政治局常務委員会における意思決定の主目的はコンセンサス作りと既得権保護にある(The need for consensus and the desire to protect vested interests are the main drivers of Politburo Standing Committee(PBSC) decision-making)

 党最高指導者間の関係は、大企業の取締役会のそれに近く、強力な既得権益の相互作用で決まる(relations at the top of China's Party-state structure are akin to those in the executive suite of a large corporation, as determined by the interplay of powerful interests)

大使館公電の意外な内容

習近平新体制が発足、汚職対策に意欲 中国

中国の新しい政治局常務委員。習近平(上)、(中段左から)李克強、張徳江、兪正声、(下段左から)劉雲山、王岐山、張高麗〔AFPBB News

 筆者にとっては、まさに「我が意を得たり」。過去192回、現在の中国は「国家などではなく、8200万共産党員を株主とする巨大な非上場株式会社だと考えた方がはるかに理解しやすい」と言い続けてきたからだ。

 しかも出典は2009年7月23日付の在北京米大使館公電「09BEIJING2112」。れっきとした米国政府の秘密指定公文書だ。「政治局常務委員会=大企業取締役会」説は単なる思いつきではなく、北京の米国大使館政治部が重用する現地中国人情報筋の結論である。

 内容的には、恐らく共産党関係者自身が直接見聞した党内事情がほぼ正確に再現されている。

 というわけで、今回は「内話:コンセンサスと利権で動く共産党最高指導部」と題されたこの興味深い報告電報の概要を、筆者の独断と偏見とともに、紙面の許す限りご紹介したい。

 ちなみに、「内話」とは興味深い情報源から内々入手した情報を意味する外務省用語である。

胡錦濤は取締役会長?

●政治局の意思決定は大企業の取締役会のそれに似ている
●胡錦濤は大企業の取締役会会長またはCEOに比することができる

●政治局常務委員会の意思決定は、より多くの株式を持つ者がより大きな発言権を持つ企業の意思決定に近い
●最大株主である胡錦濤の意見は最も重いが、常務委員会は通常、採決しない

●常務委員会の決定はコンセンサスによるものであり、各常務委員は拒否権を持つ
●台湾、北朝鮮などの重要政策は25人の政治局で決めるが、他の問題は常務委員会だけで決める

●常務委員会は世界で最も民主的な組織であり、民主主義が存在する中国唯一の場である

 (筆者コメント) やっぱりそうだったのか。米国大使館が信頼する複数の中国共産党事情通が言っているのだからまず間違いないだろう。そうだとすれば、中国共産党も、世界中の巨大企業と同様、巨大なるが故の「官僚主義」の弊害に陥っていると見るべきだ。