シミュレーションの機能をすべてクラウドで提供

 ドイツに本拠を置くdSPACEが創立されたのは1988年。大学でDSPとシミュレーションを研究していた4人の研究者が独立する形でスタートした。以来30余年、シミュレーションと検証の領域で常に最先端を走ってきた。米国や日本にも拠点を展開し、世界中で1800名以上の従業員が開発とサポートに従事する。

 同社が提供するツールは自動車を初め、航空宇宙産業や産業オートメーション分野にも活用されている。特に自動車分野では世界中の自動車メーカーや自動車部品メーカーが同社のツールによってシミュレーションや検証を行なっている。

 なぜそこまで各社から支持されるのか。宇野氏は「常に最先端の技術を追求し続けてきたことと、ユーザーに密着して成功するまでサポートしてきたこと、そしてトータルにソリューションを提供してきたことが、当社の強みです。自動車の“走る”、“止まる”、“曲がる”という基本機能だけでなく、安全や環境対応などすべての領域で、設計からシミュレーション、検証までサポートしています」と語る。

 これまで様々な領域でシミュレーションツールを提供してきた同社の強みを統合する新しいソリューションが「SIMPHERA」だ。クラウドで提供されるので、インストール不要で利用でき、自動テストによって効率的なシミュレーションが行える。ヨーロッパの自動車安全テストである「EuroNCAP」のテストが自動実行できて、車線維持などレベル3以上のシステムテストも行える。

 「それぞれの機能でのテストデータを別の機能に継承して、一気通貫でテストを実行します。基本のテストシナリオがあれば、車体などのパラメータを変更しながらテストシナリオを別のプロジェクトでも再利用できるので、検証にかかる時間を大幅に短縮できます」と宇野氏は統合されたテスト環境のメリットを強調する。今までテスト工程によって使い分けられていた様々なツールが統合されているので、規格化されたテストはもちろんユーザー固有のテストもスピーディに実行できる。

実車でのデータを活用してリアルとバーチャルを統合

 「このSIMPHERAデータドリブン開発(DDD)を合わせて活用することで、実車でのテストとシミュレーションを連携させることができ、さらに大きな効果が期待できます」と宇野氏はデータドリブン開発の重要性を語る。

 データドリブン開発では、実走行のテストによって取得したデータを元に開発プロセスに沿ったテスト環境をシミュレーションで構築・拡張していく。「実車で得たデータを加工して3Dアニメーションの仮想交通環境を作り、道路状況や交通シナリオ、周辺車両や歩行者の挙動など、パラメータを変えながらテストすることで、未知の危険な事象における安全性を評価できます」と宇野氏は説明する。

 そのメリットは、実環境ではできない危険なテストを、あらゆる場面を想定して条件を変えながら繰り返し行えることだ。数千・数万のシミュレーションを自動実行することで、未知の部分までテストを行い、安全性を高める。その上で検証用のプロトタイプを作り、さらに実車でテストすることで効率よく検証を進めることができる。

 「当社はソフトウェア上のシミュレーションツールだけでなく、ハードウェアを活用したシミュレーションツールも提供しています。データドリブン開発にハードウェア検証とSIMPHERAを組み合わせることで、自社で取得したデータを効率よく活用し、バーチャルとリアルの世界を統合することができるのです」(宇野氏)。

 自動運転の実現には、人間より優れた機能が求められる。リアルでのテストデータを加工して取り込み、ソフトウェア上で検証してハードウェアプロトタイプを作ることで、高度で安全な機能をスピーディに開発できる。

 同様のアプローチはロボットや航空宇宙、建築、医療の分野にも応用することができる。リアルなデータを元にしたシミュレーションと検証を効果的に開発プロセスに組み込むことは、“効率よく安全な製品を作る”という業界を越えた共通の課題に対する具体的な解決策といえるのではないだろうか。

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