国内に約360万社ある中小零細企業のうち、約三分の一と取引がある信用金庫。全国に254ある信用金庫の店舗数は7000を超える。このネットワークをフルに活用し、地域活性化につなげるべく、信用金庫の中央金融機関である信金中央金庫もデジタル化に着手している。地域によって抱える課題も異なるなか、どう進めていくのか。現状や今後の展開を、信金中央金庫副理事長の須藤浩氏に聞いた。(インタビュー/JDIR編集長・瀬木友和、文/前川 聡)
業界内共通のプラットフォームの構築を目指す
――デジタル化という点において、信用金庫業界が抱える課題をどう認識されていますか。
須藤 浩(以下敬称略) 信用金庫は全国に254あり、地域の中小零細企業にとって身近な金融機関となっています。長年にわたり各地域で蓄積してきた情報は、信用金庫ならではの資産です。この業界独自の資産の価値を、デジタルの活用によってどこまで高められるかが課題となっています。
デジタル化を進めるにあたり、まず考慮しなければいけないことは、信用金庫が置かれている状況はそれぞれの地域によって多種多様であるということです。都市部と地方部にある信用金庫では地域性が全く異なりますし、規模の大きい先とそうでない先では課題認識や持っているリソースの量も異なります。
加えて、信用金庫は「Face to Face(=対面)」を軸として、お客様との密接なリレーションに基づく営業活動を得意としていますが、この特徴・強みを生かしながら、デジタル化(≒非対面)を進めていくのは簡単なことではありません。誰かが音頭を取って進めていく必要があります。
――信金中央金庫の役割が重要になるわけですね。どのようにコミットされているのでしょうか。
須藤 信用金庫業界は「信用(守り)」が何より大切な一方、リスクを取って新たな領域に「チャレンジ(攻め)」していく姿勢も重要です。そのような中、信金中央金庫が、業界全体のデジタライゼーションを牽引する存在として開発を進めたのが、中小企業向けのポータルサービス「ケイエール」です。