中小企業のIoT活用を支援する
産業用IoTベンチャーのアムニモ
デジタル化が加速度的に進展する社会にあっては、企業にとってIoTやAIといったテクノロジーの活用は、業務効率の改善や生産性の向上、新たな価値創造やイノベーションの創出といった観点からもはや必要不可欠と言っていいだろう。
しかし、IoTやAIなどのシステムを導入している企業の割合は、従業者規模別で大きな格差が生じていることも明らかになっている。総務省の「平成30年通信利用動向調査(企業編)」によると、「導入している」「導入予定がある」と答えた企業は、1000人以上の大企業で44.1%だったのに対し、100~299人の中小企業では15.6%にとどまった。
また、IoT・AIなどのシステムを導入しない理由について聞くと、「使いこなす人材がいないから」「導入後のビジネスモデルが不明確だから」「導入コスト、運用コストがかかるから」の3つが上位を占めた。これらの結果は、大企業に比べて投資余力が乏しく、専門知識を持つ人材の確保・育成が難しい中小企業において、IoT・AIの活用が後手に回っている現状を如実に表していると言える。
コストと専門知識という中小企業のIoT推進を阻害する二大要因を取り除き、産業向けIoT(Industrial IoT=IIoT)に必要なサービスを“とにかく手軽に簡単に使える”をコンセプトとして提供しているのが、産業用IoTベンチャーのアムニモである。
同社は横河電機の100%子会社として2018年5月に発足。IoT導入に関わる部分をパッケージ化し、データ取得から運用までの基本サービスを月額課金のサブスクリプションモデルで提供しているほか、「IoTをどう使えばいいのか分からない」というユーザーの声に対しては、業種・業務別に用意すべきセンサとデータ取得に必要な手順を「お悩み解決レシピ」としてウェブサイトに公開している。
とにかく簡単、早く、安く使える
水位計測のサブスクサービス
中小企業のIoT活用を強力にバックアップするアムニモから、新たなサービスが登場した。月額課金で利用できる「簡易無線水位計測サービス」がそれで、2020年1月20日より申し込みをスタートした。
マーケティング
吉田 勇作氏
アムニモのマーケティング担当、吉田勇作氏はサービス開発の経緯について、次のように話す。「世の中の水位計が今、どういう状態にあるかというと、精密に計測しようとすると、センサだけで約100万円もする高価なものになります。高性能なセンサは安いものでも40~80万円程度します。それをお客様が買い取って、システムをつくるとなると、相当な時間と約400万円程度のお金がかかります。気軽に使える水位計というのはなかなか存在しない中で、とにかく簡単に、早く、安く使えるものとして、月額課金のサブスクリプションモデルでサービスを開発しました」。同サービスは初期費用なしの月額料金で利用できるため、従来の自前でシステムを構築する手法に比べて数十~100分の1程度の費用で済むという。
実際に工事現場ではどのような課題や問題点があるのか。「例えば、河川域の工事では、雨が降るたびに現場に駆けつけないといけないため、工事関係者は年間あたり相当な回数足を運んだり、水位監視のために現場に寝泊まりすることもあると言われます。仮に水位計を設置したとしても遠隔監視ができなければ意味がありませんし、初期費用が高かったり、操作性が難しいとなると、導入のハードルはますます高くなります」と吉田氏は話す。
アムニモの「簡易無線水位計測サービス」を利用し水位の遠隔監視を行うことで、現場に寝泊まりする必要はなくなるし、本当に必要な時にだけ現場に足を運ぶなど、迅速な対応が可能になる。懸案のコストについては初期費用0円、水位計も回線費用もオールインワンパッケージの月額料金(3万円~)で利用でき、サブスクリプションサービスで利用したい期間だけ利用できる。また、操作性についても、電池駆動式で電源工事などが不要なため、設置後、電源スイッチを入れるだけでデータ計測をスタートできる。
中小の土木建設会社のほか
大手からも問い合わせが殺到
利用者は、水位センサとケーブル、送信ボックスから成る無線水位計を現場に設置する。計測したデータは携帯電話回線を通じてクラウドに送信され、利用者はPCやスマホなどのデバイスを通じて閲覧することができる。水位がしきい値を超えると関係者にアラートメールが送信される機能も搭載されている。
活用シーンとしては、溜池管理や地下道の防災、工事現場の水害予防などを想定している。「一昨年の西日本豪雨では、溜池が決壊し、洪水被害が起きました。溜池の水位を遠隔監視し、防災に役立てたいという地域の方々のニーズも多く、一部の地域で試験導入も始まっています」と吉田氏は説明する。
プレスリリースの発表以降、中小の土木・建設会社はもちろんのこと、大手企業からの問い合わせも増えているという。「彼らの中には、水位計を資産として持ちたくないと考える企業も多く、本サービスであれば、使いたいときに使えるし、あとは数が必要な時にも必要な量だけ使いたいというご要望もいただいています」(吉田氏)。
今後の展開について吉田氏に尋ねると、「システムの統合とお客様起点のソリューション開発」と返ってきた。「1つのセンサで1つのものを測れたところで、たかが知れています。いろいろなセンサをつなげて、システムとしてつくり上げることで、新たなデータ活用が可能になります。また、われわれ自らがお客様の現場に足を運び、お客様と二人三脚で現場の課題を解決するようなソリューションを開発していきたい」と意気込みを示す。
IoTの仕組みを簡単に実現し、現場目線での業務効率の改善や生産性の向上、新たな価値創造やイノベーションの創出につなげるアムニモのサービス。まずは手軽に試して、その効果を実感してほしい。