新型コロナ感染症対策によるリモートワークの広がりは、働き方を変えるだけでなく、社会の形を変えつつある。世界観、価値観の急速な変化はビジネスにも大きな影響を与える。今、企業が取り組んでいるデジタル・トランスフォーメーション(以下DX)の目指す姿もこれまでとは当然違ってくる。こうした中でニュータニックス・ジャパン(以下ニュータニックス)とNTTコミュニケーションズ(以下NTTコム)は日本企業のDXの推進を支援するサービスの開発に協業で取り組んでいる。

コロナ禍で加速したデジタル投資
本質的DXのきっかけに

 新型コロナウィルスの蔓延とともに、企業が急ピッチで推し進めているDX。しかし、本来あるべきその姿と実態はかけ離れ、アナログデータのデジタル化や業務・製造プロセスのデジタル化等、いわゆる「業務改善」に留まっている企業は少なくない。NTTコムのエバンジェリストの林氏はこの状況を受け「DXは本来、新たなビジネスに繋げるための手段として捉えられるべきです」と指摘する。

 「コロナの影響もあり、最近ではSDGs、ESGを含む中長期的なビジョンを立てていく企業が増えてきています。デジタルという技術が企業のビジョンと融合し、実現していくことで最終的に企業価値を高めることになれば良いと考えています」

 実際に新たなビジネス戦略を持って積極的にDXを推進する企業も増えている。コロナ禍にあってデジタル投資が加速しているのは、その証しである。NTTコム自身も2019年2月に副社長がChief Digital Officer(CDO)を兼任し、社内全組織にDigital Officer(DO)を設置し、全社DX推進体制を立ち上げた。組織の壁を壊し、システムを刷新し、データ活用を推進するというのが大きな柱だ。

 「トップマネジメントが変革を進めると同時に、現場からの問題意識を吸い上げ、トップ層と現場を有機的に融合させていきました。ようやく成果が出始めてきたところです」と林氏は話す。

サスティナブルな未来の実現に向けた
データ利活用プラットフォーム

 2020年10月にNTTコムは、新たな事業ビジョン「Re-connect X」を掲げた。これまで通信によって提供してきた価値を見直し、安全かつ柔軟につなぎ直すことで、サスティナブルな未来の実現に貢献するというものだ。


拡大画像表示

 この「Re-connect X」の3つの取り組みの一つが、データと価値をつなぐ「Smart Data Platform(以下、SDPF)」である。企業に点在するあらゆるデータを一つのプラットフォーム上でシームレスに融合し、データの収集から蓄積、分析までデータの利活用を一元的に推進できるプラットフォームとして位置付けている。


拡大画像表示

 「これまで当社内でデータセンターやクラウド基盤、ネットワークを統合してDXに取り組んできました。その経験やノウハウをベースに、今度は大企業から中堅中小企業、DXの進んでいる企業、これからDXに着手する企業などの顧客に対し、それぞれのレイヤーに対応したワンストップサービスを提供していきます」(林氏)。

 そしてこの夏、SDPFに新たなサービスが提供される。「IaaS Powered by VMware(以下、IPV)」というVMwareに特化したサービスで、ニュータニックスのHyper-Converged Infrastructure(以下、HCI)をサービス基盤として採用している。NTTコム鈴木氏は「効率的な運用、省スペース、コストパフォーマンスを踏まえ、ニュータニックスのHCIを採用しました。ライフサイクル管理やバージョンアップ時の検証のしやすさも決め手の一つになりました」と語る。


拡大画像表示

 コンピュータとストレージが統合されたHCIは運用性が良くなり、ラックの数が減らせるというメリットがある。「中でもニュータニックスはハードウェア製品の選択肢も広く、メンテナンスがしやすいため、お客様に最新の環境をリーズナブルに提供しやすいというメリットがあります」と鈴木氏は話す。

通信・メディア業界に注力するニュータニックス

 ニュータニックスでは現在、通信・メディア業界へのアプローチを強化しているという。ニュータニックスの小林氏は「通信・メディア業界ではDXに向けたクラウドと5Gの活用が加速しています。それを受けて行政がDXによる次世代型サービスを目指し、教育や医療では5Gの活用に取り組んでいます。リモートワークの普及で働き方改革も進む中、すべての業種でもネットワークの重要性が高まっています。」と現状を語る。

 新しいサービスのオペレーションコストの増大と厳しい競争環境の中での収益性の確保、さらには従来からのビジネスモデルの改善・改良が課題としてある通信・メディア業界にとって、喫緊の課題は新しいビジネスモデルを生み出すパートナーの開拓とレガシーシステムからの脱却である。

 こうした中、ニュータニックスではサービスプロバイダー、メディアに向けたクラウド基盤構築を支援しており、その一つがNTTコムの顧客向けDX推進の支援である。NTTグループとはニュータニックスの日本法人が設立されて以来関係性を深めてきた。NTTコムとは同社の社内システムの導入や、顧客に提供するプライベートクラウドのサービス基盤としてHCIが採用され、直近ではNTTコムのIPVの基盤としても導入された。


拡大画像表示

 2020年8月には、NTTコムのオープンイノベーションの検証環境である「Nextcenter Lab」でのDXの推進でも協業を強化し、プライベート及びハイブリッドクラウド環境でのニュータニックス製品の運用効果を検証することができるようになった。先述のIPVの基盤としてのHCIの採用はこうした相互の信頼性の上に成り立つものだ。

目指すはクラウドの複雑性を意識しない世界

 「ITインフラを意識しなくても利用できる」という理想のもとで、HCIを提唱してきたニュータニックスだが、クラウドの時代を迎えて「クラウドの複雑性を意識する必要のないものに」とそのコンセプトを進化させている。

 目指しているのは、全てのアプリ、データ、クラウドサービスを一元管理するプラットフォームになることだ。ニュータニックス清水氏は「今私たちは、自社の製品(HCI)を“ハイパーコンバージドインフラストラクチャー”から“ハイブリッドクラウドインフラストラクチャー”に再定義し、サービスの幅を広げようとしています」と語る。

 「今後の協業ではNTTコムのクラウドサービスの幅も広げていきたいと考えています」(清水氏)

 具体的には、IaaSの世界から一歩踏み出して、クラウドネイティブなアプリケーションの基盤となるKubernetesなどを提供する「クラウドネイティブ」のソリューション、さまざまなデータベースを簡単にプロビジョニングしたり、バックアップ・リストアやパッチ適用・アップグレードなど、クラウドならではの柔軟なデータベースのあり方を実現する「DBaaS」のソリューション。

 ブロックストレージ、ファイルストレージ、オブジェクトストレージなどニーズに沿った多様なストレージを、ストレージ・アズ・ア・サービスとして、必要な時に必要な形のストレージ領域を提供する「ストレージ」のソリューション、そしてNTTコムが各所に持っているデータセンターを利用してDRやBCMを提供する「DRaaS」のソリューション。


拡大画像表示

 これら4つの分野でのソリューションを協業して提供することで日本企業のDX推進を支援することを目指している。小林氏は「NTTコムはネットワークを中心とし、データセンター、マネージドサービスが連携した高品質・高信頼なクラウドサービスをワンストップで提供して、日本のみならず海外含めた法人向けの事業に大きな強みを持っています。また長年お客様とは強固な信頼関係で結ばれています。そのお客様のDX推進を一緒に進められることは非常に嬉しい限りです」と語る。

 一方、林氏は「長い付き合いの中でニュータニックスが急成長するのを見てきました。クラウドのサービスモデルを一緒に開発することで、技術力の高さとビジネスモデルの上手さを取り入れてお客様にメリットを提供していきます」と話す。補完関係にある両社がそれぞれの強みを生かして開発されるソリューションだけに、今後が大いに期待できそうだ。

●Nutanix、NTTコミュニケーションズとオープンイノベーションを通じたDXを推進
https://www.nutanix.com/jp/press-releases/2020/nutanix-open-innovation-and-dx-with-ntt-communications
●NTTコミュニケーションズ導入事例:ソリューション開発を進める ビジネスパートナーとして Nutanix を活用
https://www.nutanix.com/jp/company/local-customers/ntt-communications
●SDPF クラウド/サーバーの特長
https://www.ntt.com/business/services/data-utilization/dxplatform/sdpf/cloud.html

<PR>