東京きらぼしフィナンシャルグループ 代表取締役社長、きらぼし銀行 取締役頭取の渡邊 壽信氏(撮影:宮崎 訓幸)

 東京圏を拠点とする金融機関3行の合併を機に2018年に誕生した東京きらぼしフィナンシャルグループ(以下・東京きらぼしFG)。日本経済の中心地でビジネスを展開する同社にとって、その事業環境は一般的な「地銀」に抱くイメージとは全く異なる。競合するメガバンクなどに対して、地域の金融機関としてたどりついた商機と、戦略を聞いた。

シリーズ「地域金融機関の今、未来」ラインアップ
第1回 茨城と栃木の産業特性のポテンシャルを最大に引き出す、めぶきFGの戦略とは? 
第2回 めぶきFGトップに聞く、地域金融機関ならではの店舗網のあり方とデジタル戦略 

■第3回 東京きらぼしFGが競合ひしめく東京マーケットで見出した商機と勝ち筋(本稿)
第4回 「UI銀行」を核に、東京きらぼしFGのデジタル戦略の狙いと成長へのシナリオ
第5回 京都FG社長が語る、持ち株会社移行で目指す「銀行のモデルチェンジ」
第6回 京都FGが挑む、「閉塞感」を打ち破るグループ社員の意識改革
第7回 トモニHDがトップから現場まで一体で進める、地域密着型金融グループへの道
第8回 トモニHDが徳島大正銀行と香川銀行の「2行体制」を堅持する2つの理由


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3行の合併によって誕生

――東京きらぼしFGの設立経緯と、これまでの事業の変遷を教えてください。

渡邊 壽信/東京きらぼしフィナンシャルグループ 代表取締役社長、きらぼし銀行 取締役頭取

1962年生まれ。1985年東京都民銀行入行。2011年融資管理部長、2014年執行役員融資統括部長に就任。2017年東京TYフィナンシャルグループ取締役、2018年東京きらぼしフィナンシャルグループ代表取締役副社長、きらぼし銀行取締役頭取に就任。2020年より現職。
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座右の銘:「着眼大局、着手小局」 全体を大局的に捉え、大きな目的を定める。ただし、検討に時間をかけすぎず、行動はできるだけ早く、小さく始める。間違いは軌道修正し、大きな目的に対してブレていないかを確認しながら進める。頭取になったときから、常に意識している言葉。

渡邊壽信氏(以下敬称略) 2014年に東京都民銀行と八千代銀行が経営統合し、東京TYフィナンシャルグループという持ち株会社としてスタートしました。さらに2016年に新銀行東京も加わり、特徴の異なる3つの銀行を傘下に持つ金融グループとなりました。

 しかし、別々の銀行が経営統合しただけでは、収益面、効率面で十分な効果を発揮することができませんでした。そこで2018年5月に傘下の3行を合併して「きらぼし銀行」という1つの銀行にまとめ、持株会社の商号も「東京きらぼしフィナンシャルグループ」に変更しました。

 現在は、きらぼし銀行とデジタルバンクである「UI銀行」の2行を中心に、コンサルティング、証券、フィンテックなどのグループ会社を有する総合金融サービスグループとなっています。さらに広告代理業など、金融とは直接関係がなくてもお客さまにとって有益なサービスを追加しています。これまでに、金融サービス業としての形は、ほぼ出来上がったと思っています。

 銀行業法の改正で、グループ子会社の業務領域が拡大していますが、きらぼしグループのラインアップは、特に業法を意識してというよりも、当社として内製化したほうがいいと思う業態を積極的に取り込んできたというのが実際のところです。

――東京きらぼしFGは、「東京圏の地銀」という地銀のなかでもユニークな存在です。自社を取り巻く事業環境をどう見ていますか。

渡邊 確かに当社は東京圏を拠点とする都市型地銀であり、他の地銀とは立ち位置が異なります。地方の地銀はその地域でのシェアが高く、銀行の店舗自体が、1つの社会インフラとしての存在感があると思います。一方、当社の銀行としてのシェアは、地域の10%にも満たない状況です。

 ご存じの通り、東京はメガバンクをはじめ信金、信組などさまざまな金融機関がひしめいています。マーケットが大きい半面、競争が非常に激しい環境で、どうやって存在感を出していくか、合併前からの大きな課題でした。

 これからの銀行は、従来の業務を継続するだけでは先細っていきます。まず、法人向けの事業は、お客さまのニーズに素早く対応することが求められます。そのため、コンサルティング機能など、メガバンクと同等のサービスをグループで取り揃える必要がありました。

 これにより、当社が以前から持ち続けているフットワークを生かしたお客さまのニーズに対応するスピード、お客さまと伴走する身近な存在であることが活かされ、メガバンクにはない対応が可能になってくると思います。この強みを生かして、東京圏の中で特色を出そうとしています。