画像出典元:『ビジネスフレームワークの教科書 アイデア創出・市場分析・企画提案・改善の手法55』

 将棋に「定石」があるように、ビジネスには経営学者や実務家によって開発された「フレームワーク」がある。思考を助ける枠組みであり、アイデア創出やニーズの発見、課題の洗い出し、戦略立案、業務改善など、活用シーンはさまざま。その概要と使用法を心得ておくことが、ビジネスパーソンにとっての大きな武器となる。本連載では、事例・参考例が豊富な『ビジネスフレームワークの教科書 アイデア創出・市場分析・企画提案・改善の手法55』(安岡寛道、富樫佳織、伊藤智久、小片隆久共著/SBクリエイティブ)から、内容の一部を抜粋・再編集。

 第1回は、アイデア創出の幅を広げる「ランダム刺激発想法」について解説する。

<連載ラインアップ>
■第1回 斬新な着想を得るための「ランダム刺激発想法」とは?(本稿)
■第2回 商品開発のプロセスに顧客を巻き込む「コミュニティ共創法」と実施のポイントは?(6月19日公開)
■第3回 経済学者H・ミンツバーグが提唱したSWOT分析の発展形とその使い方とは?(6月26日公開)
■第4回 注力すべき事業・商品・顧客が分かる「パレート分析」とは?(7月3日公開)
■第5回 顧客の「欲しい」を見つける「バリュー・プロポジション・キャンバス」の使い方とは?(7月10日公開)
■第6回 新たな成長戦略の策定に活用できる「アンゾフの成長マトリクス」とは?(7月17日公開)
■第7回 ライバルとの比較で独自のビジネスを構想する「戦略モデルキャンバス」の使い方とは?(7月24日公開)
■第8回 「儲ける仕組み」と「コスト構造」を明らかにする「収益モデル」の使い方とは?(7月31日公開)

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ランダム刺激発想法 概要

 ランダム刺激発想法は「水平思考」を実践するための発想法です。

ビジネスフレームワークの教科書』(SBクリエイティブ)

■ 水平思考とは

 水平思考とは、既存の理論や情報・既成概念にとらわれずに発想の枠を広げることができる思考法です。理論や概念をもとにして1つの結論に向かってまっすぐ垂直に掘り下げていく思考法を「垂直思考」と呼ぶことから、これの対になる思考法という意味で「水平思考」と名付けられました。

 上の図に示す通り、垂直思考では基本的に1つの「結論」が導き出されますが、水平思考では複数の「推論」が導き出されます。

 つまり、水平思考は、理論を重ねた実現性の高い結論ではなく、既成概念にとれわれていない推論を数多く導き出すことに重点を置いています。ランダム刺激発想法を使ってアイデアを発想する場合も同様に、既存の理論や情報・概念、および実現性にとらわれず自由に発想することが重要です。

■ ランダム刺激発想法とは

 ランダム刺激発想法は、ランダムに選んだ単語とテーマ(あるいは単語どうし)を無理やりに関連付けることで、新しいアイデアを創出する発想法です。

 選ぶ単語は本当に無作為で構いません。例えば、以下のようにして選択します。

  • 辞書をパラパラと開いて目にとまった単語を選ぶ 
  • SNSで公開されている写真から単語を連想する

 このように自由な発想で単語を選択してください。選ぶ方法が自由であればあるほどランダム性が高くなり、面白いアイデアが生まれるかもしれません。重要なのは、一見すると関連性がなさそうな単語を選択することです。

 ランダム刺激発想法によって生み出された有名な商品に「∞(むげん)プチプチ」があります。おもちゃクリエイターの高橋晋平が考えた「∞プチプチ」は2007年にバンダイから発売され、国内外で300万個以上を売り上げた大ヒット商品です。高橋晋平は「しりとり」によって自らランダムな単語を発生させ、そのランダムな単語からさまざまなおもちゃのアイデアを創出していきました。

無限プチプチの画像:BANDAI HP「歴史」内(https://www.bandai.co.jp/corporate/history/)
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 ランダム刺激発想法を用いると、既成概念にとらわれない斬新なアイデアを創出できるので、テーマとなる分野や課題が行き詰っているときには役に立つかもしれません。