個包装の切り餅から脱酸素剤をなくした「OXYDEC」

 日本人の食生活に欠かせない餅。かつて、つきたての餅は正月しか味わうことができなかったが、切り餅を個包装することで長期保存が可能になり、いつでも食べることができるようになった。画期的な商品であるとともに、ロングセラーにもなっている。

 長期保存の鍵となったのが脱酸素剤だ。個包装内の酸素を吸収することでカビの発生や風味の低下を防ぐ効果がある。ところが、最近になって、その鍵となる脱酸素剤が切り餅の個包装に使われていないことに気付いた人がいるだろうか。

 実は、包装のフィルム自体が酸素吸収性能を持つため、脱酸素剤を同封しなくてもよくなったのだ。日本初の酸素吸収機能を有する透明な酸素吸収性包材「OXYDEC(オキシデック)」である。開発したのは、東洋製罐グループだ。「OXYDEC」は同社が開発した酸素吸収性を有する接着剤で複数のフィルムを張り合わせた多層構成になっている。個包装内を長期間脱酸素状態にでき水分保持力も向上するため、個包装の開封直前まで切り餅のつきたてのおいしさを維持できる。脱酸素剤が不要になり、廃棄物の削減も達成した。

酸素吸収性能をもつフィルム「OXYDEC」。 「サトウの切り餅」など佐藤食品工業の切り餅製品に採用されている

「OXYDEC」はもちろん、食品だけでなく、医薬品や産業用など幅広い分野で使用できる。

日本の包装容器市場のパイオニアでありリーディングカンパニー

「OXYDEC」を開発した東洋製罐グループは、1917年に日本初の容器専門会社として創業した東洋製罐株式会社を中核とする総合包装容器メーカーである。

 同グループの歴史はそのまま、日本の食品製造・容器包装の歴史と言える。1935年に日本で初めてアイスクリーム用の紙容器を生産し、1958年には日本初のビール缶を発売した。1969年に世界で初めて製造したレトルト食品の容器は、レトルト食品市場を創出したといっても言いすぎではないだろう。その後も、1991年には、材料と製造工程を根本から見直し、加工時に水を使用しないため環境負荷を低減する「TULC(Toyo Ultimate Can、タルク)」を開発。このほか、凹凸やビードのある独特な形状の「エンボス加工缶」や「ビード加工缶」など、商品の差別化につながる付加価値の高い容器を率先して生み出してきた。

(左)エンボス加工缶、(右)ビード加工缶

 最近では、高齢化社会の需要に対応する、安定して力を入れやすいびん形状にすることで、キャップを開けやすくした「ユニバーサルデザインびん」なども製造し好評だ。

ユニバーサルデザインびん

100周年を機に、東洋製罐グループの経営思想を制定

 東洋製罐グループの2016年3月期の連結売上高は8020億円、経常利益は266億円となっている。いずれも前年を上回っており、業績は堅調だ。だが、国内市場は人口減少にともない、成熟化しつつある。グループの売上の85%を占める包装容器関連事業も楽観はできない。

 これからの100年、東洋製罐グループはどのような成長の基盤を築こうとしているのか。その方向性を確認するために、同グループでは創業100周年を迎えるのを機に「東洋製罐グループの経営思想」を制定し、新たに経営理念、信条、ビジョンを定めた。この経営思想をグループの共通指標として総合力を発揮し、次の100年を目指す考えだ。

 2016年度からは第四次中期経営計画もスタートした。ここでは「持株会社体制を活かしたグループ戦略の立案と推進」、「国内包装容器事業を中心とした既存事業構造改革のさらなる推進」、「容器をコアとしたバリューチェーンにおける事業領域拡大の具体化」、「今後の成長投資に備えた資産・財務の健全化の推進」の4つの基本方針を掲げている。

将来の成長の柱の1つとして期待されるライフサイエンス事業

 東洋製罐グループホールディングスのマーケティングセンター長は、これからの100年の抱負として、「これまでの100年で培った技術を結集し、新たな成長の基盤を築きたい。顧客の要望に応えることはもとより、さらに消費者・流通のニーズを先読みする必要があります。食の安心・安全を重視する世の中の意識の高まりにも応えていきたい」と力を込める。

 中期経営計画に掲げる、新規事業などの事業領域拡大も着実に進んでいる。将来の成長の柱の一つとして期待されているのが、ライフサイエンス事業だ。中でも、2013年に提供を開始した「GENOGATE(ジェノゲート)」が注目されている。

 「GENOGATE」は、同社グループで新たに開発した高性能DNAチップと、同社グループが保有する独自技術を活用し、微生物(カビや食中毒菌など)の存在や毒素産生能等を同時検出する新しい検査技術である。「GENOGATE」のDNAチップには、3mm四方に64のDNA断片が固定されている。このDNA断片と微生物由来のDNAが結合すると、その場所が蛍光を発し微生物の有無等を判断する。

(左)DNAチップ、(右)微生物由来のDNAが結合した場所が蛍光を発した様子

 DNAチップによる検査技術は過去にもあったが、高額で、医療用・研究用などに限られていた。「GENOGATE」は、必要な情報だけをチップにスポットすることにより、産業用として安価に提供することが可能になった。従来の方法では、微生物の種類ごとに検査方法が異なり、時間や人手がかかっていたが、DNAチップなら、短時間、低コストで一括検出できる。更には、“モノ差し”となる標準物質をチップに搭載することで、HACCPへの対応等も迫られる食品業界が要求する、検査法の精度管理への対応も図っている。

GENOGATE」は国内のみならず、海外での大きな需要が期待されている。たとえば、タイなどの食品輸出国では、輸出先の品質基準に合わせるためにエビデンスが必要になる。培養法より扱いやすい「GENOGATE」は、技術者が定着しない海外でも受け入れられやすい。

 このほか、倉敷紡績株式会社との連携により誕生した核酸クロマトグラフィー検査キット「GeneFields(ジーン・フィールド)」では、目視判定が可能で導入しやすいのが大きな特長だ。これら種々検査キット・ノウハウを個別ニーズに応じて提案するとともに、検査法の低コスト化・標準化により食品産業用途での適用拡大を目指す。

GeneFieldsクロマト検査紙イメージ図

 更に、同社グループでは健康・医療分野にもDNAチップ技術の応用展開を推進している。

 東洋製罐グループは今後も、変化を先取りして、社会課題の解決に取り組んでいく考えだ。たとえば、フードロス、超高齢化社会、買い物難民問題など。世界には取り組むべき問題がまだ数多くある。中身、容器、殺菌、充填など同社グループが100年の歴史で培ってきた、食品製造に関するノウハウを生かしたソリューションを提供することで、食の安全・安心に貢献できるだろう。海外展開にも大きな可能性がある。これからの100年の成長にも大いに期待できる企業グループである。

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