将棋に「定石」があるように、ビジネスには経営学者や実務家によって開発された「フレームワーク」がある。思考を助ける枠組みであり、アイデア創出やニーズの発見、課題の洗い出し、戦略立案、業務改善など、活用シーンはさまざま。その概要と使用法を心得ておくことが、ビジネスパーソンにとっての大きな武器となる。
本連載では、事例・参考例が豊富な『ビジネスフレームワークの教科書 アイデア創出・市場分析・企画提案・改善の手法55』(安岡寛道、富樫佳織、伊藤智久、小片隆久共著/SBクリエイティブ)から、内容の一部を抜粋・再編集。
第8回は、グループ分けによって注力すべき領域を特定する分析手法、「パレート分析」について解説する。
<連載ラインアップ>
■第1回 斬新な着想を得るための「ランダム刺激発想法」とは?
■第2回 商品開発のプロセスに顧客を巻き込む「コミュニティ共創法」と実施のポイントは?
■第3回 顧客の「欲しい」を見つける「バリュー・プロポジション・キャンバス」の使い方とは?
■第4回 ライバルとの比較で独自のビジネスを構想する「戦略モデルキャンバス」の使い方とは?
■第5回 「儲ける仕組み」と「コスト構造」を明らかにする「収益モデル」の使い方とは?
■第6回 新たな成長戦略の策定に活用できる「アンゾフの成長マトリクス」とは?
■第7回 経済学者H・ミンツバーグが提唱したSWOT分析の発展形とその使い方とは?
■第8回 注力すべき事業・商品・顧客が分かる「パレート分析」とは?(本稿)
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パレート分析(ABC分析)概要
パレート分析(ABC分析)とは、複数の事物や現象について、それらを比率や頻度に応じてグループ分けする分析手法であり、また、グループ分けすることによって管理効率を高める手法です。
具体的には、いくつかある指標の中から重視する指標(例えば売上比率や購入数など)を決めたうえで、以下の2つのグラフを比較して、注力すべき事象(下図のAグループのような比率の高いもの)を見つけ出す分析手法です。
- 「各要素の個別の数値」を大きい順に並べた棒グラフ
- 「累積比率(割合の合計)」を示した折れ線グラフ
このような、パレート分析で作成するグラフのことを「パレート図」と呼びます。パレート分析を用いると、注力すべきグループ(例えば、Aグループ)を特定できます。
なお、パレート分析はこのような経営上の課題管理だけでなく、研究開発や営業企画など、さまざまな場面で活用できます。
【Column】パレート分析とパレートの法則
パレート分析は「パレートの法則」と密接な関係があります。パレートの法則とは「経済において、全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出している」ということを示した法則です。一般的には「上位20%の顧客の取引額が、全体の80%の売上を占める」ともいわれており、このことからパレートの法則は「2:8の法則」や「ばらつきの法則」と呼ばれることもあります。
例えば、パレート分析を実施し、構成比率20%のAグループの売上が、全体の売上の80%を占めている状況が確認できた場合、「その分析対象はパレートの法則に従っている」といえます。