5月までの入場者数が「あまりに少なすぎる」と心配されていた上海万博だが、7月に入ると夏休みの学生や地方からの家族連れが押し寄せてきて、ようやく熱く盛り上がってきた。来場者数は7月21日についに3000万人を突破した。

 来場者の増加は、同時に巨大な利益を生み出している。7月21日時点における「万博に関わる直接的な売上」は、およそ300億元(約3900億円、1元=約13円で計算)になる。

 内訳は、入場券がざっと40億元(「4000万枚×1枚当たり平均100元」で計算)、会場内の公共エリアにおける販売活動で約10億元、58企業のスポンサー料の合計が約40億元、さらに「海宝グッズ」などの特許商品が約200億元(全国の販売拠点5500カ所の合計)である。

 当初、収支はトントンでよしとされていた上海万博だが、建設費(180億元)と運営費(106億元)を軽くカバーしてしまう勢いだ。

「長蛇の列」がビジネスに

 さて、以上は「正規ビジネス」だが、万博こそ最大の商機とばかりに群がる裏ビジネスも好調だ。

 上海市内にある某社は、表向き「旅行社」の看板を掲げている。だが、実はここが手がけるのはパッケージツアーや格安航空券の販売などではない。本業はなんと、パビリオンの専用通路パスの販売だ。このパスを手に入れると、長時間並ぶことなく、専用通路を通ってパビリオンに入場することができる。

パビリオンの入場を待つ人で大混雑

 「中央政府の幹部家族のお世話もしました」と中国人社長のAさんは話す。4時間待ちや5時間待ちは当たり前の上海万博が生んだ、まさしく「裏口ビジネス」である。

 気になる料金だが、にわか仕立てのような同社のブログには、そのものズバリの紹介がない。Aさん曰く「直接交渉に応じます」。人民元で4桁ぐらいだろうと筆者は見積もるが、それでも「4時間も待てない」という人にはありがたい商品だろう。

 また、「長蛇の列」に目をつけて、大学生の間でちょっとした小遣い稼ぎになっているのが、予約整理券ゲットの代行ビジネス。待ち時間に比例して課金するスタイルが多く、地元紙によれば「8時間待ちのサウジアラビア館の予約整理券は600元、中国館は200元」だそうだ。

 ところで7月1日、75歳以上の老人とその付き添い(1名に限る)は優先通路を使用することで、待たずに入れるという規定が発表された。ある中国の学者は真顔で「これから年寄りを貸し出すビジネスが出るかもしれない」。あまりにブラックすぎるユーモアだが、なんでもアリの中国だけに、あながち冗談とは言い切れない。