ビッグデータ、データ分析、データサイエンティスト。こうした言葉を耳にしない日はない。しかし、実際にデータを活用し、ビジネスに役立てている企業はどれくらいいるのだろうか。日産自動車でカルロス・ゴーン氏を始め、外国人役員をうならせる数々の提案をデータを駆使して行い、現在はデータ&ストーリーLLC代表としてデータ分析、課題解決のトレーナーとして活躍する柏木吉基氏は「全員参加型のデータ分析こそ組織の競争力向上に有効」だと説く。それはどうすれば実現できるのか。また、どんな効果が期待できるのか。

いきなりハードルをあげるから挫折する

 データ活用に対する機運は確実に高まっている。背景にあるのは規制緩和や外圧だったり、将来に対する強い危機感だったりする。そこで頼りになるのはデータを用いて現状や課題を客観的に分析することだ。しかし、現実には「どこから手をつけて良いかわからない」「データ分析が根付かない」といった悲鳴に近い声も聞こえてくる。そこには「大きな誤解もある」と柏木氏は指摘する。

データ&ストーリーLLC 代表 
(実務データ分析・課題解決トレーナー)

多摩大学大学院 客員教授
横浜国立大学 非常勤講師
元日産自動車 ビジネス改革チームマネージャ
柏木 吉基 氏

 

 

 「マスメディアは、ビッグデータとかサイエンティストとかをもてはやしていますけど、これらは一般企業全体からみればごく一部の専門家たちの世界。アプローチも使うツールも違います。いきなりこうした世界に踏み出そうとしても、結果は挫折するだけです。専門書を買ってきて1ページ目で思考停止したり、高度な分析ツールも使いこなせずに宝の持ち腐れになったり。これって当然なんです。専門家ではないわけですから」(柏木氏)。

 

 柏木氏が勧めるのは、いつものデータといつものツールを使ってまず目の前の課題に対して日常的に分析ができるようになることだ。「いきなりハードルを上げてしまえば、意欲が空回りして、気持ちが削がれるだけです。しかも一般的な実務において結果を出すために必要とされるツールやスキルはいずれにしても専門家のそれとは違います。普段使っているものをベースに考えないと、ハードルは超えられません」と柏木氏は無理のないアプローチこそ大事だと語る。

 柏木氏は、エクセルを使ってデータ分析のやり方を教えているが、セミナーや研修の中では最初はPCすら立ち上げさせない。データを有効に活用するうえで大事なことは、「何がやりたいのか」という課題意識と、ロジカルな思考能力という考え方に基づいてのことだ。データ分析の目的は、データを分析して、その結果を次のアクションに結びつけることだ。それがわかっていなければ、データ分析をしても意味はない。

 「データの分析の手法がわからないためにデータが使えていないという声をよく聞きますが、本当にそうでしょうか。問題の多くは、データの量有無や分析手法ではなく、どうデータを活用するのかが考えられていないことにあるんじゃないでしょうか」(柏木氏)。

ゴールは現場の担当者が自分で分析できること

 柏木氏は「データ整理とデータ分析は違う。その違いを認識することが大切」と指摘する。よくあるのはとりあえず手に入ったデータから、決められた形の表やグラフを作成することで終わっているケースだ。経営層や事業部長向けに報告するために作られ、最悪の場合には、必要かどうかの検証もされていないこともある。「先輩たちもそうしてきたから」という合理性のない理由で続けられているレポートを作成することが仕事になってしまっているのであれば、それはデータの整理にしかならない。

 それではデータの整理とデータ活用の境目はどこにあるのか。柏木氏は「一つの軸のデータしか使っていないのであれば、まずデータの整理となっている可能性が高い。例えば月別の売上の推移だけ見て、売上が落ちている原因がわかるわけないです。つまりデータを表面的にしか見れていないので、課題が解決するはずがないんです。今まで1つの軸でしか見ていなかったところに、もう一つの軸を加えることで、見える結果は変わってきます。ただ、どのような軸が必要かといった分析前の考え方の重要性も忘れてはいけません」と指摘する。

 柏木氏は、クライアントの実課題、実データを用いたプロジェクトベースでデータ分析を実践してもらいながら、データ分析や課題解決のスキルアップを指導するという独自のプログラム形式も提供している。データ分析に使うツールはExcel。普段のデータと普段のツールでも出せる答えの幅に受講者の多くが驚くという。特にデータ分析のための特殊な環境は必ずしも必要ではない。「日常の環境ですぐに着手して答えが出せることが大事です。現場の人が自分で分析を日常的にできるようになることがゴールですから」と柏木氏。それが“全員参加型のデータ分析”である。

 実際に軸を加えてデータ分析を体験した人たちはデータ分析の面白さが理解でき、自ら進んでデータ分析をするようになるという。こうした成功体験を積むことで、データ分析力や課題解決力が自然と身についていく。そうした人が社内に増えれば、課題解決につながっていく。「実際に成功事例も増えてきているので、来春にはBefore・Afterをドキュメンタリー的にまとめて単行本として出版する予定です」と柏木氏は語る。

ワイガヤで議論を深めることで企画力を磨く

 全員参加型のデータ分析を実現するための要件として柏木氏が挙げるのが、気軽に初めて、データ分析の面白さを実感できる環境だ。もちろん使い勝手が良いに越したことはない。

 それを実現するソリューションとして注目されているのが、マイクロソフトの提供するPowerBIだ。同社の Azure と同じくクラウドサービスとして提供されており、Excelライクなユーザインターフェイスを持っているので手軽に利用できる。しかも、柏木氏がポイントとして挙げる分析軸の追加も簡単に行える。

  マイクロソフトの斎藤泰行氏は「このPowerBIは、ボタン一つでデータ分析の軸を追加したり、インターネットから統計データを取り込むことができ、データというファクトをベースに“ワイガヤ”ができるところが大きな魅力」だと話す。

日本マイクロソフト株式会社
クラウド&エンタープライズビジネス本部
クラウド&サーバー製品マーケティング部 部長
斎藤 泰行 氏

 実際にマイクロソフトの社内では、オフィスのあちらこちらに大型プロジェクターが設置され、画面上でPowerBIによってデータを分析しながら喧々諤々の議論が進められているという。例えば、地域別の売上データに男女別の切り口を加えたり、都道府県別の人口データをインターネットから取り込んで、人口比率を出してみたりすることで、変動要因を浮き彫りにすることができる。

(Bing検索で取りこんだ情報を反映)
拡大画像表示

 同社の北川氏は 「PowerBIではデータを選ぶことで、自動でグラフが生成されます。その場でグラフを作り変えながら議論できるわけです。これはデータ活用の常識を覆すものだと思いますね。切り口を変えながら見ていくと、データ分析自体が楽しくなり、議論も深まります。データを活用するには、こうした“ワイガヤ”を促すプロセスが重要なんです」と話す。

日本マイクロソフト株式会社
クラウド&エンタープライズビジネス本部
クラウド&サーバー製品マーケティング部
エグゼクティブプロダクト マネージャー
北川 剛 氏

いつものデータとツールで試行錯誤してみる

 実際にPowerBIを見た柏木氏は「普段使っているExcelと同じ感覚で使えるというのはいいですね。機能はExcelベースで十分です。ただ、特にデータの扱いに慣れていない人などには、使い勝手の良いサポートツールがあるとハードルは更に下がるかもしれませんね。最終的には組織の中で相手にどれだけ理解、納得してもらえるかです。必要以上に難しい分析を目指しても、上の方たちはどこまで理解できるのか。わかってもらえなければ意味がないですし、結局人や組織は動かせません」と評価する。

 データ分析にとって、クラウドベースのPowerBIなら、特別な環境を用意することなく、すぐに無料で利用することができる。しかも使い勝手はExcel と同じ。ツールを使うための特別なスキルは必要ない。データサイエンティストならぬ現場の担当者にとってもハードルは低い。しかも、ステップアップしようと思えば、高度なデータ分析が可能だ。小さく始めて、大きく育てることができる。

 データ活用というと高度な別世界のように感じるが、ビジネスの視点から見れば本質は日々のビジネス活動と変わらない。推測でものをいいながら喧々諤々していたのが、PowerBIのようなツールを活用することで、データ分析をしながら、ファクトベースで議論できるようになる。

 大事なのは、ビジネスの成果につながる道筋をどう見つけることができるかだ。そのためには試行錯誤しながらも、まず現場の担当者が自分でやってみることが大事。いつものデータといつものツールでどんな価値を引き出すことができるか試してみるだけの価値はあるだろう。

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