JBpressでは2015年10月、読者に対して「企業におけるワークスタイルに関するアンケート」を実施した。その回答結果から、企業におけるワーク・ライフ・バランスの現状とワークスタイル変革のポイントを解説していく。
前回の記事では、ビジネスパーソンがおかれている職場の環境、業務生産性、多くの時間を使っている作業や、その改善について説明した。今回は、ワーク・ライフ・バランスやテレワークの現状、業務生産性を向上させるため改善すべき業務などについて掘り下げていく。より良いワーク・ライフ・バランスの実現に向け、ITを活用しながら業務を改善し、業務生産性を向上させるポイントを説明していこう。
「うまくいっている」(35%)と「うまくいっていない」(26%)の違いは、勤務状態の満足度
「あなたは、ワーク・ライフ・バランスがうまく取れていると思いますか?」という設問に対し、35%が「かなりうまくいっている」「ややうまくいっている」と回答。比較的多くの人が仕事一辺倒ではなく、プライベート時間も有効活用していることがわかる。しかし、一方で「ぜんぜんうまくいっていない」「あまりうまくいっていない」と回答するグループがあることも事実だ。
両グループを比較したが、役職、職種、業種、残業時間など、明確な特徴を見つけることはできなかった。ただし、前回説明した「あなたは、現在の勤務状態に満足していますか?」という回答との関連性が非常に高いことがわかった。勤務状態への満足度が低いとワーク・ライフ・バランスもうまくいっていないと感じているのだ。
ワーク・ライフ・バランスには、仕事や職場へのモチベーションも大きな要因になっていると言えるだろう。
また、「ワーク・ライフ・バランスが向上し、自分の時間ができたら何をしたいですか?(複数回答可)」という設問では、「趣味」「家族とすごす」「読書」「スキルアップのための勉強」を挙げる回答が多かった。逆に、「テレビを観る」「ゲーム」は非常に少なかった。ビジネスパーソンが多いJBpressの読者らしい回答と言えるだろう。
採用が進むテレワークでの勤務形態。
利用者の共通点はワーク・ライフ・バランスへの好感度
「ワーク・ライフ・バランスの向上には、通勤時間や外出に伴う移動時間が削減できる、テレワーク(在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィスでの勤務)が有効ですが、あなたの会社にはテレワークの勤務形態がありますか?」という設問に対し、「ある」という回答が19% 、「今後は予定がある」が6%となった。オフィスにとらわれない“テレワーク”という柔軟な勤務形態が、ワーク・ライフ・バランスの向上に寄与するのか、以下で掘り下げていこう。
「マスコミ、広告関連」「情報処理/SI/コンサルティング」という業種ではテレワーク採用が進んでいる。テレワークでの業務遂行が難しい業種もあるため、一概に採用が進んでいる業種、進んでいない業種という切り分けはできないが、柔軟な勤務形態が増えていけば、介護や育児のために退職してしまうビジネスパーソンの減少につながるのではないだろうか。
採用が進むテレワークだが、不向きな業務や職種もあるようだ。「テレワークが『ある』と回答された方にお聞きします、テレワークを月何回ほど実施していますか?」との問いに対し、回答数は全体の66%に当たる56名に達した。しかし利用頻度に関してはまだ少ない傾向で、「月1回利用」が21%、次いで「月2回から4回利用」の32%であった。反対に、「利用していない」と回答した人の多くは「技術/研究開発」「経営企画/事業企画」であり、テレワークでは上手く業務遂行ができないのではないかと推測される。
また、クロス集計すると、テレワークを利用している回答者の多くは、ワーク・ライフ・バランスが「かなりうまくいっている」「ややうまくいっている」と感じており、今後はオフィス勤務にとらわれない、柔軟な勤務形態が必要なことがみてとれる。
業務プロセス改善、部門を越えたコミュニケーション、
会議削減が業務生産性向上のポイント
テレワークを利用し、柔軟な勤務形態で働く人の多くが、ワーク・ライフ・バランスに満足していることがわかった。働き方の柔軟性向上とともに、プライベート時間を捻出するため、働き方の効率化も解決策の一つだ。
「業務生産性を高めるために改善すべきことや、必要なことは何だと思いますか?(複数回答)」という設問に関しては、「稟議や報告など業務プロセスの改善」(回答数225)、「部門間を越えたコミュニケーション」(回答数189)、「会議の削減」(回答数155)と続いた。
多くのビジネスパーソンが、自社の稟議や報告などの業務プロセスについて改善すべきだと感じており、経営・管理職はプロセスの見直しを検討すべきなのかもしれない。また、組織の縦割りによる部門を越えたコミュニケーションへの要望も多いが、一方でコミュニケーションのための会議が多くなることの弊害もみてとれる。
「会議の削減」と「部門を越えたコミュニケーション」について、
どのように改善できるか
業務プロセスの改善については、ワークフローシステムに代表される電子承認フローなどによって稟議承認の短時間化などができる。ここでは、「部門を越えたコミュニケーション」「会議の削減」という課題について、IBMのソーシャル・プラットフォーム事例をもとに、IT活用で改善できるかを説明していく。
まず「会議の削減」について説明しよう。会議にはさまざまな目的があるが、本来の目的は「意見を出しあい、議論し、意思決定を行うためのもの」だと言える。しかし、参加者の議題への理解度が一致せず、意思決定までつながらない会議は、決定するまでに数回にわたり会議を重ねてしまうものだ。
この問題は、事前に議題に関する情報共有が適切になされていないことが原因であることが多い。そのため会議のほとんどを説明に終始し、本来の議論まで至らないという状況を招いてしまう。
その解決のためのIT活用の一つが、「コミュニティを利用した事前の情報共有とディスカッション」と「ファイルを利用した資料の共有」である。あらかじめ、ソーシャル・プラットフォームにおいて議題についての情報を共有し、理解を高め、議論のポイントを一致することで、実際の会議では決定のための議論に集中できるようになる。会議時間内で意思決定がなされ、持ち越すこともなく削減につながるだろう。
数が多くなりがちな会議の一つに、報告主体の定例会議も挙げられる。報告のためだけに貴重な時間を使うのではなく、報告はコミュニティで行い、関連資料をファイルで共有するなど、ITツールを利用し行うほうが業務生産性は向上するであろう。
次に「部門を越えたコミュニケーション」の改善について説明しよう。IBMも非常に大きな組織であるが、部門を越えたコミュニケーションは日常的に行われている。ここでも利用されているのはソーシャル・プラットフォームだ。
IBM社内では、グローバルで約86,000のコミュニティが存在し、社内で共有されている公開ファイルは100万ファイルもあり、4400万回以上ダウンロードされ、利用されている。また「JAM」と呼ばれるオンライン・ディスカッションでは、部門間を越えてテーマに沿った議論が行われている。「JAM」はオンライン上の議論なので、時間や場所の制限に縛られることなく世界中のIBM社員が集まることができ、革新的なサービスや製品などの提供にも役立っているのだ。
「コミュニティ」という、簡単に全社員とコミュニケーションできる「場」があることが部門の壁を取り払い、部門を越えたコミュニケーションを実現する。企業が成長するためには、部門や全社の知恵や知見を利用できる、コミュニティの活用が効果的なのである。
業務生産性を高め、より良いワーク・ライフ・バランスを実現するためのIT活用について2回にわたって説明してきた。いまこそ柔軟な働き方を実現するために、ITを活用したワークスタイル変革を検討してみてはいかがだろうか。
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