プライベート戦略を強化

楽麻呂 今後さらに野村が進化していくために取り組んでいることはどのようなことですか。

奥田 私がグループCEOに就任した2年前から「パブリックに加えプライベート領域への拡大・強化」という戦略を掲げ、様々な取り組みを行っています。この戦略を分かりやすく言うと、お客様一人ひとりにカスタマイズされた「あなただけのため」のサービスやソリューションを提供することです。

それを実現するためには「お客様」、「商品・サービス」、「お客様との接点・デリバリー」という3つの軸で考え、お客様それぞれのニーズを的確に把握し、求められているものを最適なタイミングで届けることが重要だと考えています。

 また「プライベート」という言葉には、「私募」という観点で、非公開企業の資金調達のサポートをすることも含まれます。具体的には、スタートアップ企業に成長資金を提供する担い手になるとともに、個人投資家の皆様にとって夢のある投資先を提供することを目指しています。

 プライベート戦略に関する具体的な取り組みとしては、2021年4月に資産運用部門を再編しインベストメント・マネジメント部門を新設し、9月にはスパークス・グループと共に投資法人を立ち上げました。また、野村キャピタルパートナーズでは、事業再編や事業承継、MBOなどを積極的にお手伝いしています。

落語家 三遊亭楽麻呂氏

楽麻呂 プライベート市場の活性化は、社会の持続的成長にもつながるわけですね。

奥田 はい。また、国内の営業部門では従来のビジネスモデルから、お客様のご資産全体に対するコンサルティングを中心に据えた「資産コンサルティング業」への進化を目指した取り組みを行っています。

 具体例として、売買ごとではなくお預かり資産の金額に応じて一定の手数料をいただく新たな手数料体系(レベルフィー)を今春本格的に導入する予定です。中長期の目線で質の高いコンサルティングを行いお客様のご資産が拡大することで、お客様にご満足いただき、さらにビジネスの機会をいただく。お客様と当社が同じベクトルを向くようになることで、これまで以上に野村への信頼が高まるものと考えています。


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ビジネスの拡大とコストコントロールを通じて安定成長を実現

楽麻呂 様々なビジネスに取り組む社員の皆さんも日々変化されているのですか?

奥田 先程も触れましたが、キャリア採用を強化して多様性を生み出すと共に、社員向けの能力開発の研修を数多く実施しています。社員がさらに成長すれば、お客様のニーズに対応できるようになります。「変化対応力」はまさに当社のDNAです。

 DNAと言えばもう一つ。「常に新しいことを手掛けていく」DNAも当社にはあります。例えば、今や当たり前に存在する不動産投資信託(REIT)も最初に手掛けたのは当社でした。私は社員に対して常々、「チャレンジすることを目標に掲げてほしい」、「ノープレイ、ノーエラーは一番いけないことだ」と伝えています。

楽麻呂 社員の皆さんとのコミュニケーションはどのようにされているのですか。

奥田 なるべく直接会って一人ひとりと話したいところですが、昨今のコロナ禍ではなかなか会える機会が限られます。そこで社内のイントラネットに「CEOコーナー」というコミュニケーションページを設けて、社員から質問を出してもらい、それに私が真剣に答えるようにしています。

 また、社員の意見を聞く従業員サーベイも定期的に行っています。昨年は88%の人が「長期的な戦略を支持している」と回答してくれていますが、このような指標も見ながら、役員全員でコミュニケーションの強化に取り組んでいます。

 当社は2025年に創業100周年を迎えるのですが、100周年に向け「グループとして社会にどう貢献していくのか」といったパーパスの議論も進めています。こうしたコミュニケーションを今後も継続し一体感を醸成していきたいと考えています。

楽麻呂 株主の皆様にとっては、足元の業績や昨今の海外情勢も気になるところだと思いますがいかがでしょうか。

奥田 足下のロシア・ウクライナ情勢は非常に不透明ですが、当社はリスクコントロール、リスクマネジメントをしっかり行っており、金融環境やマーケットが大きく変動する時に備え、どう対応するかを日々侃々諤々議論しています。状況の変化に応じお客様にもしっかりお話しさせていただくとともに、的確な情報のご提供に努めています。

 業績に関しては、昨年12月に発表した第3四半期決算でROEが8.7%となりましたが、2025年3月までに8~10%を安定的に達成できるよう、ビジネスラインを拡大するとともに、コストコントロールにもしっかり取り組んでまいります。

 株主、そして投資家の皆様からは株主還元に関するご質問を多くいただきます。野村ホールディングスの1株あたりの配当実績は、その期に応じて変動はあるのですが、配当と自社株買いを合わせて利益の50%以上とする方針です。ビジネスにしっかり取り組むことで50%以上の還元を株主の皆様にさせていただきたいと考えています。今後も安定的に成長していけるよう努力してまいります。

楽麻呂 還元(比率)が高いのは驚きましたが、上期(配当)は8円でしたね。

奥田 海外での損失もあり、利益の水準が落ちてしまい8円に下がってしまいましたが、ここからしっかり取り返していけるよう取り組んでまいります。

楽麻呂 今後どんなグループにしていきたいとお考えですか。

奥田 全ての社員が誇りを持ちワクワクしながら働ける会社にしていきたいです。当社の持続的な成長と社会全体の持続可能な成長は同じ道の上にあると考えています。コンプライアンスが確立されていることはもちろんのこと、お客様のニーズにもしっかりと対応するグローバルな金融機関として挑戦し続けていきます。

詳しい対談内容はこちら(動画をご覧いただけます)

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