資産運用に慣れないうちはなんとなく難しいイメージがある株式投資。「興味はあるけれども、どの銘柄を選べばいいのかよく分からない」。そんな人は、1つのキーワードをヒントに銘柄を探していくという取り組みやすい方法があります。本連載では「健康経営」をキーワードに、具体的な銘柄も含めて紹介していきます。
満員電車の中やオフィス街で、丸いドーナツ型のカラフルなバッチを付けている人を見かけることがあるでしょう。これは「勤務先の会社でSDGs関連の取り組みをしている」ことを表します。今回は、健康経営と深く関わりのあるSDGsに関連する株式銘柄についてご紹介します。
SDGsとは? 健康経営との関係性は?
2015年3月、国連にて「国連持続可能な開発サミット」が開催されました。そこで採択された国際目標はSDGs(持続可能な開発目標)と呼ばれています。持続可能な世界を実現するための目標が17個とそのための具体的な項目が169項目あります。
SDGsの目標は、連載2回目にご紹介したESGのS(Social)と一部、重複する内容にもなっています。また、日本政府でもSDGs推進の取り組みの一環として「健康経営の促進」 を行っています。
出所:外務省と経済産業省の資料よりMonJa作成
SDGsに関連する株式銘柄「協和キリン(4151)」
医薬品事業に集中、新たなステージでの活躍が気になる協和キリン
協和キリンは、元々保有していた「協和発酵バイオ」の株式95%を、2019年4月にキリンホールディングスに譲渡。経営を医薬品事業に集中するための体制を整え、同年7月、協和発酵キリンから、現在の協和キリン(4151)へ社名変更しました。2019年のコア営業利益は530億円の予想となっていますが、2020年代早期にコア営業利益1000億円達成、海外売り上げ比率50%を目標 とするなど、これからの長期的な展開がとても気になる企業です。
協和キリンはSDGs実現への取り組みにかなり積極的
協和キリンでは、SDGsの17個のゴールのうち、15個というかなりの数の目標について、具体的な取り組みを進めています。SDGsの8番目の「働きがいも、経済成長も」や、3番目の「全ての人に健康と福祉を」といった主に自社社員向けの取り組みに加え、自社内での努力だけでは実現できない、4番目の「質の高い教育をみんなに」への活動も積極的です。
子ども達を対象にした理科教育活動を行ったり、卓球を通して地域と交流を図ったり、その活動が評価され「東京都スポーツ推進企業」にも選ばれています。
協和キリンの取り組みに対する外部からの評価
協和キリンは、健康経営に積極的に取り組む優良大規模法人「ホワイト500」に2017年から3年連続で選ばれ、また、ESG指数4種類全てにも入っています。「ホワイト500」については前回連載にて、「ESG指数4種類」については第2回目の連載をご参照いただければと思いますが、外部からの評価がこれだけ揃っている銘柄は数少ないです。
他の医薬品メーカーとは違う協和キリンの大きな特徴
協和キリンの筆頭株主は53.7%の株式を持つ、キリンホールディングス株式会社です。その他の株主としては、資産管理を専門に行う国内の信託銀行や海外の金融機関などの企業の名前が並んでいます。発行済み株式総数のうち、71.86%はこれら大株主上位10社が占めるという、他の医薬品メーカーと比べてもかなり高い割合となっています。
(2019年6月30日現在)
出所:協和キリンホームページの株式データよりMonJa作成
これは、特定株が多く、市場に出回る株(一般投資家がやり取りする株のこと)が少ないことを意味します。一般的に特定株が多いと、大株主の意向で株価が上下することがあり、その際の変動も大きいなどと言われます。個人投資家としては、企業のSDGsに取り組む姿勢や、これからの展望などの情報を総合的に見て、市場に出回る株が少ないうちに購入し、大株主の意向の波に乗るという手段を取ることができます。
SDGsに着目した投資で、個人投資家も長期的な流れに乗る
持続可能な世界を2030年に実現するため、各国でSDGsの取り組みが進められています。その流れの中で、方針をはっきり明示したうえで具体策を講じている企業に投資をすることは、個人投資家としても大きな流れに乗った資産の使い方と言えます。
次回は連載最終回、SDGsに取り組むおすすめ企業銘柄をさらにご紹介します。