消費者が求める商品は、消費者が知っている
IoTなどにより、新たなビジネスチャンスが広がりつつある近年、新しいテクノロジーを活用して、様々な商品が次々に生み出されている。一方で、ライフサイクルの短期化も激しく、消費者が本当に必要な商品は何なのかを見極め、意思決定のスピードを速めることが、商品開発担当者やプロダクト責任者、マーケターに求められる。
そこで重要なのは、いかにして“消費者のホンネ”を、“タイムリー”に集められるかだ。
代表 飯島 克昌 氏
医療や介護の分野を中心に、IoT関連の商品企画開発を手がけているアクティブ・アイの飯島氏は、位置情報サービスを活用した製品を手がけている。
アクティブ・アイで手掛けている位置情報サービスでは、現在地をリアルタイムに、スマホからでも地図で確認可能になっている点が特長だ。1分ごとに現在地が更新され、地図上に点で履歴が残り、点を選択すると、何時何分何秒に計測されたかまでわかる。
このようなテクノロジーを保有する同社は、これまではテクノロジー先行で商品開発を進めることが多かった。しかし、位置情報を活用した製品開発にあたり、消費者ニーズにあった製品にするため、「ミルトーク」を活用した。
リアルタイムに消費者ニーズを拾える「ミルトーク」
ミルトークとは、ネットリサーチのリーディングカンパニーであるマクロミルが開発したマーケティングプラットフォームである。
ミルトークには、大きく3つの機能がある。
1つ目は、聞いてみたい“お題”で掲示板を立てて、アイデアや意見を集めることができる「きいてミル」。無料で何回でも使用可能なため、マーケティングコストを抑えてユーザーのアイデアや意見を集めることが可能だ。
2つ目は、アイデアや意見を投稿しているユーザーと直接リアルタイムでチャット形式の会話ができる「トークルーム」。オフラインのグループインタビューでは、通常、数十~百万円単位の費用がかかるが、ミルトークの場合、1回6万円と破格の値段で手軽にユーザーへインタビューができる。
3つ目が、ミルトークに参加しているユーザーの、自由に日々思いついたアイデアが時系列に並ぶフィード「きょうのひとこと」だ。無料で閲覧でき、気になるワードをフィードで検索したり、事前にワードを登録しておき、該当ワードがフィードに投稿されると、メールでお知らせされる機能もある。そのため、ちょっとしたヒトコトを見逃さずにチェック可能だ。
飯島氏は、最初に、位置情報を活用した新商品のアイデアを集めるため、「きいてミル」を使い、【GPSを活用した「あったらいいな」と思う新サービスを教えて!】というお題の掲示板を作成して、幅広い意見を集めた。
今回、新たな商品開発のヒアリングのため、他社へ掲示板を表示させないよう、掲示板を非公開にするオプションを使用。
「きいてミル」では、年齢や性別、子供の有無など様々な属性で絞り込んだユーザーにだけ、聞くことができるため、ビジネスパーソン向けの製品開発の場合には、年齢で条件を絞るといった使い方が可能だ。
掲示板作成後、1時間で約50件、トータル833件のコメントが集められた。飯島氏は、コメントが集まるスピードの速さと、バラエティかつユニークなアイデアの“質”に驚いたという。
商品開発では、PDCAをいかに早く回せるかは、ビジネスを成功に導くための重要なポイントとなるため、調査会社を介さないセルフ型だからこそ叶えられるスピード感は、ミルトークがクライアントから支持される理由の一つだ。
ユーザーから集まったGPSサービスを付与したい製品には、自転車や、鍵、クレジットカード、社員証、ゴルフボールなど、盗難、紛失リスクのある製品が挙げられた。娯楽目的のアイデアとしては、「古地図と連動して、今、50年前だとどこにいるのか、などが分かるアプリ。江戸時代とかの地図もあれば楽しい」といった意見があった。
様々な意見が投稿される中、普段使用する鞄などの持ち物に搭載したいという意見が数多く寄せられた。
具体的な活用イメージとしては、置き引き防止としてビジネスバッグに搭載、痴呆や年配の方の迷子防止目的などだ。
消費者ニーズを深堀りして商品開発へ活かす
飯島氏は、製品にアイデアを反映させるため、「トークルーム」へ、気になる意見を投稿してくれたユーザーを招待し、さらに詳しい意見を聞いた。
トークルームでは、テキストだけでなく、ミルトークのオリジナルスタンプを活用してLINEのようなコミュニケーションが可能だ。そのため、ユーザーがリラックスした状態で、アイデアや意見を発言しやすい雰囲気が整っている。
掲示板の意見で多かった鞄に搭載するGPS製品の開発を目的とし、より消費者ニーズに沿った製品にするため、具体的な利用シーンを想定した機能追加や内蔵型のGPSにした際の鞄の形状などについて詳しく聞いた。
ユーザーから、帰宅時間の把握が目的の場合には、任意のチェックポイントを通過したらメールで知らせるといったコメントが出た。その他、塾に通う子供が多いため、緊急時に警備保障会社にコネクトできる機能などの提案があったとのこと。
「詳細な意見をリアルタイムで、手軽に質問できるため、他社のGPS商品との差別化につながるアイデアまで落とし込めた」と手応えを感じた飯島氏は、ソフトウェア開発を手掛けるITOSの協力を得て、バッグに搭載する位置情報サービス機器の試作品作りに着手している。
忌憚のない意見で販売前に、商品をブラッシュアップ
掲示板機能の「きいてミル」では、質問に画像を含めたり、ユーザーから画像を投稿してもらうことも可能だ。そこで、試作品の完成後に、再度、掲示板「きいてミル」で、試作品を公開し意見を聞いた。
商品開発の前半では、仮説作りのための情報収集として活用し、後半においては、より良いサービス・商品の開発のブラッシュアップやエビデンス作りとして、ミルトークを活用できる。
試作品画像を公開した掲示板では、鞄に装着するため、試作品の大きさを指摘する声が集中したという。また、開発当初は、ビジネスパーソンの置き引きといったビジネスパーソンの活用を想定していた。しかし、ユーザーからは、防犯グッズの一種としてお子さんのランドセルに装着したい、痴呆の父の衣服に縫い付けられるような形状であれば活用したいといったコメントもあり、商品の市場を広げるヒントも得られたそうだ。
現在は、旅行会社向けに、バスツアーの参加者が付けるバッジと一体化させて、集合の管理をしやすくする他、スーツケースに装着して、紛失・盗難防止をできるような改良をしているとのこと。
ユーザーイノベーションによるIoT製品が誕生する日も近い、と感じさせる事例だ。
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