やさしい株式投資のハナシ

 資産運用に興味があっても、初心者にとって株式投資のハードルは高いもの。本連載では、現役の証券アナリストが株式投資の魅力や付き合い方をやさしく伝えます。

 今回は投資指標についてのお話です。

 投資が初めての方は、投資指標と聞くと何となく難しいイメージをもたれるかもしれません。ただ、投資はギャンブルのような投機ではありませんので、投資の判断の基準となるものさしが必要です。そのものさしとなるのが投資指標です。

 どういうことかと言うと、例えば株価が同じ1,000円のA社とB社があったとします。株価は同じでも、売上高や純利益、持っている資産、受け取れる配当金などは全く違います。これらのさまざまな基準から見て、現在の株価が高いのか安いのかを判断できるのが投資指標です。

 判断する基準によって投資指標にはいろいろな種類があり、それぞれ使い方や使う場面が異なります。今回はその中でもオーソドックスな指標であるPERという投資指標をご紹介します。

利益の額から見た投資指標 PER

 PERはぴーいーあーると読み、株価収益率(Price Earnings Ratio)とも呼ばれます。簡単に言うと、「今の株価は利益の何倍か?」という倍率を表しています。この倍率が高ければ高いほど割高で人気があり、倍率が低ければ低いほど割安ということになります。

 企業の株価と利益を比較するには1株利益(EPS)という数値を使います。利益の額を1株あたりに割り算したのが1株利益です。

 例えば1株利益が500円の企業の株価が1,000円であったとします。利益を全額配当にまわしたと仮定すると、倍率は1,000円÷500円で2倍となります。言い換えるとこの株を1,000円で買ったとすると、毎年500円の配当をもらうと2年で元が取れます。この場合はPERが2倍となります。

 次に同じ企業の1株利益が50円になるとどうでしょうか?

 株価が同じ1,000円だったとすると1,000÷50=20倍となります。この場合は PERが20倍だということになるわけですが、配当だけで投資の元を取るのには20年かかるということになります。

PERの説明

 このように利益の額から見て株価の割高度、割安度をはかるものさしが PERです。

PERはどう活用する?

 PERはどのように活用すればいいのでしょうか?

同業種の企業同士を比較

 例えば、同業種の企業同士を比較するのに使うことができます。同じ業種のA社の PERが10倍でB社のPERが30倍であったとすると、B社の方が人気があって割高ということがわかります。

同じ企業の過去と比較

 また同じ企業の過去の平均PERと比較することで、現在の株価が利益から見たときに割高になっているのか割安になっているのかを比較することができます。

 PERを活用すると、株価が右肩上がりに上がっている株でもPERがそこまで高くなければ利益から見たら割安という判断ができます。逆に株が大きく下がっている場面であってもPERがまだ高ければ利益から見ると割高であるという判断ができます。

PERの数字だけで判断してはいけない

 投資のためには投資指標を活用したいところですが、万能ではありません。状況によってうまく使う必要があります。

不祥事によって株価が大きく下がり、PERが下がっている場合

 例えば、ある企業の不祥事が発覚して株価が大きく下がったことにより、PERが下がっている状況を考えてみます。

 PERの倍率が低ければたしかに割安ということになりますが、不祥事により企業業績が悪化してしまうと1株利益が下がってしまうため、今は割安なように見えても後から見ると割高だったということが起こります。

PERが高くても企業の利益が順調に伸びている場合

 また、「PERが高い=株が割高」だから買ってはいけないということではありません。PERが高く見えても企業の利益が順調に伸びていれば PER は低くなります。

 例えば、A社の株価が 1,000円で1株利益が20円だったとすると1,000÷20=50 倍となり、一見割高なように見えます。ですが、A社の業績が好調で毎年2割ずつ利益が伸びていったとすると5年後には利益が約2.5倍に増えますので、 PERは約20倍と大きく下がることになります。ですので、このように成長が期待できる場合は PERが高くてもさらに株価が上がることもよくあります。

組み合わせて活用すると投資判断の助けに

 いかがでしょうか?

 今回は投資指標の考え方と代表的なPERについて解説しました。PERの他にも投資指標はいろいろな種類の指標があります。それぞれものさしとしてうまく組み合わせて活用することにより、投資の判断の大きな手助けになります。

 投資のステップアップのために、ぜひ投資指標の基本的な考え方を身につけていただけたらと思います。