デジタルで変わる医療とは
デジタルテクノロジーによって、予防や治療、健康管理は今後どのように変化していくのだろうか。柳本氏は大きく3つ挙げる。1つは、完全に個別化された“N of 1”医療の実現だ。「世の中のデータがもっと連携されて、それを分析する技術が発達すると、世の中の経験知を完全に活かしきった形でのテーラーメードされた医療が可能になります」(柳本氏)。
2つ目は、誰にでも手が届く医療である。医薬品の開発にはコストと時間がかかるが、デジタルヘルスに関してはより簡便に開発ができる。より安価な医療介入手段、予防手段を提供できるようになる。「誰にでも手が届く」というのは、経済的にというだけでなく、物理的にも、地理的にもという意味を持つ。例えば、日本にいながらにして、米国にあるサーバーのアルゴリズムで診断してもらうことも可能だ。
3つ目は、製薬企業にとっては逆風となるが、データ本位企業の参入による既存企業の侵襲が予想されることだ。ヘルスケアデータはニューカレンシー(新しい通貨)とも言われている。そうしたデータを持っている企業や、データをテコに様々な診断、介入手段を提供するような企業が台頭し、既存の製薬企業を脅かすだろう。
とはいえ、GAFAが製薬企業にとって代わろうとしているかというと、決してそうではない。例えばアップルは、アップルウオッチをはじめとするデバイスを売りたい、ストアでのダウンロードを増やしたいという理由でヘルスケア企業と組んでソリューションを提供しているのであって、テック企業にとって製薬企業も有望なパートナー、顧客の一つであるということだ。
「デジタルヘルスについては、日本でも一部の製薬企業が外部との提携や大きな投資を始めています。創薬のように既存ルールが存在するビジネスを変革することは相当なエネルギーを要しますが、新たな領域であるデジタルヘルスについては、比較的容易に取り組めるのではないでしょうか。繰り返しになりますが、まずはやってみること。どんどん結果を出していくことが肝要です」。柳本氏はこう締めくくった。

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