入学の動機を「若い時に勉強できなかったから」と話す老人もいれば、「昔やりたかった夢を今叶えたいから」と話す老人もいる。「パーキンソン病の夫に戸外での楽しみを与えたい」という老人もいた。

 ここでは、卓球台に向き合って速球を打ち返す老人、社交ダンスで軽やかなステップを刻む老人など、老いを感じさせない若々しい姿が見受けられた。

老人は家族が家で面倒を見る

 2011年に行われた第6次人口調査によれば、中国の人口は13億4000万人。その中で、60歳以上は人口の13.2%(約1億8000万人)を占める。上海市では、60歳以上の老人が市の人口の23.4%(331万人)を占める。上海は確実に高齢化社会に突入している。

 高齢化社会を迎える上海だが、社会インフラはまだまだ十分ではない。バリアフリーという概念も未熟だ。街には凸凹になった歩道や、階段に手すりのない歩道橋などが散見される。

中国では自分で歩けなくなったら終わり?

 上海市内には、90年代に国有企業が払い下げた6階建ての「老公房」というアパートがいくつも建っている。ここでは、エレベーターの設置を巡って激しい議論が繰り広げられた。「誰がその費用を負担するのか」について決着がつかず、結局、社会全体がエレベーター設置に消極的になってしまった。アパートの住民にとっては、「歩けなくなったら、後はベッドで『その日』を待つしかない」という状況である。

 上海では、基本的に老人は家族が家で面倒を見るという習慣がある。独居老人や生活条件が厳しい場合などでなければ、めったに老人ホームや介護施設には入らない。そうした施設に対するネガティブなイメージもいまだ根強い。

 言ってみれば、中国の老人は、公的な医療や介護に頼らない「自立」した老い方をせざるを得ないのである。

 老人にとって、確かに厳しい環境である。だが、日本のように手厚く保護された老後生活と比べて、どちらが幸せなのかは分からない。