東京モーターショーが始まった。

 「海外勢の出展中止」「商用車も・・・」という以上に、華やかさも、そして内容も薄れた自動車展示会である。残念ながら。

会場(西棟)に並ぶ自動車メーカー、部品メーカーのブース群。出展社が激減し、かつそれぞれコストを削ったことが明らかで、報道招待日で観客もコンパニオンガールもいないと、全体に寒々とした印象は否めない(筆者撮影)

 メガメディアは「エコカー全盛」と、ここでもお決まりのパターンにはめ込んだニュースを流すことで済ませてしまった。

 そうした「報道」がなぜ生まれ、その結果、世の雰囲気を、さらには自動車とも深く関わる他の分野の人々をもミスリードしてしまうのか。この日本のメディアの弱点については、前回指摘した通り。それさえもまだまだ表層に止まる状況分析なのであって、いずれもう少し掘り下げていく機会もあるだろうと思う。

 今回は、一応は自動車のプロフェッショナルとして生きている私の目から見た東京モーターショーの実像を、産業や企業のあり方、そして本論たる「技術の力」という視点から紹介してみたい。

海外メーカーの姿が消えた理由

 まず、海外メーカーの、ほぼ全面的な出展回避について。

日本のメーカーでも、日産自動車をはじめ3社が、今年初頭に開催された北米国際オートショー(NAIAS)への出展を取りやめている。

 北米国際オートショーは米国・デトロイトで毎年開催されている。ちなみに米国では、ほぼ同時期にロサンゼルスで、他にはニューヨークとシカゴで毎年、自動車ショーが開催されている。

 利益の多くを稼ぎ出す米国マーケットに対して、日産がプレゼンスを示す場を回避したのは、リーマン・ショック~世界バブル崩壊のパニックの中だったとはいえ、いささか拙速、過剰反応だった。

日産は東京モーターショーで、市販モデルとして発表済みの電気自動車「リーフ」を中心に展示

 しかし他の2社、三菱自動車、スズキにしてみれば、明確な効果が表れない舞台にコストを費やす余裕は「今はない」という判断を下したのは理解できる。

 東京モーターショーに対する海外メーカーのスタンスも、基本的にはこれと同様のはず。

 その前提。彼らにとって、日本の市場規模は小さい。バブル期に年間販売が40万台を超えた瞬間風速はあったものの、その後は25万~26万台/年で推移。2008年は20万台/年に減り、今年はさらに市場が冷え込んでいる。