(米「パシフィックフォーラム CSIS」ニュースレター、2014年33号)
By Phillip C. Saunders
中国の地域外交は支離滅裂である。
中国の指導者たちは「チャーム・オフェンシブ」という一種のプロパガンダ政策を再開した。2013年10月に習近平国家主席と李克強首相が東南アジア5カ国を訪問した。また、ハイレベルな「周辺外交」政策座談会に出席し、この地域の平和で安定した環境を作るために「善隣友好」関係を発展させる中国政府の意図を強調した。アジア歴訪中に習近平国家主席は中国と東南アジアを結ぶ「海のシルクロード」を提唱し、李克強首相はASEAN諸国との協力を強めるために7つの分野において提案を行った。
その一方で、海洋上の領有権を主張する中国政府の強引なやり方は、アジア全体に懸念や警戒を生み出している。
2013年11月に中国は東シナ海における防空識別圏(ADIZ)の設定を宣言した。それ以来中国政府は論争中の釣魚島/尖閣諸島をめぐる日本との対立をより深刻化させている。また、ジェームス礁(マレーシア沖から50マイル)に軍艦3隻を送ったり、セコンド・トーマス礁(仁愛礁)に座礁し遺棄されている船の乗務員への補給のためフィリピンが派遣した船舶を阻止しようとした。
このような行動は東シナ海および南シナ海における係争中の海洋領域に対する実効支配を強化しようという中国の決意の表れであり、核心的利益には絶対に妥協しないという習近平国家主席の公約が強く表明されている。
対立する国々の分断を図る中国
安定の維持と海洋権益の防御という中国が目指す二元的な目標は、西洋の研究者には矛盾しているように見える。近隣諸国が領有権を主張している領土に対して権利を強引に求める一方で、中国はいかにして地域の安定の維持を望めるのだろうか。
しかしながら、中国人の視点からすれば、「矛盾」とは上手く対処すべき緊張であり、相反する目標のどちらかを選ばなければならないものではない。