いま、コンサルティング業界に転職したいと考える人が増えている。
コンサルティングファームの動向はどのようになっているのか。
また、求められる人物像に共通項はあるのか。
コンサルタントの採用に詳しい、キャリア インキュベーション社長の荒井裕之氏に聞いた。
クライアント企業の前向きな成長戦略に伴い活躍の機会が増している
当社はプロフェッショナル人材やビジネス・リーダーに特化した人材紹介会社です。最近の動向についてご紹介すれば、どのコンサルティングファームも、非常に活発に採用活動を行っています。
景気の回復感もあり、コンサルティングファームの顧客である企業が、前向きに成長戦略を立てて、事業をさらに進めようとしているからです。東南アジア諸国連合(ASEAN)など、新興国に進出しようとする企業も増加していますし、M&Aも活発です。そのため、意思決定に必要な選択肢を提供するプロフェッショナルとして、コンサルタントの仕事が増えているわけです。
ただ、コンサルティングファームにとってビジネスチャンスが拡大しているように見えますが、楽観はできません。顧客企業の経営環境がグローバル化、複雑化するなかで、大きなバリューを出すことが年々難しくなっているからです。
このため、多くのコンサルティングファームでは、戦略の立案のみならず、その実行や定着、組織づくりやオペレーションなど、よりカバーする領域を広げてサポートする動きが出てきました。サービス内容の変化に伴って、コンサルティングファーム同士の合併や買収も珍しくなくなっています。
高い思考力に加えプラス・アルファの専門性があると有利
このような状況下で、必要とされるコンサルタントも変化しています。端的に言えば、「これまでとは違う多様な人材が求められている」、ということになります。以前は、いわゆる「地頭がいい人」がほしいと言われることが多かったのですが、ここ数年はそれに加えて、IT、M&A、業務改善など、プラス・アルファの専門性を持つ人が望ましいとされる傾向があります。ビジネスで使える英語力を必須とするファームも少なくありません。
一方、最近では、キャリアの選択肢も広がっています。旧来、コンサルティングファーム「卒業後」は、同業他社に移るか、独立するくらいしか選択肢がありませんでした。しかし、近年ではコンサルティングファームから事業会社に転職する人も増えています。特に外資系企業やオーナー企業では、即戦力となる高い能力を持つコンサルタント出身者を、積極的に採用しているようです。
アメリカなどでは、「プロ経営者」と呼ばれる人材の層が厚く、流動性も高くなっています。当社でも日本におけるプロ経営者のプラットフォームになりたいと考えて取り組みを始めており、今後は、コンサルタント出身で、プロ経営者になる人も増えてくると考えています。
コンサルタントの仕事は、プレッシャーも大きく、けっして楽ではありません。その一方で、事業会社にはない成長の機会があります。目的と意欲のある人にとって、参加する意義のある仕事といえるでしょう。
荒井裕之(あらいひろゆき)
1961年生まれ。リクルートで広告事業、ネットワーク事業の営業マネジャーを経験。
キャリアデザインセンターの専務取締役、関連会社社長を経て、2000年独立創業。