高福祉・高負担で知られるスウェーデンの「素顔」を前回の当コラム(2009年8月25日「スウェーデン・モデルは成功か失敗か」)で紹介した。社会保障給付費のGDP(国内総生産)比を見ると、日本の27%に対してスウェーデンは52%と2倍近くに達する。
高福祉・高負担の社会は、税金が高いために競争力が低下して活力を失い、国家が衰退する・・・。そう言われてきたが、果たして本当なのだろうか。今回は企業を取り巻くビジネス環境に焦点を合わせ、この国の「素顔」を紹介したい。
厳しさ増す雇用環境、失業者対策で「起業」促進
「市場原理主義か否か」――。そういう単純な二分法では収まらない、様々な企業形態がスウェーデンには存在する。
簡単に言えば、誰でもたとえ外国人であっても、簡単に会社を設立できてしまうのだ。所有者が1名だけの有限責任会社(Aktiebolag)、すなわち会社をつくる本人が株式を全額保有する会社も認められている。
政府による起業促進は、失業者対策の一環でもある。1990年代からスウェーデンの失業者は著しく増加しており、統計局によると2009年第2・四半期(4~6月)の失業率は9.1%。また、アンダース・ボリィ財務相は2010年の失業率は11.4%まで悪化すると発言している。
これまで筆者は産後の育児休暇を取得していた。休暇中はスウェーデン政府から育児手当を受け取りながら、英国や日本の数誌に執筆して原稿料をポンドと円でもらっていた。
左手で赤ん坊を抱っこして乳を飲ませる一方、右手でパソコンを打って一応2人分働いていた(つもりだ)。子どもができる前は、隣国デンマークのコペンハーゲンまで通って仕事をしていた。
つまり、スウェーデンで給料をもらった経験はほとんどない。しかし先日、第3子が1歳になり、託児所へ預けて働くことにした。と言っても、前述したように雇用情勢は厳しく、外国人には尚更だ。
筆者も会社設立に挑戦、登記申請は40分で完了!
そこで、スウェーデンの労働市場へ本格参入するに当たり、「外国人」の筆者は会社設立に挑戦することにした。ウェブサイト上でそれに関する情報を簡単に入手できるし、英語版も充実している。
まず、企業登録庁のホームページへ行き、申請書をプリントアウトする。設立したい会社の形態を選び、氏名や住所、電話番号、メールアドレスを記入した上で、会社名の候補を3つまで書く。
その上で、事業内容に「ニュース記事の翻訳・配信、記事の執筆」と記入し、後は日付を入れてサインするだけ。手数料900クローナ(約1万1000円)をインターネットで自分の口座から送金すると、わずか40分ほどで登記の申請が完了した。