中国の軍拡が、いよいよ日米同盟の核心にまで重大な影響を与える可能性が浮上してきた。もっと分かりやすく述べれば、日米同盟を骨抜きにしかねない不吉な展望なのである。
米国としても、アジアでの確実なプレゼンスを保つために日米同盟の維持は不可欠だろう。だが、その同盟の機能が、中国の軍拡という新たな要因によって、これまで通りには期待できなくなった。そうなれば、日米同盟自体の意味が深刻に問い直されることともなる。
ワシントンでは、もうそんな議論が始まっているのだ。
まるで野球からサッカーに変わるように同盟関係が激変
米国の気鋭の中国軍事研究者たちが、上記のような懸念を正面から指摘するようになった。アジアにおける日本との同盟関係は、今や「ゲームチェンジ(根本的な変化)」に直面した、というのである。
ワシントンではこのところ中国の軍拡が極めてホットな論題となっている。エジプトのムバラク大統領辞任も大事件ではあるが、中国の軍拡は中長期のスパンで論じなければならない大テーマとなっているのだ。
これについて議論したイベントの1つが、2月9日に「国家政策センター」の主催で開催されたセミナー「中国の軍事力の台頭=米国とその同盟諸国にとっての結果」だった。
このセミナーはタイトルどおり、中国の軍拡によって日米同盟などに大きな変化が出てきたという認識が大前提となっていた。
セミナーでは米海軍大学教授のアンドリュー・エリクソン氏、新アメリカ安全保障センターの研究員エブラハム・デンマーク氏、ランド研究所研究員のロジャー・クリフ氏の3人が見解を述べた。みな米国の政府や軍の関連機関で活躍してきた中国問題や軍事問題の中堅の専門家たちである。
3人とも、「中国の軍事力増強が米国の従来の同盟関係を根本から変えつつある」という「ゲームチェンジ」現象を提起し、警告するという点で共通していた。