米国ヒューレット・パッカード社(HP)の電子部品事業部を前身とするアバゴ・テクノロジーは、光応用製品のパイオニア。
同社は、III-V 族半導体(化合物半導体)をベースとするアナログ/ミックスドシグナル、オプトエレクトロニクス部品及びサブシステムの先進的な設計/開発と、グローバルな製品供給体制で市場を牽引するリーディング企業。同社の開発する数多い製品の中でも、特に世界中で高いシェアを占める光学式エンコーダーとフォトカプラの最前線を追った。
*エンコーダー: 回転したり水平移動したりするさまざまな機器/装置の移動方向や移動量、角度を検出する電子部品
*フォトカプラ: 内部で電気信号を光に変換して伝達し、再び電気信号へ戻して出力する素子。電気的に絶縁しながら信号を伝達できるので、スイッチング電源やFAコントローラに産業用ロボット、電気自動車や再生可能エネルギー発電の電力制御など、幅広い用途で使われている。
指先に載る小さな反射型エンコーダーチップがモーター制御を革新していく
アバゴ・テクノロジーが開発し販売している数多くの半導体製品の中でも、産業分野にて特に主力となる光学式エンコーダーとフォトカプラは、日米をはじめ世界の先端企業の産業機器や製造装置において、高いシェアを占めている。
LEDを世界で最初に商品化した高い技術力と、多くの顧客から得られたフィードバックを武器に、常に市場が求める先のテクノロジーとソリューションを提供してきた。インダストリアル プロダクツ営業部 プロダクト マネージャー 畑口俊也氏は、産業機械におけるエンコーダーの重要性について次のように話す。
インダストリアル プロダクツ営業部
プロダクト マネージャー 畑口 俊也 氏
「製造装置や多様な産業装置に使われているモーターは、その動きを正確に検知するためにエンコーダーを利用しています。エンコーダーは、モーターの回転方向や回転位置、そして回転速度を計測する装置です。エンコーダーにはホールセンサを利用する磁気式と、LED発光素子を用いた光学式があり、現在は部品の摩耗がなく製品の寿命が長いベアリングレスの光学式のエンコーダーを採用するケースが増えています。
その光学式エンコーダー市場において、アバゴ・テクノロジーは常に市場をリードしてきました」
さらに畑口氏は続ける。「光学式エンコーダーの市場で、当社は高いシェアを維持しています。HP時代から培ってきた高いLED技術をベースに、世界的なシェアの高さから、常にお客様のニーズを捉えたエンコーダーを開発してきました。光学式エンコーダーの市場は、これまでは透過式の部品が主流でしたが、現在は小型でコストが低く、高精度な反射型が主流になってきています」
透過型エンコーダーは、LED発光部と受光IC部がコードホイールを挟む形式になっている。そのため、どうしても部品の形状が大きくなる。それに比べて、反射型エンコーダーは発光素子と受光素子を単一表面上に実装できるので、薄型化と小型化を可能にしている。
拡大画像表示
「最新の反射型エンコーダーのチップは、指先に載るほどの小型化を実現しました。その結果、関連するパーツも小型になりパッケージ化しても、透過型エンコーダーと比べて、大幅な省スペースと低コスト化を達成しました」
光学式エンコーダーのパイオニアでもある同社では、透過型だけではなく反射型の新製品によって、エンコーダー市場でのさらなる競争力を高めている。
ハイブリッド車から太陽光発電まで
多様なニーズに向けて進化を続けるフォトカプラ
フォトカプラは、内部で電気信号を光に変換し再び電気信号へ戻す素子。電気的に絶縁しながら信号を伝達できるという特性を活かし、スイッチング電源やFAコントローラに産業用ロボット、電気自動車や太陽光発電の電力制御など、幅広い用途で使われている。
インダストリアル プロダクツ営業部 プロダクト マネージャーの高田篤氏は、自社製品の強みや特長を次のように説明する。
プロダクト マネージャー 高田 篤 氏
「当社のフォトカプラの特長は、受光側にアンプやハイパワーのドライバを組み入れたり、素子の中にADコンバーターを搭載するなど、特定の機能を持ったICを一緒に集積させた多機能さにあることから、『フォトカプラを内蔵したIC』とも言えます。この多機能なフォトカプラの分野では、ワールドワイドで圧倒的なシェアを誇っています。また太陽光発電のパワーコンディショナーでは、国内メーカーのほとんどで採用されています」
さらに高田氏は海外での需要についても触れる。
「米国では、軍の認定部品になるほどの高い信頼性があります。それらの製品群は、かつてのスペースシャトルや火星で活動するマーズ・ローバーなど航空宇宙の分野でも採用されています」
高い信頼性と高度な付加価値により、フォトカプラの分野において世界的なシェアを維持している同社だが、さらに大きな強みがある。
「シェアが高いということは、それだけ、特に業界を代表するようなお客様からのフィードバックも多くいただいています。例えば、国内の産業用ロボットやインバーター製造メーカーなどと長く緊密なお取引をさせていただいていますので、製品に対するご意見やご要望も、数多くいただけます。それらを次の製品開発にいち早く活かしていけるので、競合他社よりも有利な新製品を市場に投入し続けているのです」とインダストリアル プロダクツ営業部 アプリケーション エンジニアの渡邊千華氏は話す。
アプリケーション エンジニア
渡邊 千華 氏
最新の光学式エンコーダーとフォトカプラ展示のみどころ
7月に開催される展示会「TECHNO-FRONTIER 2014」では、光学式エンコーダーとフォトカプラの最新技術や今後の製品動向を紹介する実演や展示が計画されている。(詳しくはこちら)
そこで、どのような新製品や技術が紹介されるのか、その一端を聞いた。
「反射型エンコーダーのAEDR-871xシリーズは、高分解能に対応した新製品です。逓倍回路を内蔵して、4x、8x、16xの分解能を実現します。また、AEDR-872xシリーズは、アナログ2chとインデックスパルスを出力できる光学式エンコーダーです。会場では、これらの新製品のデモンストレーションも予定しています」と畑口氏は説明する。
一方のフォトカプラでも、業界に先駆けた新製品の発表を計画している。その展示内容について、高田氏は次のように話す。
「フォトカプラの展示の目玉は、電流検出器とスマートIGBTゲートドライバを予定しています。新しいスマートゲートドライバでは、スケーラブルなゲート駆動ソリューションを提供し、シリコンカーバイド(SiC)MOSFETを効率よく駆動することも視野に入れています。
電流検出器では、シャント抵抗との組み合わせにより、±800アンペア(A)ピークの電流検出を提案する予定です。その他将来に向けては、メンテナンスが難しい用途向けに故障の予測機能なども計画しています」
展示が予定されている最新のスマートゲートドライバは、基本となる「ゲート駆動」機能に加え、IGBTの短絡保護、ゲート電源電圧監視、ミラークランプ機能などを集積し、さらなる付加価値と高性能化に加え、部品点数削減などによるソリューションコストの低減も実現している。