2020年度から小学校でプログラミング教育が必修になるのをご存知だろうか? これを皮切りに、この先、小中高生に対するICT教育が大きく変わろうとしている。背景にあるのは、諸外国に比して後れを取る日本のICT教育の現状と政府の危機感だ。パソコンメーカー、ハードウェア/ソフトウェアベンダーなど、業界も思いは同じであり、2020年を待たず矢継ぎ早に施策を打つ。今、何が起きつつあるのか。
諸外国に比べわずか2割程度
著しく劣る日本のパソコン所有率
子どものICT教育にまつわる衝撃的なデータがあるので紹介したい。
諸外国(米国、英国、ドイツ、フランス、スウェーデンなど)における中学生(13-15歳)のパソコン所有率が6~7割であるのに対し、日本は22.1%と極端に低い。(出典:「平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」内閣府)
というものだ。スマートフォンやタブレットの普及により、最近はパソコンが使えないまま社会に出る学生も増えており一部で問題視されているが、それを裏付けた格好だ。
もちろん国はこうした状況に手をこまねいているわけではない。新学習指導要領では2020年度から小学校でプログラミング教育が必修となり、中学校では2021年度から、高校では2022年度からパソコンを活用した情報教育強化が決定。さらに2024年度の大学入試からは、コンピューターを利用した試験方式(CBT方式)の導入が検討されている。
ただ、これで安心というわけにもいかない。子を持つ親の反応はまだ全体に鈍く、政府との温度差は大きい。
小中高生の親に尋ねた調査(右図)では、2020年度からの新学習指導要領により、小学校でプログラミング教育が必修化することを知らない親は43.9%、新学習指導要領により中学校では2021年度から、高校では2022年度から、パソコンを活用した情報教育がさらに強化されることを知らない親は59.5%に上る(後述のWDLCによる調査)。また、たとえパソコンスキルが必要という意識はあったとしても、「家庭内でどのように取り組めばよいかわからない」という親も多く、じりじりと、もどかしい時間が過ぎている。
では、ICT教育が行き届かないとどうなるのか? もちろん社会に出た時、Word で資料を作ったり、Excel でデータを分析したり、PowerPoint でプレゼン資料を作ったりする局面で困るという個人的な不都合もある。しかしむしろ問題なのは、さらにグローバル化し、激しく変化していくデータドリブンなビジネス環境において、企業の原動力となる個々のビジネスパーソンが、まともにパソコンすら、主要ソフトウェアすら扱えないというのでは、とても太刀打ちできないということだ。
もちろん、いざとなれば社会に出てからでも「それなり」のスキルを身に付けることはできるだろう。しかし、諸外国がすでに小学校からスキルを磨き、成長につれ高度なプログラミングやデータアナリティクスへ、そして PowerPoint を使ったプレゼンへと能力を開花させていくとしたら、「それなり」で勝負になるのだろうか?
冒頭に紹介したように、諸外国がすでに先行していることがはっきりしている今、すぐにでも、一人でも多くの子どもたちに、パソコン、そしてそこで使う基本的なソフトウェアやプログラミングに触れ、慣れ親しんでおく必要がある。
スタートはこの夏! 2020年に向け
業界横断で取り組む施策の数々
こうした状況に対する危機感は関連する企業にもある。業界横断でさまざまな取り組みを行うWindows Digital Lifestyle Consortium(以下、WDLC。会長:日本マイクロソフト株式会社 執行役員 梅田成二氏)に着目してみたい。
WDLCはパソコンメーカー、ハードウエア・ソフトウエアのベンダー、コンテンツパートナー、携帯事業者、量販店など110社超の企業によって構成される団体だ。
ウインドウズパソコンの使い方提案を通してユーザーの生活や行動を充実させ、より生産的なものにすることを目指しており、これまでも大手メディアとの連携によってデジタル教育の重要性を啓発する取り組みを実施するなど、子供たちができるだけ早期にパソコンに触れることで、さまざまなメリットが生まれることを伝えている。
WDLCでは現在、小中高生を対象に「タイピング」「Office」「プログラミング」の各スキル習熟を目指した下記のような施策を展開する。
①PowerPoint を使ったプレゼンコンテストの実施(小学生対象)、②対象パソコン購入者限定で、パソコンスクール(アビバキッズ、チアリ―)レッスンプレゼント(タイピング、Office、プログラミングの受講資格を抽選でプレゼント)、というものだ。
②の対象となっているパソコンは、いずれも同コンソーシアムが「2020年教育対応パソコン」と定めるもの。2020年の小学校プログラミング教育必修化を皮切りに始まる教育のICT化は、国が「最低限、優先的に必要な機能」とする、「キーボード付き」「ワープロ、表計算、プレゼンテーションソフトの機能を有する」パソコンを使う。それを同コンソーシアムでは「2020年教育対応パソコン」と名付け、その普及とスキル向上を同時に目指しており、取り組みは非常に理にかなったものと言える。
上記①の具体策として進むのが、「あなたの地元の魅力を広げる!アイデアプレゼンコンテスト」だ。これはWDLCと「朝日小学生新聞」が共同で主催するもので、地元の魅力を広げるアイデアを、PowerPoint を使って5枚以内(1作品5㎆以内)の作品にまとめて応募するというもの。応募締切は2018年9月7日金曜日(必着)だ(参考:http://aka.ms/idea-presen)。応募者の中から最終審査会で選ばれた5作品の制作者は、9月29日に日本マイクロソフト株式会社の本社(東京都品川区)で行われる決勝大会へと進み、そこで専門家の指導によって応募作品をブラッシュアップ、出来上がった作品でプレゼンテーションを行い、各賞が決定する。
プログラミングスキルの向上についても興味深い発表があった。文部科学省、総務省、経済産業省が主体の「未来の学びコンソーシアム」と歩調を合わせ、プログラミングの基礎を学べるツール「micro:bit」を使った「プログラミング教育」に活用できる授業案を、教育関係者間で共有しようというもの。今後、子供たちがプログラミングに興味・関心を抱く、かっこうの機会を提供することになりそうだ。
こうしてWDLCは、子どもたちの未来をつくるため矢継ぎ早に施策を打ち出し、2020年に先立って、いち早く日本のこれからのICT教育をサポートしようとしている。
<PR>