次のリーダーを育てる「リーダーシップ・パイプライン」
ができているファームは強い

― そのようなコンサルタントになるためには、コンサルタントが所属するコンサルティングファームの組織づくりや人材育成に、どのような取り組みが必要でしょうか。

金井 前述したように、特定のコンテンツを販売するだけでは、クライアント企業に成果をもたらすことが難しくなっています。プロセス面で支援するには、頭ごなしにクライアントに解決策を提示するのではなく、先にも触れたように「謙虚に問いかける」技術が肝心です。
もちろん、コンテンツが不要というわけではありません。プロジェクトのそれぞれの場面でプロセスを促進させるために、知っていれば役に立つ知識はたくさんあります。

教育研修に力を入れるコンサルティングファームは少なくありませんが、チーム力、組織力を向上させるには、チーム・リーダーの育成が不可欠です。
ただし、米調査教育会社のロミンガーが優れた経営リーダーに調査した結果によれば、リーダーシップを発揮できるようになった要因として、七割が仕事上の経験、二割が薫陶(上司や他の経営者などからの影響)となっており、研修は一割に留まっています。
 

―リーダーを育てることはそれだけ難しいということでしょうか。

金井 「一割」という数字を企業の教育研修部門の人が見るとがっかりするかもしれませんが、これにはいくつか方法があります。たとえば研修の場に、薫陶に値する自社や他社の優れたリーダーを講師として招くのもいいでしょう。
一方でこの数字の見方を変えれば、若手社員の育成の成否は、どんなリーダーの下で、どんな経験を積ませるかによって決まるともいえます。「修羅場をくぐり抜けて一皮むけた」、と表現するリーダーは少なくありません。部下の育成のために同じ経験の場を与えるといったように、リーダーが次のリーダーを育てる「リーダーシップ・パイプライン」ができているコンサルティングファームは成長が期待できます。
 

―最後に、これからコンサルティングファームで働きたいと考える人にメッセージをお願いします。

金井 臨床心理学者の平木典子氏は、組織には、業務を成し遂げる「タスク」だけでなく、この人と一緒に仕事をしたら心地いいという「メインテナンス」(人間関係の維持や回復)の両面が大切だと指摘しています。
チームのメンバーに配慮し、クライアント企業に寄り添いながら、リーダーシップを発揮し、成長してほしいと願っています。



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