数年前から脚光を浴びている日本型の社会インフラの海外への輸出、海外市場での採用が着実に実績を上げつつある。

 設計、製造、建設から運用、保守までを請け負うパッケージ型輸出とまではいかないものの、中南米、フィリピンにおける日本発のデジタル放送規格の採用、インドネシアにおける地下鉄、台湾新幹線、北米進出に向けた鉄道事業などの成果は広く知られつつある。また、商社等による水事業なども進出が続いている。さらには電力、水道、高速道路、地下鉄などの分野で、今後の成果への期待が高まりつつある。

 反面、先行する欧米大手企業(ジーメンス、GE等)の巨大化、グローバル化はさらに加速しており、事業規模等において日本との差が縮まったという印象は持ちにくい。

 後から日本を追いかけていたはずの中国も、アフリカ等の新興国における官民一体の取り組みによってますます存在感を高めている。挟撃される形となった日本の位置づけは先行きの不安を払拭できないという声も依然として根強い。

市場のルールを制定してしまう欧米モデル

 日本型インフラのパッケージ輸出の課題を明らかにする前に、まずは先行する欧米モデルを明らかにしておこう。

 欧米モデルの特徴は、まず対象国に対して、植民地時代まで遡る人的、文化的関係と影響力を保持していることである。また、グローバル市場を想定したビジネスモデルを築き、標準化・規格化を踏まえた競争ルールを制定する点も特徴だ。

 抽象的な言い方だが、「良いものが売れる」ではなく「売るものはこちらで決める。余計な選択肢は排除する」といった仕組みになっている。

 言うまでもなく、欧米各国は植民地時代からインフラ構築・運用に関与している例が数多くある。緊密な関係を有する現地人パートナーを持ち、場合によっては現地インフラ関連の法制度、規制、行政部門等にも影響力を有している。そのため、スタート時点から日本よりも優位なことが少なくない。