調査や研究のみならず、人材の育成や事業・組織の改革支援など、さまざまな角度から日本企業の経営革新を支え続ける日本能率協会(JMA)。その活動の中核をなし、数多くのトップマネジメント、次世代リーダーの成長を導いているのが「JMAマネジメント・インスティチュート」(JMI)だ。そのプログラムは、巷間のビジネスパーソンを対象にした講座や研修とはひと味もふた味も違うという。何が一線級の経営層の心を捉え、効果に結びつけているのか。修了者の声も交えながら明らかにしたい。
 

不透明な時代。意識調査から見える経営層の焦燥感

日本能率協会の経営課題実態調査によると、日本企業にとっての「3年後の経営課題」は、「人材の強化」を筆頭に、「新事業の開発」「事業ポートフォリオの再構築」と続く。VUCA(不安定、不確実、複雑、あいまい)と呼ばれる先行き不透明な時代に、企業トップが抱く恐れや焦燥感が透けて見えるようだ。さらに根が深いのは、「管理職層の育成」「組織風土改革」「次世代経営層の発掘・育成」と、上記の経営課題解決に直結する組織・人事面の基礎に関わる課題も同時に抱えていることだ。

だが、こうした課題は昨日今日降って湧いたものではない。市場の変化が速く激しくなった現代、重要性が改めて意識されたにすぎない。バブル経済真っただ中の1990年以来30年もの間、「JMAマネジメント・インスティチュート」(JMI)を運営してきた日本能率協会は、それら重要なテーマに向き合い続けてきた。

今も目的は「新しい時代・未来を切り拓く経営者・幹部の育成」と変わらないが、プログラムは時代の要請に応えて見直し、これまで約4,500名にもおよぶリーダーがこれを学び、国内外で活躍している。
 

軸を磨き、確かな意思決定のできるリーダーを生み出す

日本能率協会で学んだリーダーたちは、なぜあまたある経営を学ぶプログラムではなく、JMIを選ぶのか。同協会理事で経営・人材革新センターのディレクターを務め、数々のプログラムを主導してきた曽根原幹人氏はこうJMIの特長を述べる。

一般社団法人日本能率協会 理事
経営・人材革新センター ディレクター 曽根原幹人 氏

「JMIには3つの特長があります。まず一つ目は、「考え方」を磨くという点です。日々重要な意思決定を迫られる経営幹部層には、パターンやコツなどといったものでは対処できない“考え方”や“軸”が欠かせません。これをJMIでは、「師生同学」、すなわち講師と参加者が質の高い知的交流を行いながら学び合います。二つ目は、心理学・研修メソッドなどに裏付けられた成長ステップが用意されているということです。参加者は、講師や他の参加者との交流や講義を経て、自身の思考のゆらぎと学びを体感します。そこから自身の成長につながる行動変容が実現するのです。そして三つ目は強固な人脈形成です。共に課題を持ちプログラムを修めた参加者はまさに同志であり、JMI修了後も交流のネットワークが持続します。業界業種が異なっても、互いの知見を交換しあい持続的な成長の源泉となります。JMIではそうしたつながりが続くよう、さまざまな施策でサポートします」
 

プログラムが修了した後も続く人脈

いずれも他には見られない本質的で実効力のある特長だが、事業成長の上で特に重要なファクターとなる人脈形成の点で気になるのが参加者の質だ。前述したようにこれまで30年間4,500名を数える参加者がJMIで学んでいるが、所属企業はそうそうたるものだ。オフィシャルページ(https://jma-mi.com/)には「修了者の声」として実際の社名が公開されているが、「日本たばこ産業」「小松製作所」「竹中工務店」「味の素」など、日本を代表する企業が並ぶ。こうした企業のリーダー層と切磋琢磨して学び合うことは、その後のビジネスにとって何物にも代えがたい経験となる。実際の修了者の声を見てもそれは明らかだ。

株式会社竹中工務店 取締役執行役員社長
宮下 正裕氏
部長のためのエグゼクティブ・マネジメントコース修了

私は、20年前に第7期生(1996年度)として部長のためのエグゼクティブ・マネジメントコースを受講しました。当時を振り返ってまず思い出すのは、約9か月という長期間にわたって真剣に議論をした光景です。当時は特に「経済のグローバル化」が謳われ、「日本の空洞化」が問題視されるなど、現在と同様に、将来の不透明感が強い時代でした。そのような状況で、事業の責任者として第一線で普段はとても忙しいメンバーが、仕事を離れ、長期間膝詰で徹底的に議論を行いました。業種や個人によって時代認識や問題意識は様々です。9か月という長い期間の議論は、当然表面的な内容では収まらず、本質的な議論に及んでいきます。気が付けば、時間を忘れて互いに譲れない激論を戦わせるような場面がよくありました。こうした経験を通じ、一つの事象に対して多様な考え方があることに改めて触れ、多面的で柔軟な物の考え方を深めることができました。(中略)当時のメンバーの方々とは今でも時々集まって、昔のように議論をしながらお酒を酌み交わしています。研鑽し合える多くの仲間と出会えたことは何よりも最大の収穫でした。

株式会社SUBARU 執行役員 第二技術本部長 兼 東京事業所所長
江里口 麿氏
エグゼクティブ・ビジネスリーダーコース(EBL)修了

組織内での立場が変わり、業務範囲や判断する案件の規模が大きく変化したこともあり、意思決定に必要な知識や考え方を学ぶ必要性を感じていた時期でした。
各テーマの講義を通じて意思決定に必要なスキルを体系的に学び、様々な角度で経営を考えながら、今後のマネジメントに活かせる貴重な情報や経営知識を獲得しました。加えて、各単位で講演された経営者の方々からは、生々しい経験談や経営に対する価値観、信念などをお聞きし、多くの気づきから自分なりの経営者像を描けるようになりました。また、異業種の方々との深い議論や交流により視野を広げられた事も大きな成果です。
経営を実践する立場となった現在、研修で得た気づきや議論の中で見出した方向性が自分自身の意思決定に大変役立っています。

こうした参加者が研修で切磋琢磨することによって生まれるリーダー像として、曽根原氏はこうした理想を掲げる。

1. 社会を変える明確な理念と実現力を有する
2. 未踏課題の創造的克服に挑む
3. 多面的視座と洞察力を持つ
4. 大組織を率いる指導力を発揮する
5. 人間的魅力と倫理観を有する


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上記のような素養を持つ経営者を育てるため、JMIでは単にビジネスのノウハウにとどまらない深みと広がりを身に付けるためのプログラムが用意されている。端的にそれが現れているのが、9つあるコースのうちの「部長のためのエグゼクティブ・マネジメントコース」(EMC)のプログラムを図式化したものだ(右図)。

 他にもJMIでは、さまざまなプログラムが用意されているが、注目すべきものを3つピックアップしてみたい。

① プロフェッショナル・ビジネスリーダーコース
実在する中堅企業を題材に、その企業の経営陣・従業員との対話、事業の現場見学、各種経営指標の分析を通じて、ケース企業の将来における経営課題の抽出と解決策の立案を行う。最終的にその経営革新プランを経営陣に提言、採用の可否がその場で判断される「修羅場疑似体験型」実践プログラム。
参加者は、システム思考を高め、全社的視点で経営を見抜く力を養って、経営革新の実践能力を身に付けて会社に戻っていく。

② リーダーのためのリベラルアーツコース
リベラルアーツとは一般教養を指し、一見企業活動とは関わりのない抽象度の高いテーマを扱う。中でも哲学、宗教、社会学、文化論、国際関係論、人間学などをテーマに、専門家との連続的対話を通じて内省を繰り返し、多軸的思考や本質を見る目を養う。これによって「解のない時代に持論を形成する力」「人間的魅力」を高める。京都合宿では知恩院や龍安寺を訪ね、日本文化・日本的価値観の奥深さを体験する。

③ “アジア共・進化”リーダーズフォーラム
ESG経営やSDGsへの対応など、企業活動と社会との関わりは年を追うごとに緊密なものとなっている。本フォーラムは、次世代のビジネスリーダーとって不可欠な、「社会課題解決を通じた本業の成長・発展」を、ASEANのフィールドで実体験し、構想力を鍛える。
昨年はマレーシア・クアラルンプールを訪問、マハティール首相との面会で、日本とマレーシアの連携の可能性について意見交換を行った。また、フィリピン・マニラでは、同国の農業セクターの生産性向上について意見交換を行うなど、具体的テーマに突っ込んだ議論を展開した。

 

最後に曽根原氏は、「JMIは、時代によって変化する経営課題に対応できる確固たる“信念”をこれからも引き続き大切にしていきます」と、不透明で流動的な環境に対して不変の本質を貫く姿勢を改めて示し、「日本産業界から生まれるイノベーションが、日本社会を、世界を、さらに未来を変えると信じています」と結んだ。
 

●参考:JMI全コース紹介

次世代経営者育成
コース名 受講対象者・コースコンセプト
部長のためのエグゼクティブ・
マネジメントコース
【対象者】事業部長、本部長、部長、担当部長
多様な対話の積み重ねによって経営観を磨き、経営者としての準備を整える。
 
エグゼクティブ・ビジネス
リーダーコース(EBL)
【対象者】本部長、事業部長、部長・室長、工場長、支社・支店長、所長
知識習得×マインド醸成×徹底内省で、目指すべき経営者像を確立する。
 
プロフェッショナル・
ビジネスリーダーコース(PBL)
【対象者】営業本部 部長、製造事業所長、総務・人事部 グループマネジャー、支店長、企画部 担当部長
リアルケーススタディーを通じて、経営者としての意思決定力を強化する。

機能別・テーマ別リーダー育成
コース名 受講対象者・コースコンセプト
生産・開発マネジメントコース 【対象者】生産技術部、製造技術部、品質管理部、研究開発部
技術者から産業界を俯瞰した視野・視座を持った経営幹部を育成する。
 
戦略人事プロフェッショナルコース 【対象者】人事部 課長、部長代理、リーダー など
経営のパートナーとして企業をリードする『人事プロ』、未来のCHROを育成する
 
事業創造イノベーションコース
(旧:ビジネス・イノベーションコース)
【対象者】新規事業開発部門、R&D部門、マーケティング、経営企画部門の課長、部長
創造的ビジネスモデルを構想し、事業拡大を実現する。
リーダーのためのリベラルアーツコース 【対象者】リベラルアーツについて関心のある部長~課長クラス
正解のない時代に求められる判断軸と、人間的魅力を持ったビジネスリーダーを育成。
“アジア共・進化”リーダーズフォーラム 【対象者】海外事業部・国際事業部、広報・総務課長、経営企画部 部長、事業開発部門 部長・課長、営業マネジャーなど
アジアと共に進化し、次の豊かさを創り出す。
グローバルビジネスワークショップ 【対象者】営業部門・技術部門・管理部門 ソリューション事業部・経営企画部など
ASEAN実在企業の経営課題解決を通して、鋭いビジネス感覚を身につける。
 

 


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