資金調達で手足を縛られている地方政府

 実は、中国の現行の法制度では、地方政府は債券を発行したり銀行から資金を借り入れたりすることが禁止されている。にもかかわらず、地方政府はどのようにして巨額の資金を借り入れたのだろうか。

 例えば、北京市政府は、地下鉄や道路の整備などのインフラ投資の需要が旺盛である。だが、インフラ施設を整備するための資金需要があるにもかかわらず、法的には債券の発行や銀行から資金を借り入れることが禁止されている。そのため北京市政府は工商銀行(中国最大手の国有商業銀行)に融資を申し込んでも、受け付けてもらえない。そして、地下鉄を建設する目的で債券を発行することもできない。

 なぜ、地方政府の資金需要を無視するような法律が作られたのだろうか。

 それは、地方政府に起債の権限を認めた場合、地方政府が勝手に資金を集める、いわゆる「乱集資」の心配があるからだ。中央政府および全国人民代表大会(立法府)は乱集資を防ぐために、債券の発行と銀行からの資金借り入れを禁止する法律を施行したのである。

 「改革開放」の初期段階においては、金融関連の法律が整備されておらず、金融市場も十分に発達していなかった。その中で地方政府による債券発行などを認めれば、確かに金融秩序を混乱させる恐れがあった。

 しかし、「改革開放」政策が始まってすでに三十余年経過している。銀行以外にも、債券市場はそれなりに成長している。にもかかわらず、地方政府による起債を禁止する関連の法律は改正されないままである。

 地方政府としては、何としても資金を調達しなければならない。このままでは経済発展が大きく遅れることになる。地方の首長にとっては、経済成長率こそ自らの業績を証明することができるため、何としてもインフラを整備し、経済成長を図りたいというわけである。

「上に政策あり、下に対策あり」

 中国では「上に政策あり、下に対策あり」という言い方がある。つまり、地方政府は法律への対策として様々な投資会社を設立する。その会社の名義で銀行などから資金を調達するのだ。これらの投資会社は、中国では「融資平台」、すなわち、資金を調達するプラットフォームと呼ばれている。

 だが、新たに作った投資会社が資金を調達しようとしても、差し出せる担保の資産はほとんどない。担保の資産がなければ、銀行は融資の申し込みに応じてくれない。