資産運用に興味があっても、初心者にとって株式投資のハードルは高いもの。本連載では、現役の証券アナリストが株式投資の魅力や付き合い方をやさしく伝えます。
今回は株式投資で良くある失敗についてのお話です。株式投資は儲かる時もあれば損をすることもあります。大切なことは、大きく儲けることを狙うより、大きく損をして投資から退場させられないようにすることでしょう。株式投資によくある失敗例をいくつかご紹介します。
失敗例1 高値掴み
株式投資の基本は安く買って高く売ることです。ただ、高値掴みしてしまう原因の一つとしてトレンドがあります。トレンドとは、株価の動きの流行といった意味です。
例えば株価が右肩上がりに上昇している上昇トレンドが発生している場合、投資家心理としてはさらに上昇が続くように感じられます。しかし悪材料や売りが出てきてしまうと、その時は上がるように見えても結果として高値掴みになってしまうことは株式投資ではありがちなことです。
もちろん上昇トレンドを頼りに投資することがすべて悪いわけではありません。上昇トレンドが出ている株は投資家心理として上がりそうに見えるということを知っておけば、チャートを見る時に月足、年足と期間を長くして見てみたり、利益水準からみて割高すぎないかチェックしてみたり、といった行動ができるでしょう。
失敗例2 高配当を期待して買ったらまさかの減配に
株式投資の魅力のひとつは配当金です。低金利の昨今では、貯金の金利と比べると高い利回りの株式がたくさんあります。配当利回りは「予想の配当額÷現在の株価」で計算されます。ある企業の1株の予想配当金が40円で現在の株価が1000円であれば、予想配当回りは4%となります。ですから買う時の株価が安ければ安いほど、予想配当利回りは上昇することになります。
ただ配当狙いの投資では、高すぎる予想配当利回りには注意しましょう。どういうことかと言うと、配当金は確定したものではなく、業績によっては減配となるリスクもあるということです。
業績の不振が原因で株価が低迷していたが、予想配当金から計算すると利回りは5%を超えていた。ところが業績不振によりその企業が減配を発表した、といったケースがこれにあたります。
配当狙いの投資で安値を狙うときは、業績が問題ないか、利益に対して配当金を出し過ぎていないかどうかチェックするようにしましょう。
失敗例3 企業に惚れ込み過ぎてしまった
株式投資は、投資する企業の成長や業績から見た割安さなどがあることが前提です。そのためには企業をよく知ることが大切です。
ですが、惚れ込み過ぎにも注意が必要です。
投資の手法の一つにナンピン買いがあります。これは例えば1000円である企業の株を買ったが、その後値下がりして700円になったようなケースです。ここで、700円で同数の株を買えば平均の買い単価を850円に下げることができます。その後株価が上昇したときに利益が出しやすくなるという割とポピュラーな投資の手法です。
ただし注意したいのは、株数を倍に増やしているため株価が下がってしまった時の値下がりによる損失も2倍に増えること。つまり、リスクが大きくなります。企業をよく知って応援する気持ちを持つことは大切ですが、安直に安値だからと買い増すことは考えものです。
また、いわゆる塩漬け株に対しても同様のことが言えます。株価が値下がりしてしまい売ることができずに長い間保有したままになっている株を塩漬け株と言います。
投資家心理として損失の株はあまり見たくないのは、当然です。ですが、安値で株を持ったままにしておくということは安値で株価を買っているのと同じことになります。このような状況を防ぐため、株を買うときには○%値下がりしたら売るという損切りラインを決めておく、あるいは投資した企業の状況が当初と変わったら売る、などといったマイルールを機械的に決めてしまうのが有効です。
投資家心理により判断がぶれることを知っておく
いかがでしょうか?
今回は投資にありがちな失敗のパターン例と対応策をいくつかご紹介しました。株式投資をされる方はよくお分かりかと思いますが、投資をする上でネックになるのが投資家心理によって判断がぶれてしまうことです。そのような心の動きの傾向をある程度知っておけば思わぬ事態が起きたときにも正しい判断ができる確率が上がると思います。