米企業の決算発表シーズンは終盤を迎え、減益に追い込まれたマイクロソフトが5000人削減という初の大規模リストラを発表するなど、後ろ向きの発表のオンパレードだ。金融機関だけでなく、不況の波は業種を問わず広がり始めた。昨年10―12月期決算は遅行指標とはいえ、ニューヨーク市場も空気は「解雇ラッシュ」のせいで一段と重苦しい。そんなムードを反映してオバマ新政権誕生後も、ダウ工業株30種平均は8000ドルラインをめぐる攻防から抜け出せない。
とにかく凄まじい解雇の嵐。オバマ新大統領は総額9000億ドル(約81兆円)近い景気対策法案を2月中旬に成立させようと、議会指導部との折衝を重ねている。だが、対策の看板である「雇用400万人創出」が空しく響くほど、米産業界の人員削減規模は膨らむ一方だ。
1月26日、製薬世界最大手ファイザーが、680億ドル(約6兆1000億円)を投じて同業大手のワイスを買収することを決めた。ニューヨーク市場は久々の大型M&A(合併・買収)に沸くはずが、ファイザーはまるで冷や水を浴びせるように、経営統合に伴って従業員8000人超を削減する意向を表明した。
これがその日の「解雇ラッシュ」の号砲に。産業機械大手キャタピラーが、早期退職者を含め全世界約2万人削減に着手。すると、米携帯電話3位で苦戦が続くスプリント・ネクステルが8000人、住宅不況のあおりを受ける改装用品小売り最大手のホーム・デポが7000人をそれぞれ減らす方針を公表した。
午後に入っても、勢いは衰えない。半導体大手のテキサス・インスツルメンツが3400人解雇を決め、昨年の世界販売台数で77年ぶりに首位から転落したゼネラル・モーターズ(GM)が2000人の追加削減方針を打ち出した。
夜振り返ってみると、その日だけで少なくとも7万人超の雇用消失が確定した。発表当日に解雇通告を受け取った労働者も少なくないという。
ビッグ3城下町、失業率2ケタに
収益低下に直面すれば、固定費削減は当然の経営判断だ。伝統的に終身雇用の概念が希薄な米産業界では、「究極の人件費削減策=解雇」への躊躇(ちゅうちょ)はあまりない。
とはいえ、昨年1年間に米国内では約260万人が職を失った。これは1945年以来63年ぶりの異常事態。昨年12月時点の失業率は7.2%と約16年ぶりの高水準に達したが、エコノミストでなくても今後も上昇を続けることに疑問を挟む余地はない。