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10MTVオピニオン


出演:一條和生(一橋大学大学院国際企業戦略研究科研究科長・教授)

この動画は知的教養メディア「テンミニッツテレビ・オピニオン」で収録した講義映像:AIとデジタル時代の経営論(1)オンラインSPAの衝撃からお送りしています。

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 一橋大学大学院国際企業戦略研究科研究科長・教授の一條和生氏が、デジタル時代を席巻するであろう、「デジタルディスラプション(デジタル破壊)」について解説する。

 現在、世界の経営者は、デジタルディスラプションに対して並々ならぬ危機感を抱いている。日本企業の中では、特にファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正氏がそうした危機感を抱いているが、一般的に日本の経営者の危機感は薄く、問題である。柳井氏はオンラインSPA に破壊されないようにするため、「情報製造小売業」を変革のビジョンに掲げた。

 ただし、デジタルディスラプションは、単にデジタルテクノロジーの問題ではない。それは、若い世代や社会の変動と連動して生じている。これに対応するには、会社が根本的に変わる必要があるだろう。例えば、アパレル卸は現在ほとんど崩壊状態である。リミテッドやGAP、インディテックス、ユニクロなどSPAの登場が、その主要な原因となってきた。しかしこれらSPAの企業も、今後、オンラインSPAの登場によって、デジタルディスラプションの危機に立たされるかもしれない。

 重要なことは、未来を担う若者に支持される会社になるということだ。ミレニアル世代が自分の会社に入社してくれるか、お客さんになってくれるのかといったことを考えて、変革を起す必要があるだろう。例えば、無印良品は現在、世界の若者にその企業哲学が支持され、海外の店舗数が国内の店舗数を上回っている。未来の時代の担い手に支持されない会社には、未来はない。

 オンラインSPAの代表例は、Everlaneという会社である。この会社はルールブレイカーとして、ルールブレイカーである新しい世代の支持を受けている。例えばEverlaneは、商品のコストを全て透明化し、従来は隠されていた価格構造をオープンにしてしまった。あるいは、ユーザーが商品価格やリリースを決定できるというサービスも行っている。生産現場も透明であり、低賃金労働者の搾取がないことを証明してみせた。

 このように、企業とユーザーが仲間として共鳴し、新しい未来を共につくっていくという、新しい企業と顧客の関係性が生まれつつある。こうした状況で、依然として従来の企業のあり方に従っているのであれば、衰退を余儀なくされてしまうだろう。
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2話目以降は「10MTVオピニオン」でご覧ください。