「au」や「UQ」といったブランドで携帯電話事業を展開するKDDIでは、多種多様なデータを活用し顧客理解を深め、体験価値を最大化する「データドリブンマーケティング」に注力している。そのパートナーになっているのが、KDDIのグループ会社で300人ものデータサイエンティストが活躍するARISE analyticsである。両社はこれまでどのような活動に取り組み、どのような成果を上げてきたのか。今後の展開も含めて話を聞いた。

データ分析企業であるARISE analyticsと共に
顧客体験価値の最大化を

―なぜデータドリブンマーケティングに取り組むようになったのでしょうか。

白井 大介氏(以下、白井) auではカスタマーファーストを標榜しています。データドリブンマーケティングはそれを実現する手段なのです。その背景にあるのはデジタルとフィジカルの融合です。

KDDI株式会社 パーソナル企画統括本部 コンシューママーケティング部 デジタル企画グループリーダー 白井 大介 氏

 スマホでニュースを読むのが当たり前になったように、生活はデジタル中心にシフトしつつあります。例えばニュースのようにデジタルで完結するサービスから志向性を把握するだけではなく、au PAYでは決済データからどの店で何を購入したかなど顧客のフィジカルな行動が把握できます。データによってデジタル・フィジカル両面で顧客理解を深めることができるのです。

 消費者がデジタルに入るきっかけは多くの場合スマホです。その接点を提供している当社だからこそ、データを活用してもっとワクワクする体験価値をお客様に提供できると考えています。

山口 求氏(以下、山口) 通信というインフラを使ってどんな楽しい世界を届けられるのか。常にそうした視点で取り組んでいます。データから個々のお客様の関心事を知り、それに合ったエンターテイメントをお届けし、お得に使っていただけるプランをご用意することを日々目指しています。

―その活動のパートナーがARISE analyticsということですね。

白井 ARISE analyticsは当社とアクセンチュアが出資して設立したグループ企業ではありますが、300名を超えるデータサイエンティストが所属していて、データ分析企業としては日本で最大規模であり、高い技術力を有しています。そして当社には日本有数の質と量を誇るデータがあります。この2つを掛け合わせれば、これまで捉えきれなかったお客様の課題やニーズを捉えて、新たな価値を持つサービスを生み出すことができると考えています。

株式会社ARISE analytics Customer Analytics Division Director/ アクセンチュア株式会社 ビジネスコンサルティング本部 AIグループマネージャー 瀧内 孝輝 氏

瀧内 孝輝氏(以下、瀧内) KDDI様と当社とは常にワンチームとして活動しています。分析業務を発注する側と受託する側という関係ではありません。まず課題があって、それをどう解決するかを一緒に議論し、お互いのケイパビリティに応じて役割を分担しています。



白井 お客様にとってより身近な会社になるために、課題を洗い出してはプロジェクト化し、ARISE analyticsと一緒に具体化するということを繰り返してきました。

「お客様のエンゲージメント」を可視化し
データに基づいて施策を改善させた

―これまでの取り組みについて教えてください。

白井 ARISE analyticsと最初に取り組んだのがお客様のエンゲージメントを高めるというプロジェクトでした。「エンゲージメントを高める」という言葉は様々な文脈で使われますが、簡単に言うと満足度が高いお客様を増やすことを指します。

 エンゲージメントを可視化するために作り出したのが「エンゲージメントスコア」です。お客様の満足度が高ければ当社のサービスを使い続けてくれます。そうしたお客様を増やす施策を打つためにも、まずエンゲージメントを可視化することが必要だったのです。