ソニーネットワークコミュニケーションズが映像とAIを組み合わせて開発したスイミングスクール向けのスポーツICTソリューション『スマートスイミングレッスン』。子どもたちは自宅で動画を見ながら泳ぎの予習・復習ができ、保護者は進級テストなどの様子を確認でき、コーチは手間なく教えやすいという「win-win-win」のシステムだ。導入済みのルネサンスでは、早くも子どもたちの上達意欲がぐんぐん増しているという驚きのスイミングレッスン。その内容とは?

自分の泳ぐ姿を動画で見るとコーチの言葉が理解できる

「自分が泳いでいる様子を動画で見ると、できているところとできていないところがよく分かります」

 そう話すのは、スポーツクラブ大手、ルネサンスが運営するスイミングスクールに通う小学校3年生の女の子だ。

 ルネサンスは、動画とAIを活用した『スマートスイミングレッスン』を全国92施設にあるプールのうち77施設のプールで導入(2022年3月時点)し、生後6カ月からの子どもを対象にしたジュニアスイミングのコースで提供している。プールの壁面や水中に設置された複数のカメラがレッスン中の生徒の泳ぎを動画で撮影し、2か月に1回の進級テスト時はAIが自動編集した動画を自宅等で見る事ができる。

 子どもたちは前日までに配信された「めあて」や「お手本」動画で泳ぎを予習してレッスンに臨み、レッスン中は、泳いだ直後に自分の泳いだ映像を確認しながら練習に取り組める。


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 女の子もこのレッスンを受けている。母親は「以前は、コーチからのアドバイスをただ聞いているだけだったのが、動画を見ることで自分の泳ぎの改善点がより分かりやすくなったのだと思います。上手なお手本の動画を見て、『頑張ったらこうなれる』とも思えるようになったようです」と言う。その効果は覿面で、スマートスイミングレッスン導入後の進級テストはすべて合格。「おそらく、形への意識が働くようになったからだと思います」と母親が言えば、女の子は「水泳が大好きです」と嬉しそうに微笑む。

 ルネサンスのジュニアスイミングのコンセプトは「エンジョイスイミング」。速く泳いだり上手に泳いだりする以前に、まずは楽しもうというものだ。実績豊かなコーチ陣はそのコンセプト通りに、泳ぐ楽しさを子どもたちに伝えてきた。しかし、時にはもどかしさを感じることもあったという。ルネサンスの営業企画部スクール事業チーム課長代理の大矢 秀利氏はこう語る。

「なかなか上達しないと、プールから足が遠のいてしまうお子さんもいらっしゃいました。それでは、エンジョイスイミングは適いません。なんとか助けたいと思っても、プールに来ていただかないことには、コーチに出来ることもありません。そこで、お子さんがプールに来たくなるように、家で保護者の方がお子さんをサポートできる体制をつくれたらいいなと常々考えていました」

プールサイドでもフォームを確認、進級テストの様子は個別配信

 スイミングは子どもとその保護者にとって特別な体験であることも多い。大矢氏と同じ部署の課長・勝部 久代氏が指摘する。

「特に低年齢のお子さんの場合は、スイミングが初めての習い事というケースが非常に多いです。そこでの成長の記録を映像で残すことは、お子さんにとっても保護者の方にとっても大切な思い出になります」

ルネサンス営業企画部 スクール事業チーム 課長の勝部 久代氏と課長代理の大矢 秀利氏

 保護者はこれまでも、プールサイドのギャラリーと呼ばれるスペースからレッスンの様子を見ることはできた。しかし、プールからは距離があることや、そもそも共働きなどでその場へ来られない保護者も多かった。そして、コロナ禍はその課題をより大きくしていた。

 そこでスマートスイミングレッスンを導入し、子どものレッスンの様子を動画で撮影し、未就学児向けのクラスに関しては毎月保護者にも共有できるようにした。2カ月に1度の進級テストについては、水中カメラの映像も交えた動画を個別配信する。
 しかし、懸念事項もあった。まず、生徒の水着姿を撮影することだ。

「保護者の方が不安になって当然です。そこで、『お子さんが頑張っている姿を見ていただくためのものです』と説明し、実際にどのように映るのか、お子さん以外の人物には自動でぼかしを入れる機能があるなど、配信するのはどのような映像になるのかをご確認いただき『これであれば』と了解を得ました」(大矢氏)

 配信するレッスン動画は主に壁面からのカメラで撮影して距離を確保し、水中カメラの映像も含めた進級テスト時の映像は、子ども一人ひとりに用意される『マイカルテ』を通じて、本人とその家族だけが確認できるようにした。

コーチも驚いた動画の威力、“あおり足”がたった1日で改善

 コーチ陣に対しては、映像の利用は加わるものの、それまでの指導方法を変える必要はないと説明した。タブレットの操作などは必要になるが、配信用の動画はAIが自動で編集してくれるため、導入による負担は最小限に抑えられる。

 導入効果はすぐに表れた。子どもが突き当たる壁のひとつに「あおり足」がある。平泳ぎの際に足の裏ではなく甲で水をキックしてしまう状態のこと。成長の過程にある子どもにはよく見られるという。これがなかなか修正できず進級ができないと、スクールに通わなくなってしまう子どももいるのだという。

 ところがスマートスイミングレッスン開始初日、それまで約2カ月間もあおり足に悩んでいた子どもが、理想的な足の使い方をマスターしたケースもあったという。子どもたちはデジタルネイティブ世代で、動画を見て解釈する力を備えている。映像が、言葉でのアドバイスの真意をつかませたのだ。これはアクティブラーニング(能動的学習)効果といってもいいだろう。

「驚きました。期待はしていたものの、まさかここまですぐに効果が得られるとは思っていなかったからです。コーチは驚く以上に喜んでいましたね」(勝部氏)

 進級テストで不合格になってしまった場合でも、自宅で泳ぎを確認することで「どこを修正すればいいか」がわかり、次につなげることができる。

「映像ではできてないところばかりが目につき『ここがダメ』『ここもダメ』と、なってしまわないかという心配もありました。しかし、コーチは『ここはできているね』『ここをこうすればもっといい』と前向きな指導につなげています」(大矢氏)

 こうしたポジティブな変化は保護者の間にも広がっている。

「以前は、“進級テスト不合格”という結果だけを前に、どうアドバイスしていいかわからないという悩みを抱えていた保護者の方もいらっしゃいました。しかし今は、映像から良いところをみつけてお子さんにアドバイスしてくださる方が増えています。それがお子さんのやる気にもつながっているのでしょう。そのせいか、コロナという状況でありながら、出席率は以前より良くなっていると感じています」(大矢氏)

 子ども本人をやる気にさせる映像は、祖父母にとっても孫の成長をその目で確かめられる貴重なものでもある。2021年の年末年始には、2年振りに帰省し、お子さんが泳ぐ映像でその成長ぶりを実家の祖父母に見てもらえた家族もいたという。

「こうした状況でなくても、プールまで来ていただくのが難しい方にお子さんの成長ぶりを見ていただけるのは、スマートスイミングレッスンならではのメリットだと感じる出来事でした」(勝部氏)

 こうした評判は保護者の間で静かに広がっているようで、ルネサンス本部には最近、「スマートスイミングレッスンを受けられるプールはどこにありますか?」といった問い合わせが寄せられるほどの人気メニューとなっている。

「できた」を実感することで子どもは自信を育んでいく

 成長を実感できるスマートスイミングレッスンは、ルネサンスの協力を得てソニーネットワークコミュニケーションズが開発したものだ。すでに成人を中心としたテニススクール向けに『スマートテニスレッスン』を提供済みだった同社は、2019年に子どもの習い事で一番人気のスイミングへの展開に着手した。プールという高温多湿な環境でのカメラの安定稼働、子どもの水着姿への十分な配慮などを前提に開発を進めるうち、機能面以外のことも気になり始めたという。

「開発当初、泣きながら進級テストに挑戦している男の子の姿を見ました」と振り返るのは、ソニーネットワークコミュニケーションズの法人サービス事業部スポーツエンタテイメント部SE事業推進課でプロデューサーを務める中村美奈子氏だ。男の子の結果は残念ながら不合格。実は前回も不合格だったのだという。

ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社 法人サービス事業部 スポーツエンターテインメント部 SE事業推進課 プロデューサー 中村 美奈子氏

「そのときに、スマートスイミングレッスンは『できなかった』を伝えるツールにしてはならないと思いました。今回も不合格であったとしても、前回と比べたら成長していることがしっかりとわかる、伝えられるものにしたいと思ったのです」

 スマートスイミングレッスンのキーワード「できたに気づく」「できたがわかる」は、そうした思いから生まれた。コーチから子どもたちにフィードバックをする際には“褒めポイント”を挙げてもらうようにするなど、子どもを前向きにする仕掛けも盛り込んだ。

「一人でも多くのお子さんに、水泳を通じて『できたに気づく』『できたがわかる』を体験していただき、他の分野でもそうした体験を重ねていただけると嬉しいです」と中村氏は思いを込める。

 冒頭でインタビューに応じた小学校3年生の女の子は「もっと速く、きれいに泳げるようになりたいです」と声を弾ませる。
 その女の子から「レッスンを見に来て」とリクエストされることが増えたと母親はいう。

「速く泳ぎたい、うまくなりたいという意欲が生まれて、努力している姿を見て欲しいと思うようになったのでしょう。習い事で大切なのは、やらされているのではなく、自分から意欲的に、楽しく取り組むことだと思っているので、この変化は嬉しいです。水中カメラに映る、泳いでいるときの子どもの表情からも頑張っていることがよくわかりますし、成長していく過程が見られるこのサービスは、とてもありがたいです」

 泳ぐことを通して、子どものなかに「うまくなれる」という自信を育むことができるスマートスイミングレッスン。今後は子ども以外にもサービスの対象を広げる予定だというが、最新の動画・AI技術を使ってスポーツ上達の成果をより実感できる、まさに“目から鱗”のツールといえる。 

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