総合大学として国内でも有数の規模を誇る日本大学。中でも理工学部は14の学科を有し、これまで東京・駿河台と千葉・船橋の2つのキャンパスから約24万人の理工学系人材を輩出してきた。創設から100年を超える歴史を持つ同学部では、近年急速に進む社会のデジタルトランスフォーメーションを見据え、AI(人工知能)やデータサイエンス教育にいち早く取り組んできた。

「実践的なデータサイエンス」を軸に実験重視のカリキュラムが充実

 もともと日本は、世界においても統計学(実験計画法)や品質工学を通じて、さまざまな事象の因果関係を見出す理工学分野が得意とされてきた。データサイエンスの基本は社会で発生するさまざまな社会現象をデータ化することから始まる。IoTと連動して得られるビッグデータの解析では、ノイズに埋もれたデータ信号からその現象に与える因子や特徴信号の抽出を行うための技術(クレンジング処理)が、特に重要となる。そのためには、実験を通した社会現象のデータ計測や信号処理の実習が不可欠であり、研究施設設備も重要な要素だ。

 日本大学理工学部では、今ほどデータサイエンスが注目されていない時代から、AI(人工知能)やロボット開発などに注力。学部の創設時から「実践的なデータサイエンス」を軸に、講義に加え、実証実験やフィールドワークなどを重視したカリキュラムが充実している。

 日本大学理工学部長、工学博士の青木義男氏は、同学の特色について次のように話す。

日本大学理工学部長 青木 義男 氏

「小中高校でもプログラミング教育が導入され、文理問わず数理やデータサイエンス、AIに精通した人材について大学を含む高等教育機関での育成が文部科学省から求められています。近い将来、これらは一般知識として認知されていくでしょう。こうした時代の潮流の中、日本大学理工学部ではAIやデータサイエンスの社会活用を目標に、リテラシーレベルの一歩先を行く教育に取り組んでいます。実験やフィールドワークを最重要とし、船橋キャンパスでは極めて大規模な実験設備を兼ね備え、駿河台キャンパスにおいても数々の実験設備が稼働しています。それらを利用しながら、実験実習科目を中心に現在も可能な限り対面授業を行っています」

 一例として、精密機械工学科では、教育や医療、各種訓練で活用できるシリアスゲーム(社会のあらゆる問題解決のために開発されたゲーム)の開発や、ゲームエンジン「Unity」の研究が盛んだ。AIとロボティクスに脳と神経科学を合わせたニューロロボットの開発なども注目を集めている。いずれも実社会で活用できる研究内容ばかりだ。

『イノベーションハブ』としての役割を担う日本大学理工学部

 一方、青木学部長は「総合大学だからこそ、他学部と連携してできるデータサイエンスもある」と言う。

「例えば、先進医療分野では、AIやRPA(自動化)の技術が必要とされています。特に近年進化している低侵襲手術(切る範囲を可能な限り小さくし、患者の体に負担をかけないように行う手術法)などでは、AIやRPAの力が不可欠。日本大学では総合大学の強みを生かし、理工学部精密機械工学科と医学部が連携して未来医療へ挑戦しています。

現在は、大腸がんの手術で活用できる大腸内自走ロボットやAIによる遠隔医療システム、多自由度腹腔鏡手術ツール、手術助手ロボットなどの研究を行っています。現場の臨床医と直接やりとりしながら、医工連携といった形でより実践的な開発を進められる点が、日本大学ならではの大きなメリットです」

※日本大学芸術学部デザイン学科片桐先生提供

 実際、卒業生の中には、日本大学医学部と連携して紫外線殺菌を行うロボットを開発し、会社を立ち上げたOBもいる。この「紫外線ロボットUVBuster」は、新型コロナウイルスを不活化させるため、現在、多くの医療機関や公共施設などで導入が検討されている。

 青木学部長は、「社会課題をテクノロジーの力でどう解決していくのかを考え、開発するのが理工学のミッション。科学技術の力は、医療分野だけではなく、芸術、スポーツ、経済など、あらゆる分野で必要とされています。他学部から上がってきた課題を理工学部がハブとなって、解決につながる研究や開発を進めていく。本学の理工学部は、いわば『イノベーションハブ』としての役割も大きい」と話す。

世界の中でも先端を行く、長期的視野による宇宙開発

 実社会での応用を前提としたデータサイエンス教育に取り組む日本大学理工学部では、長期的な視野を持って、SDGsやエネルギー、地球環境に関わる分野での研究開発も進めている。

 青木学部長が「世界の中でも先端を行っている」と自負するのは、宇宙開発分野だ。実際に、理工学部生が学生時に開発した超小型衛星4基が打ち上げられ、次に打上げ予定の衛星は地球環境のモニタリングを担う予定である。この衛星は、太陽フレア(太陽の表面で起きる大爆発)を観測することで、将来的には自然災害の予測に役立つ可能性もあるという。電離層モニタリング衛星による早期地震警戒システムの開発など、最先端の研究に取り組んでいる。

 青木学部長は「私たちは、5年、10年、30年後といった地球の未来を見据えた研究も行っています。AIやデータサイエンスのニーズは、実は社会のあらゆるところに潜んでいる。これらのテクノロジーを実社会で活用するには、実験を通じた自身での体験が最も重要になります。総合大学の強みを生かし、本学部からAI、データサイエンスに優れた人材を送り出していきます」と結んだ。


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