今、東京の変化が加速している。東京の都市としてのポテンシャルとは何か。東京の長寿企業にみる不動産賃貸業のメリットとはーー。竹中平蔵・東洋大学教授/慶應義塾大学名誉教授と「区分所有オフィス®」という新たな不動産戦略を提案するボルテックスの宮沢文彦社長が語り合った。

東京の実力は世界第3位
群を抜く都心と空港のアクセス

株式会社ボルテックス 代表取締役社長 宮沢 文彦氏

宮沢 東京は今、大きな変革期を迎えています。竹中先生は都市としての東京の持つ成長力をどのようにご覧になられているのでしょうか。

竹中 私は民間に戻ってから森記念財団都市戦略研究所で「世界の都市総合力ランキング」を作っています。これは70ほどの指標を使って経済、文化、居住環境などあらゆる面から世界の主要都市の実力を比較した日本発のランキングです。始めて10年になりますが、当初は東京は万年4位。ニューヨーク、ロンドン、パリ、東京の順でした。それが2012年にロンドンが首位になり、東京も2016年に、パリを抜いて3位に浮上しました。元気な東京がさらに元気になる可能性を秘めています。

宮沢 とはいえ、課題も山積ですよね。

竹中 おっしゃるとおりで、1位のロンドンとの差はむしろ開いていますし、5位のシンガポールにも追い上げられています。東京にはいいモノがたくさんあるけれども、うかうかしてはいられない状況です。その点でもお手本になるのはロンドンです。

 2012年以降、「レガシー」という言葉が使われるようになりましたよね。例えばヒースロー空港の利便性を充実させました。東京は羽田・成田合わせてもまだ直行便は100都市くらい。それに比べて、今ヒースローは世界350都市と直接繋がっています。そのほか、いいホテルが続々と新規開業し、国際会議の開催回数が急増しました。これがレガシーということです。

 東京もこれに倣って、今後どのようなレガシーを残していけるか。政府も東京都も強く自覚して、第4次産業革命に対応した新しい都市作りに邁進しているわけです。

宮沢 東京がさらに元気になるためには、どんなことが求められているのでしょうか。

竹中 3つの要素を変えることができれば、東京は1位になれます。それは「法人税制」「規制」「空港アクセス」。要するに、ビジネスをしやすい環境をいかに用意するか。法人税率の高さや規制の多さなどでは、東京は世界に後れを取っていますが、有利な点もある。それは羽田空港の利便性です。都心から20分の場所に国際空港がある大都市なんて世界でも希。今後、アクセスがさらに整えば、都市部の集積が高まり、東京の価値はいっそう高まります。

宮沢 当社は都心部の主要5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)を中心に「区分所有オフィス」という新しい不動産商品を提供しています。これはオフィスビルを1棟丸ごと所有するのではなく、中堅・中小企業でも購入しやすいよう1棟を区分化して1フロアごとに所有するものです。都心部では需要の高い中規模ビルの供給が不足しているため、テナントが集めやすく、賃料の上昇が見込めます。

ニーズに合致する「区分所有」
東京で一番多い長寿企業とは

竹中 平蔵氏 [たけなか へいぞう] 東洋大学教授、慶應 義塾大学名誉教授。博士(経済学)。一橋大 学卒業。ハーバード大学客員准教授などを 経て01年、小泉内閣の経済財政政策担当 大臣などを歴任

竹中 現在、デフレからの脱却も少しずつ進んでいますしね。それにしても「区分所有オフィス」とはまさに目からウロコ。個人のマンションは区分所有できるのに、なぜオフィ スではなかったのですか。

宮沢 オフィスビルの使い方を見ると、その多くは部分使用です。1つの会社がビル1棟丸ごと使うケースはほとんどない。つまり、それを需要者側のニーズと捉えれば、「区分所有」のほうがニーズに合致していると私たちは考えたわけです。ただ、「会社の寿命」は人間ほど長くないので、個人の住宅ローンのように長期間で返済する仕組みが未整備だったという要因も大きかったと思います。

竹中 要するに供給側の論理が優先していた…。

宮沢 私たちは不動産を「投資」ではなく、あくまでも不動産賃貸業という「事業」として捉えています。東京の不動産賃貸事業では、ある地権者が老朽化した物件を建て替え、それを大手デベロッパーなどと組んで拡大していくと、まるでわらしべ長者のようにドンドン価値が上がっていくんです(笑)。典型例が同潤会アパートですよね。これは東京ならではの現象でしょう。

竹中 なるほどね。REIT(不動産投資信託)についてはどのようにご覧になっていますか?

宮沢 REITはある一定期間の運用パフォーマンスを見ているのに対して、賃貸事業は100年、200年という長いスパンで考えて取り組むべき事業だと考えます。

 実際、東京で100年以上続く長寿企業の中で一番多い業種は貸事務所業なんです。日本全体では酒造業なのですが、東京では貸事務所業が一番多い(下表を参照)。ただし、最初から貸事務所業だったのではなくて、副業がいつのまにか本業に取って代わった場合が多いんです。いかに不動産賃貸業の継続性が長いかを雄弁に物語っているのではないでしょうか。


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竹中 それは面白い。勉強になります(笑)。百貨店にしろ、放送局にしろ、東京では不動産で稼いでいる大企業が確かに多い。

宮沢 企業としてはなるべく本業とは連動しない不動産賃貸業という収益源を持つことが、企業防衛には効果的だと言えます。この不動産賃貸業の持つ強さというものを、私たちは中堅・中小企業に広くご提供したいと考えています。

100年後の企業価値を高める
「複利で考える経営」のススメ

宮沢 丸の内エリアは、旧三菱財閥グループが1890年に国から払い下げを受けて再開発したものですが、三菱地所の資料によると、当時の買い上げ価格1坪あたり11.96円に対して、現在の価値は1坪あたり7750万円。これを複利で計算すると年利約13.5%になります。

 経営者の方々は一般に売り上げや利益を重要視しますよね。例えば売上高100 億円で純利益5億円だったとします。売上高純利益率は5%です。この5億円を再投資せずに毎年毎年内部に蓄積していくだけなら、単純計算で100年経つと500%、企業価値としては約5倍になります。これに対して、100億円の固定資産 が年率5%ずつ価値上昇すると、価値が内包された状態で上昇し続けることになるので複利計算となり、100年後には131倍になる。大変な差が生まれるわけです。

 本業でしっかりと利益を出し続けることはもちろん重要ですが、企業経営を100年、200年の長期ビジョンで見た時に、売却可能な固定資産をどのような形で組み込むかを考えるBS経営こそが、100年後の企業価値を高めるためにはよりインパクトが大きいと言えるのではないでしょうか。

竹中 「100年を複利で考える」というのは大変重要な着想と言えそうですね。アインシュタインも確か「複利とは人類最大の発見である」と言っていますし(笑)。

宮沢 短期で利ざやを稼ぐ株式などの投資とは違った不動産賃貸事業としての長期的な資産活用の視点を企業経営者の皆様に訴えたい。これが私たちが取り組んでいるテーマなのです。

竹中 それは大変素晴らしいメッセージですね。

 

株式会社ボルテックス
〒102-0071 東京都千代田区富士見2-10-2 飯田橋グラン・ブルーム22F

 

 

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