多様化と高度化が進む、女性たちの「学び直し」志向

 日本女子大学リカレント教育課程は、2007年9月に「リカレント教育・再就職システム」として開講し、2008年に大学としては日本初の「リカレント」を冠する履修証明プログラムとして認められた。一貫して「すべての女性にとって人生航路の必要な時に立ち寄り、休息し、給油し、糧食を得て、次の航海に再出発できる港となりたい」という精神のもと、先進的な教育プログラムを展開。リカレント教育課程が2015年12月に文部科学省「職業実践力育成プログラム(BP)」に認定され、厚生労働省「専門実践教育訓練講座」に指定されたことで「受講生一人ひとりの資質に即した学び直しプログラム」のさらなる充実を進めた日本女子大学にとっては、2016年に女性活躍推進法が事業主に対して施行されたことも大きかったという。

 この法律により、働く女性たちの意識が大きく変化し、出産・育児等から社会復帰を目指す主婦層だけでなく、「非正規雇用から正規社員に就職し直したい」「異なる職種に挑戦したい」などといったキャリアチェンジを目的とした受講者が急激に増えたとのこと。こうした多様性の拡大は受講生の内訳を見ても明らかで、他大学出身者の割合が71.8%となっているほか、年齢層も20〜50代と幅広い。女性たちの意識変化に対応すべく、同大学におけるリカレント教育課程では、より実践的な再就職支援に力を注いでいるという。

「リカレント教育課程独自の求人Webサイトをいち早く立ち上げて運営を行っているほか、1月下旬には当課程受講生のための合同企業説明会を開催しています。例年約20社が参加し、見学企業も含め、その数は現在まで年々増え続けています」(リカレント教育課程)

リカレント教育課程合同企業説明会

「リカレントは人材の宝庫」
膨らむ採用企業側の期待値

 注目すべき点は2つ。1つはこの再就職支援プログラムの実績の高さだ。2016年度以降、就職志望の修了者の就職率は93.4%、しかも正社員雇用が4割を超える。受講開始時の職歴内訳では15.8%だった正社員数(残る大半は非正社員もしくは主婦)が修了後は約2倍以上に増えたことになる(いずれも2016~2018年度実績)。これはリカレント教育課程受講者の人材価値の高さを物語っている。リカレント教育課程では東京商工会議所の会員となって即戦力の人材獲得を望む都内企業とのコラボレーションを進めており、そうした努力の成果も少なくないというが、なによりも大きいのは受講者に共通した学習意欲の高さとのこと。

リカレント教育課程修了式

「社会経験や生活経験を持った方が何らかの理由で離職した後、改めて学び直そうと入学してくるわけですから、もともと持っているポテンシャルや能力は非常に高いわけです。しかも修了要件14科目28単位280時間に対し、平均履修実績は34.6単位363時間(2018年度実績)。つまり多くの方が修了を目的にしているのではなく、まさに自らを高めるため必要条件以上の時間を学習に費やしていることが数字上でも如実に現れています」(リカレント教育課程)

 第2の注目点は、企業側の期待値の増大だ。「本課程の修了生を『人材の宝庫』と高く評価し、リカレント採用枠を設けて継続採用を決めてくださる企業もまた増えているんです」と関係者らは胸を張る。2018年には東京商工会議所との間で「女性のための新たな学び・再就職支援に関する覚書」を締結。リカレント教育課程受講者にとって、より実践的な講座の受講やインターンシップの実施をはじめ、より一層のキャリアチェンジ機会を図っていくという。

現状のカリキュラムに満足することなく、
時代の多様化にマッチした「学び直し」を

 では実際のカリキュラムにはどのような特徴があるのだろうか?

「多様な求職活動につながるようエンプロアビリティ(働く自覚と自信・社会性・責任感・コミュニケーション能力)を再開発していく『キャリアマネジメント』に加えて、グローバル化が進む現代のビジネス界で即戦力となるようビジネス英語やITリテラシー、さらには日本語コミュニケーション論などを用意しています。選択科目でも企業会計や簿記のほか、マーケティングマネジメント、消費生活アドバイザー準備講座、記録情報管理士資格準備講座などなど実効性の高いカリキュラムを開設しています」

授業科目 記録管理概論

 授業スタイルも多様。ほぼ実務家教員による授業で、ワークショップなど双方向スタイルのものや、eラーニング、そして企業と連携した特別授業も網羅している。さらに日本女子大学は2018年8月、「リカレント教育のモデルの検証」への取り組みが文部科学省「男女共同参画推進のための学び・キャリア形成支援事業」に採択された。社会人女性や企業へのモニター調査結果を反映した講座を「女性のためのビジネススキルアップコース」として実施し(2019年1月終了)、その成果を検証しながら新たなプログラム立ち上げを検討し、カリキュラムの改革・改善に挑んでもいる。

本課程における取り組みの略歴
授業科目 社会人のための自己表現

日本女子大学生涯学習センターの取り組み

 一方、「生涯学習センター」は、地域との連携・共生を目指し、東京都文京区や神奈川県川崎市をはじめとする地域で、公開講座やインターネットで学習できるVOD講座を提供するなど、情報化社会に対応した取り組みを行っている。こうした取り組みにも、「生涯学び続けることの大切さ」という、創立者の成瀬仁蔵が提唱した理念が垣間見える。

「公開講座のうち、リカレント教育課程で設置されている科目やテーマを一般の方にも提供するのがリカレント連携講座です。男女共同参画社会としての働き方、起業などを学ぶことができます。野村證券からの寄付講座として金融経済講座も行われています」(生涯学習センター)
※2020年度前期の講座は3月2日(月)より申込開始。資料請求、講座内容、講座申込などの詳細は、生涯学習センターホームページを参照。


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