荷主と運送業者のマッチングサービス「ハコベル」が急成長している。

 2015年12月に軽貨物ドライバー向けサービス『ハコベルカーゴ』の提供をはじめ、2019年には『ハコベルコネクト』として大型物流企業向けサービスも開始。サービスエリアは全国に拡大し、現在も順調に売上高を伸ばしている。好業績のカギは、プラットフォームの徹底的な効率化だという。

 今回は、ゼンリンデータコムが提供するドライバー業務効率化アプリ『配達アプリ』を活用した、『ハコベルカーゴ』における業務効率化の取り組みとその効果について、ハコベル事業本部の石川広伸氏にお聞きした。

物流のシェアリングプラットフォームという新しい事業モデルが注目される

「宅配クライシス」という言葉を聞いたことがあるだろうか? ネット通販などの急成長や配送ドライバーのなり手減少に伴い、宅配便数が急増、配送ドライバー不足が深刻な問題になっている。

ラクスル株式会社
ハコベル事業本部
軽貨物カーゴ部
石川 広伸 氏

「宅配クライシス」に対して、ラクスル株式会社 ハコベル事業本部の石川広伸氏は、「人手不足であることも確かですが、実際にはドライバー一人ひとりの誤配や再配達などによる業務の非効率さが、物流業界が抱える課題の要因の一つになっています。

 物流業界は依然としてデジタル化が進んでいませんが、インターネットなどを活用しこれらの構造を変えることで、よりよい世界を実現するのが当社の目標です」と話す。

「ラクスル」と聞いて、ネット印刷、新聞折り込み・DMサービスを思い出した人もいるかもしれない。

「実は『ハコベル』も、シェアリングという点では『ラクスル』と同じコンセプトのビジネスです。全国の運送会社やフリーのトラックドライバーをネットワークで結び、それぞれの非稼動時間を有効活用します」

 このビジネスモデルが注目され、『ハコベル』の登録台数は急増中。9月に発表された2019年7月期決算によると、『ハコベル』事業セグメントの通期業績は、売上高が前期比3倍の15億4100万円に増加している。このうち、事業開始時より展開している『ハコベルカーゴ』の急成長を支える一つが、ゼンリンデータコムが提供するドライバー向け業務効率化アプリ『配達アプリ』だ。

業務フローに『配達アプリ』を導入してドライバーの配送品質を標準化

「ラストワンマイルを担うのは中小運送会社や個人のドライバーです。それらのドライバーは配送の品質がバラバラであり、アンコントロールになりがち。一方、荷主企業の要望に応えるためには、配送品質が高く、生産性の高いドライバーのみをマッチングさせる必要があります。フリーや中小運送会社のドライバーをどのようにマネジメントするかは、物流業界にとって大きな課題になっています。」と石川氏は話す。

 そこで、ハコベルは、ドライバーの配送品質を標準化するサポートを行っている。特にラストワンマイルにおける業務の課題解決策の一つとして、業務フローに『配達アプリ』を組み込むことを推奨している。

『配達アプリ』は、住宅地図で定評のあるゼンリングループのゼンリンデータコムが開発した、宅配ドライバーに特化したスマートフォン向けアプリである。最大の特長は、ゼンリンの住宅地図データを採用していること。ゼンリンの住宅地図データは、全国の調査スタッフが実際に現地を歩き、目で見て、記録した情報を収集してつくられている。一軒一軒、一戸一戸の建物の名称や住居者名、詳細な場所、一方通行などの道路情報といった情報が、大縮尺の地図上に落とし込んであり、個配に欠かせないツールだ。

『配達アプリ』では、配達先の建物内にあるテナント情報、事業者名、集合住宅の居住者名を階数ごとに表示し、戸別に荷物情報や配達状況を入力することが可能だ。これらの情報は、住宅地図上にピンを立てて可視化することができる。さらに、配達時の留意事項などを書き留めて置けるメモ機能があり、配達業務の効率化に有効だ。

「宅配は最も経験則を要する業務であり、ベテランのドライバーは、どのマンションに宅配ボックスがあるのか、どの家が何曜日の何時ごろに在宅しているのかといったことを覚えています。これらの情報を元に、荷物の届け先の一覧を見ただけで、どのルートで回れば効率がいいか判断できますが、一定レベルに達していないドライバーはそれができず、時間通りに配送ノルマを完了することができないことがあります。また、経験のあるドライバーでも、配達エリアが変わると対応できないケースが見られます。『配達アプリ』を使えば、これらの課題を大幅に改善することが可能です」と石川氏はメリットを語る。

1日当たりの配達件数が20件以上増加したドライバーも

 ハコベル登録ドライバーに、配達アプリをテスト導入。約200名のドライバーが新たに配達アプリ利用を開始した。

「今は『経験値』の高いドライバーほど生産性が高いという状況です。しかし今後は、このようなベテランのドライバーはだんだん減っていき、日時を自由に選べる働き方であることから、ダブルワークで参入する経験の浅い人が増えてくることが考えられます。このような人たちに対して、『経験値』をIT化することにより、スーパープロフェッショナルでなくても一定の品質で配達できる仕組みをつくりたいと考えています」

 興味深いデータがある。同社で『配達アプリ』の利用についてアンケート調査(有効回答数57名)を行ったところ、回答者の42%が「アプリの利用によって配達効率が向上した」と回答したという。そのうち65.2%は「1日あたりの配達件数が5件以上増加した」と回答し、「1日あたりの配達件数が10件以上増加した」「1日あたりの配達件数が20件以上増加した」と回答した人もそれぞれ17.4%に達したというから驚く。


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「『働き方改革』も注目されていますが、物流業界ではなかなか進んでいません。しかし、『配達アプリ』は使えば使うほど情報が蓄積されて生産効率が上がっていくため、従来よりも短期間で業務をこなすことができるようになり、『働き方改革』にも寄与します。業務を効率化し、収益を上げられる仕組みができることは、ドライバーの待遇改善にもつながります」と石川氏は力を込める。

 課題解決を支援するツールとして、『配達アプリ』の普及にも期待が高まる。

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