2050年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指し、政府、自治体、企業がさまざまな取り組みを進めている。再生可能エネルギー普及も推進されているが、その実現に向けて欠かせないのが蓄電池だ。これまで100年以上にわたり、自動車用バッテリー、産業用鉛蓄電池などの製造・販売を手掛けてきたエナジーウィズは、その経験と技術力を生かし、「蓄電ソリューションプロバイダー」として新たな価値を提供し、サステナブルな社会づくりに貢献しようとしている。

新たなパートナーとの協業で、事業をさらに拡大

「エナジーウィズ」という社名には、「エネルギー(Energy)と共に(with)」という思いが込められているという。といってもなじみのない人もいるかもしれない。

 それもそのはず、同社の設立は2021年7月。前身の昭和電工マテリアルズの蓄電デバイス・システム事業部門から独立し、蓄電池専業メーカーとして新たなスタートを切ったばかりだ。ただし、歴史は長い。同社代表取締役 取締役社長 兼 CEOの吉田誠人氏は「鉛蓄電池技術を用いた自動車用バッテリー、産業用鉛蓄電池などの製造・販売では100年以上の実績があります」と紹介する。

エナジーウィズ株式会社 代表取締役 取締役社長 兼 CEO 吉田 誠人 氏

 その沿革を紐解くと、1916(大正5)年に、新神戸電機の前身である日本蓄電池製造が蓄電池の製造・販売を開始したことに始まる。61年には日立製作所が資本参加し、日立グループの一員となった。2012年には日立化成工業(当時)の完全子会社となり、16年には同社と合併。20年には昭和電工が日立化成を連結子会社化したことにともない、社名を昭和電工マテリアルズに変更した。

 エナジーウィズの歴史はまさに日本の歴史に重なる。二度の世界大戦、その後の高度経済成長期と、日本のモータリゼーションを始めとするさまざまな産業の発展を支えてきたのだ。現在は、日本の自動車向け・産業向け蓄電池の有力プレイヤーとして確固たる地位を築くとともに、タイ、台湾など、海外のグループ企業も拡大し、グローバルに事業を展開している。

「昭和電工マテリアルズからの蓄電デバイス・システム事業の独立は、アドバンテッジパートナーズ(以下、AP社)および東京センチュリー、両社とのパートナーシップにより実現しました。日立化成および昭和電工グループで培った顧客基盤に加え、新たなパートナーのネットワークにより、大きなシナジー効果が発揮できると自負しています」と吉田氏は語る。

 AP社は国内投資ファンドの草分けで、国内およびアジアの中堅企業を対象としたバイアウトや大手企業からのカーブアウト(事業の切り離し)などの案件で豊富な実績がある。最近では再生可能エネルギー関連の企業への投資も積極的に行っている。一方の東京センチュリーは、みずほフィナンシャルグループ、伊藤忠商事などを母体とするリース大手で、自動車リースでは国内トップクラスの規模を誇るだけでなく、傘下にはニッポンレンタカーサービスも有する。むろん、データセンター、通信など、多様な産業とのパイプもある。吉田氏が「パートナーとの連携により、自動車産業だけでなく、さまざまな産業のお客様への販売機会が増えると考えています」と語るのも納得がいく。

鉛蓄電池はリサイクルの優等生。環境面においても貢献

 エナジーウィズが得意とするのは鉛蓄電池技術だ。自動車用バッテリー、産業用鉛蓄電池のほか、蓄電池技術を活用したゴルフカートなどの製品も製造・販売している。

タフでロングに使える自動車用バッテリー 「 Tuflong 」

 政府は2050年にCO2の排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の方針を掲げている。脱炭素化の動きがさまざまな産業で進んでいる。再生可能エネルギーの普及には蓄電池が必須だ。電気自動車(EV)向け電池も需要が高まっている。

 こうした中、エナジーウィズの主力製品が鉛蓄電池であることについて、「今後はリチウムイオン電池などが次世代電池としてとってかわるのではないか」と考える人もいるだろう。だが、吉田氏は「リチウムイオン電池はリチウムやコバルトなどの希少金属料を使うため高額になりがちで、普及までにはまだ時間がかかると思われます」と指摘する。蓄えられる電気の容量が小さいのも課題だ。

「自動車だけでなく、農業機械や建設機械、データセンターや通信設備、さらには家庭まで、さまざまなシーンで蓄電池は使われます。コスト面での要求は厳しく、なかなか高価なリチウムイオン電池を導入できないという業態でもあります。再生可能エネルギーの蓄電設備なども含め、当面はリチウムイオン電池などの次世代電池と鉛蓄電池との併用が続くと考えています」(吉田氏)

(左)産業用鉛蓄電池 「MSJシリーズ」長寿命タイプ 
(右)電気車用バッテリー SUPER LIFTTOP ECO

 環境面での影響はどうか。鉛といえば有害物質というイメージがある。「確かに、鉛をそのまま廃棄するわけにはいきません。ただし、日本では自動車用バッテリーの多くは、ディーラーで回収し、リサイクルされています。使用済みのバッテリーから鉛地金が生産され、また新しいバッテリーに使われます。鉛はリサイクルの優等生とも言われるほどです。最近ではアジア諸国でも鉛を再利用する仕組みができつつあります。当社が子会社を有する台湾、タイでも、リサイクルが進んでいます」

 また、リチウムイオン電池が次世代電池と呼ばれるのに対して、鉛蓄電池は「成熟した技術」という印象を持ちがちだが、それも誤解だという。吉田氏自身も技術畑で長年電池などの技術開発に携わってきた経験を持つが「確かに鉛蓄電池の歴史は長いものの、まだまだ高性能化が可能です」

 そう語る背景には分析技術の進化があるという。「鉛蓄電池は電極に鉛を用い、希硫酸などの電解液との化学反応によって電気を蓄えることができます。反応を可視化することが難しく、『匠の技』のような属人的なところもありました。しかし最近では分析機器が発達し、さまざまなデータを定量的に把握できるようになりました。これらをもとに、さらに耐久性や充電性能に優れた鉛蓄電池の開発にも着手しています」

「提案型蓄電ソリューション企業」として
新たな価値を提供

 次世代型蓄電池の開発競争が世界的に激化しているが、まだ普及には時間がかかりそうだ。加えて、市場では、鉛蓄電池も含めて、中国や韓国の企業が台頭している。こうした中、エナジーウィズはどのように優位性を発揮しようとしているのか。

「蓄電池単体では価格勝負の消耗戦になります。私たちは、鉛蓄電池の製造・販売にとどまらず、『提案型蓄電ソリューション企業』として、お客様や社会の課題解決に貢献したいと考えています」

 実績はあるという。たとえば停車時に自動的にエンジンが止まるアイドリングストップ車向けバッテリーの開発だ。CO2の排出を抑えられるとして、最近ではアイドリングストップ車が主流になりつつあるが、エンジン停止中の電子機器への電力供給や始動時などにバッテリーに大きな負荷がかかるのが課題だ。バッテリーがアイドリングストップの実現を左右するといっても言い過ぎではない。

「当社では、自動車メーカーのお客様と何度も議論を重ねながら、どのようなバッテリーが求められるのかを描き、形にしていきました。お客様の業務や運用状況を知った上で、最適な提案ができるのは当社の強みです」

 新たな取り組みも始めている。あらゆるモノがネットにつながるIoTを駆使した蓄電池の状態を検知する監視装置などのサービスだ。すでに電動フォークリフトに搭載する蓄電池にセンサーを取り付けた実証実験なども始めているという。

 吉田氏は、さらなる事業拡大にも自信を見せる。「自動車向け蓄電池は国内外のメーカーがしのぎを削っていますが、他の機械や設備では、数十年来同じようなバッテリーを使っているという業種業態がまだあります。AP社および東京センチュリーとの協業により販路も大きく拡大します。これまで接点のなかったお客様のご相談に乗り、まさにソリューションを提供できます。もちろん、CO2の削減など、お客様のSDGs(持続可能な開発目標)の実現も支援できます。ひいては、サステナブルな社会の創造にも貢献できると考えています。従業員にとっても、手応えのある仕事が数多くあるでしょう。大いに楽しみに感じています」

 その言葉どおり、エナジーウィズの存在感が業界内で増すことになりそうだ。同社の今後の取り組みに注目していきたいところだ。

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