原油価格の下落が引き起こす未曾有の事態

中東で地政学リスクが飛躍的に高まる懸念

2018.07.20(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53588
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ベネズエラもイランも原油の供給は途切れない

 一方、供給減の要因については、市場はあまり反応しなくなってきている。

 原油生産量が減少し続けているベネズエラは事態が好転する兆しは見えない(6月の原油生産量は前月比5万バレル減の日量134万バレル)が、ベネズエラにとっての最大の資金の出し手である中国が7月に入り原油生産の回復のための投資として2.5億ドル超の資金を緊急援助することを決定した。将来的に50億ドル規模の資金を拠出することも検討し始めている。ベネズエラへの新規融資は米国の経済制裁に抵触する可能性があるものの、中国に次ぐ主要債権国であるロシアも支援を続行すれば、ベネズエラの原油生産量が急減するリスクは小さくなる。

 イランへの経済制裁による同国産原油の輸入停止についても、7月10日、ポンペイオ米国務長官は「イラン産原油輸入を継続した場合に科す経済制裁の適用除外を検討する」考えを表明した。ムニューヒン財務長官が7月13日に「すぐにゼロにできない場合は例外も検討する」と発言したこともあり、日量80万~200万バレル規模で国際市場から閉め出されるとされているイラン産原油の供給は途切れないとの見方が出てきている。「日本の石油会社がイラン産原油の輸入を手控える」との報道(7月19日付日本経済新聞)が出ているが、米国との対立を深める中国が米国産原油の輸入をイラン産原油に切り替えれば、その影響は軽微なものになるだろう。

 その他、ノルウェーで石油関連施設の従業員が待遇改善を求めてストライキを行っていることや、イラクで反政府デモが拡大していることなどが報じられているが、原油安の流れを反転させる材料にはなっていない。

世界の原油需要が低迷

 7月上旬のヘッジファンドによるWTI原油先物の買い越し幅は4週連続で拡大し、史上最高レベルに達しており(米商品先物取引委員会調べ)、高値警戒感から相場の流れが変わりつつあるのではないだろうか。供給面に加え需要面でも懸念材料が出ているからだ。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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