原油価格の下落が引き起こす未曾有の事態

中東で地政学リスクが飛躍的に高まる懸念

2018.07.20(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53588
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原油価格急落でサウジアラビアに政変?

 原油価格の下落は、イランと同様にサウジアラビアにも深刻なダメージを与える。

 サウジアラビア政府は失業率を下げるために外国人労働者(サウジアラビアの総人口3300万人の3分の1)を追い出す政策を実施した。その結果、サウジアラビアの外国人労働者の流出は2017年1月以降67万人となり、過去最大規模になった(7月11日付日本経済新聞)。だが、外国人労働者が離れた仕事にサウジ国民が就かなかったことから、失業率は13%と過去最悪の水準のままだ。民間部門の労働力の8割強を占める外国人労働者がいなくなったことで、国内経済が疲弊しただけの結果に終わっている。

 7月5日付ウォール・ストリート・ジャーナルは「サウジアラムコの上場準備は行き詰まっている」と報じた。これが事実だとすれば、ムハンマド皇太子が打ち出している画期的な経済改革を前進させるという重要なエンジンがなくなってしまい、建国以来最大の改革は頓挫してしまうことになる。

 2017年11月の汚職撲滅キャンペーンで拘束された王子や政府高官がいまだ多数存在している(7月10日付ウォール・ストリート・ジャーナル)ことが示す通り、ムハンマド皇太子と他の王族との対立の構図は変わっていない(「ムハンマド皇太子の実母は息子の独断専行に反対しているために自宅軟禁された」との情報がある)。

 このような情勢で原油価格が急落すれば、サウジアラビアに政変がいつ起きてもおかしくない。世界の原油の余剰生産能力が縮小している状況下で未曾有の事態が勃発すれば、米国のSPRばかりでなく、日本や欧州諸国が一斉に国家石油備蓄を放出せざるを得なくなるだろう。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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