近年、デジタルを活用し事業に大きな変革をもたらすDX(デジタルトランスフォーメーション)が注目されている。外部環境の変化に対応しながら企業を存続させるためには積極的に推進することが望ましいが、しかし、DXの前にまずは自社の書類管理やスケジュールなど基本部分を「デジタル化」することが大切だ。

 だが、その基本部分も一筋縄ではいかない。例えば、デジタルツールを導入しても必ずしも歓迎されるとは限らないのではないだろうか。特にデジタルとはこれまで無縁だった職人の世界では、そうかもしれない。

 福井県鯖江市にある国際的レンズメーカー、ホプニック研究所も、数年前からデジタル化に取り組む中小企業である。今回は、同社に中小企業向けグループウェア「サイボウズ Office」の機能に触れてもらい、デジタルツールの可能性を探った。

職人の会社だからこそ、デジタル化が負担になってしまう

「めがねのまち」鯖江から、世界が認めるレンズを送り出してきたのがホプニック研究所だ。1988年創業、正社員40名ほどの同社は、これまでに数々の国際特許を取得してきた。

「私たちが主に製造しているのは特殊レンズです。乱反射の光を抑えて視界をクリアにする『偏光レンズ』や、紫外線の量によってレンズの色が変化する『調光レンズ』などが代表で、大手メーカーとは一線を画す製品を手がけています」

株式会社ホプニック研究所 代表取締役 社長 阿久津 則彦さん

 こう話すのは、代表取締役社長を務める阿久津 則彦さん。例えば同社が手がける高屈折偏光レンズは、レンズの性能を示す屈折率において、開発当時、類を見ない1.67の“高屈折率”を達成。一時は世界シェア90%を誇った。

 これらの製品が評価され、2014年には、経済産業省が選ぶ「グローバルニッチトップ企業100選」にも名を連ねた。

「弊社はレンズの研究開発と、お客さまからの受託生産を行っています。強みにしているのは、小ロット生産、短納期への対応。小回りのきく組織を心がけてきました」

 そんな同社が“デジタルの導入”を考え始めたのは4年ほど前。それまで、多くの記録は手書きであり、記録にひもづく集計も手作業で行っていたという。そこで、まずは記録のデジタル化を始めた。同社の製造部部長 西岡 由枝さんが説明する。

「まずはコストをかけずにできるところからということで、手書きの書類をエクセルでデータ化しました。また、共有フォルダにデータを保存し、社員がアクセスできるようにしています」

(左から)同社 EC課 課長 高見 斉さん、開発室 松田 隼己さん、製造部 部長 西岡 由枝さん、代表取締役 社長 阿久津さん

 ただし、現在も記録入力の出発点は、あくまで手書き。それをエクセルに転記するため、作業時間の増加や転記ミスが課題だという。作業時は電話連絡なども行いにくいため、「情報を確認するため現場に行かなければならないことも」と西岡さん。

 同社は、本社のほかに工場が2つある。いずれも車で10分ほどの距離とはいえ、わずかな情報確認のために、離れた現場へ赴くのはもちろん手間だ。

 そのような課題もあって、業務の効率化を図るため、本格的なITシステム導入を検討している。しかし、ここで障壁となっているのが、デジタル化で仕事のやり方を変えることへの抵抗感だ。

「職人の世界ですし、何十年と続けてきた習慣やこだわりがあります。だからこそ、逆に『デジタルが負担になるのでは』という不安も。デジタルツールを導入したからといっても、情報の起点が人であることは変わりません。みんなが前向きに使ってくれないと、システムを導入しても結局意味がないと思ってしまいます」(西岡さん)

確実に便利と感じるところから、抵抗感を減らすスモールスタートを

 こういった背景を伺った上で、同社の方々に「サイボウズ Office」を見てもらった。

 このツールは、だれもが簡単に使えることにこだわって開発されており、デジタル化の一歩目に必要な機能はおおむね備わっている。社員のスケジュール共有やファイル管理、メッセージのやり取り、交通費や休暇の申請といったものをワンパッケージで提供。申し込んだ直後から、システム構築不要ですぐに使えるのも特徴だ。

 製品の説明を聞いた後、スケジュール機能について、西岡さんがこんな感想を口にした。

「現状はスケジュール管理もアナログです。弊社は複数の製造工程を兼務している社員もおり、各社員の予定をデジタルで簡単に把握できるのは便利だと思いますね」

「サイボウズ Office」 スケジュール
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 ただし、西岡さんが気にしていたのは、やはり「全員が前向きに使ってくれるか」という点。スケジュール共有ができるツールを入れたからといって、誰も予定を登録しなければ意味がない。

 これに対し、同席したサイボウズの担当者からは、こんな提案が出た。

「デジタルを導入する際のコツは、社員の方に確実に『これを使うと便利だ』と思っていただけるものから始めることです。便利になるイメージが湧くものなら、社員の方も前向きに試してくれるでしょう。そこからスモールスタートで始めて、うまくいったら次に進むのが1つのやり方です」

<スモールスタートの成功事例 入交電設事例記事を読む>

 それをふまえてサイボウズ担当者が提案したのが、スケジュール機能の使い方。通常、スケジュールは社員1人1人の予定を把握するものと考えがちだが、工場の機械や設備の稼働スケジュールの把握に使うこともできる。

 例えばホプニック研究所では、レンズ製造において、原料をオーブンで固める工程がある。このオーブンでは、状況を見ながら、さまざまな製品を同時に入れるなど「パズルのようにスケジュールを組み合わせていく」という。組み合わせの複雑さは、小ロット、短納期を強みにする同社ならではだ。

 とはいえ、これまでオーブンのスケジュールは、担当者が調整し、アナログで掲示されていた。今回、その部分を「サイボウズ Office」で共有することを提案。リアルタイムで予定がわかるので、社員も便利さを実感しやすい。前向きにデジタルを使う動機になる。西岡さんもその使い方には同意する。

「こういった使い方は良いかもしれません。遠隔で予定を見られますし、過去の稼働記録がデータで残るのも、担当者のノウハウを可視化する意味で良いと思います」

「サイボウズ Office」 施設予約
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情報共有で”小回りのきく生産”という強みを伸ばせるかもしれない

 取材では、製造工程に関わるアナログの課題として、工程の途中にある製品、いわゆる“仕掛り”製品の情報共有も挙げられた。

「レンズ製造にはいくつかの工程がありますが、その工程間での情報共有も手書きです。すると、A工程で変更が起きたとき、次のB工程には即座に伝わるのですが、その先のC工程以降に伝わるのが遅れることも。先の工程で早めに手を打たないといけないケースもあるので、情報の滞留を改善し、全工程がリアルタイムで情報共有できればと思っています」(西岡さん)

 「サイボウズ Office」のカスタムアプリ機能を使えば、自社の業務に合わせてアプリケーションを作れる。例えば受注から製造、発送の各工程の状況を一目で把握できるようにすることも可能だ。各企業の製造フローに合わせてカスタマイズできる。

「サイボウズ Office」 カスタムアプリ
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 小ロット生産、短納期を強みとする同社では、1枚のレンズを作る標準的な期間は4日ほどだという。スピードが重要だからこそ、製造工程の途中にある製品の情報をリアルタイムで共有することが重要だ。

 さらに、各製品の製造状況をデジタル化して共有することは、製造ラインでのトラブル未然防止につながるだけでなく、営業担当者への情報共有にもつながる。商品を待つお客さまへの迅速な対応が可能になり、顧客対応力も向上するだろう。

 このように情報共有は社内での業務を円滑にし、企業の強みを伸ばすことにつながるかもしれない。こうしたデジタル化のその先にある目的・目標を意識することも、取り組みを推進するときには重要だ。

<情報共有で業績アップの成功事例 ベストコンサル事例記事を読む>

 最後に、今回の取材を通して、西岡さんは自社のデジタル化の道筋についてこんな考えを口にする。

「職人の手作業が多い会社なので、すべてをデジタルに変えるのは難しいのが実情です。ただ、デジタル化によって確実に人の手間を軽くできる部分があるなら行った方が良いですし、全部ではなく、デジタルに任せる役割とそうでないものを切り分けて進めていきたいと思います」

 手作業も大切な製造業だからこそ、まずはスモールスタートで、間違いなく便利になるところからデジタル化していく。そんなとき、「サイボウズ Office」のような、誰にでもやさしく、また、業務に合わせてカスタマイズできるツールが助けになるかもしれない。

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