昨年12月、安全保障会議および閣議の決定を経て、民主党主導政権下として初めてとなる防衛計画の大綱が策定された。昭和51(1976)年の初制定以来、自民党政権下を含め、3回目の改訂となる。

 今回の防衛計画の大綱は、「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱(22大綱)」(PDF)と称され、今後おおむね向こう10年間を見据えた我が国防衛力整備の基本政策文書となるものであり、新大綱に基づく向こう5カ年の「買い物計画」となる中期防衛力整備計画(PDF)も、同時に承認された。

 新大綱は、昨年8月に菅直人総理に提出された「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会(新安防懇:佐藤重雄座長)」の報告(PDF)をベースとしている。

冷戦時代の基盤防衛力から脱し、動的抑止力を構築

米戦闘機を日本へ売り込み、ゲーツ米国防長官

垂直着陸する「F-35」。日本の次期主力戦闘機として米国から購入を打診されている〔AFPBB News

 同報告の最大の特徴は、従来の防衛計画の大綱が踏襲してきた防衛力整備の基本構想である「基盤的防衛力」構想は、冷戦時代の遺物化しているとして、同構想から速やかに脱皮し、現在および見通し得る将来の安全保障環境に適合し得る高度な運用能力を備えた「動的抑止力」への体質変化を求めたことにある。

 さらに同報告では、「安全保障面」においては、非核三原則、集団的自衛権の行使、武器輸出三原則の一部見直しを促している。

 「防衛力面」では、複合事態(同時に各種の異質な事態が生起する事態)にも適切に対応し得る体制へ転換し、周辺海空域(海上交通路を含む)や南西地域の島嶼などの安全確保に重点を置くべきであるとして、常続監視体制、海空防衛力の強化や統合運用体制の推進を強調した。

 さらに、従来からは一歩踏み込んだ形で、日本に対する弾道ミサイル攻撃の状況によっては、敵基地への攻撃も必要となる場合もあるとの認識を示した。

 これに適合した適切な装備体系、運用方法、費用対効果を検討する必要があるとし、場合によっては、弾道ミサイル防衛システムによる防御面に加えて、自衛隊の打撃力による抑止の担保も重要であるとする意見も盛り込まれた。

 このように同報告は、従来の安全保障や防衛力の論議の中でタブー視されてきた意見を掘り起こし、今日的な視点をもって改めて見直し、その上で必要と思われる施策はすべて取り込むなど、極めて画期的な提言であるとの評価がある。

 反面、あまりにも「画期的」であるがゆえに、現政権下での採択を危ぶむ声があった。