術を活用した製品の開発が行われその活用が進むことで社会全体の変革が進んでいる。このような第4次産業革命によって新たに生まれる投資機会を捉えるために構築されているのがKensho社の「eMAXIS Neo」が連動を目指すS&P Kenshoニュー・エコノミー指数だ。

 具体的にどのように指数構築を行うのだろうか。「指数を構成する銘柄は、米国の金融商品取引所に上場している世界各国の銘柄です。同社の指数においては、AIを用いて、企業の開示情報から各テーマに関連する語句の有無や出現頻度などを元にテーマの分類や銘柄の選定を行っています。例えば、宇宙開発の場合、『jet engine』や『space』といった関連語句を開示資料から探しにいく、といったイメージです。その上で、各企業についてそのテーマが主要事業である『コア銘柄』と、関連事業である『ノンコア銘柄』に分類し、コア・ノンコアそれぞれの分類内での銘柄のウェイトを均等に構成した上で、コア銘柄の構成比率がノンコア銘柄の構成比率よりも大きくなるように統合し、その他の調整を加えた上で指数を構築しています。」と吉川氏は説明する。
※上記は指数構築手法の一部を簡略化して記載したものであり、実際とは異なる場合があります。 

 同指数を算出するKensho社は、S&P500指数などの指数を算出する米国の大手指数提供会社S&P Global Inc.の100%子会社であるが、同社はデータ分析、機械学習、自然言語処理など、AIの技術を強みとする米国のテクノロジー企業だ。2013年に創業され、AIやフィンテックの分野で多数の受賞歴がある。同社の主要事業である市場分析サービスは、欧米の数多くの運用会社、金融機関で導入されている。

 では、AIを活用するのと、人間のアナリストが銘柄分析するのではどのような点で異なるのだろうか。「例えば、人間が銘柄分析を行う場合、参考にできる情報量には限りがありますし、誰が分析するのかによってその人特有の思い込みや分析内容の良し悪しが出てしまいます。一方で、AIによる分析であれば、そのような人間特有の思い込みを排除しつつ、より網羅的な分析ができると考えます。当シリーズはインデックスファンドシリーズですので、より大きなリターンを生み出すために銘柄を吟味するアクティブファンドとは異なり、革新的なテーマ全体の成長をとりにいくことを目指しております。この観点からも、AIを活用した網羅性の高い銘柄選定が行われている指数を連動対象とすることが適していると考えています。」(吉川氏)。

 AIを用いて膨大な企業の開示資料を読み込み、構築を行うS&P Kenshoニュー・エコノミー指数を活用する利点はコスト面にも表れる。もし、AIと同等の情報量の分析を人間のアナリストが行おうとすると、かなりの人的コストがかかってしまうだろう。

 「『eMAXIS Neo』は、購入時手数料ゼロ円、信託報酬率は年率0.792%(税込)以内となっており、革新的技術を投資テーマとするテクノロジー株式への投資はファンドでの銘柄選定の負荷があるためコストがかかるものと考えている方にとって、投資先の候補となると考えております。個別株に直接投資をするのはハードルが高いという方から、投資経験が豊富な方まで幅広く、投資機会のみならず投資の『わくわく感』をお届けしたいですね。」と吉川氏は語る。